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【坂本勉のPIST6徹底回顧】結果よりも内容に賛辞を贈りたい! ラスト2周で激突した先行選手の意地と意地/レジェンドが見た疾風迅雷 #9

2022/06/16(木) 17:00 0 3

現役時代、ロサンゼルス五輪で自転車トラック競技日本人初となるメダルを獲得し、競輪ではKEIRINグランプリオールスター競輪といったビッグレースを制したレジェンド・坂本勉氏。“競輪”と“ケイリン”を知り尽くした坂本氏が、新ケイリン「PIST6」のレースを振り返ります。(月2回・不定期連載)

 netkeirinをご覧のみなさん、坂本勉です。今回は6月13日・14日に行われた「PIST6 Championship 2022-23」セカンドクォーターラウンド1の決勝レースを回顧していきたいと思います。

【セカンドクォーター ラウンド1 決勝レース動画】


“レースは生き物”だということ

 新シーズンの開幕ラウンド。決勝メンバー6名全員が過去開催での優勝経験がありませんでした。とは言っても、脇本勇希佐々木豪は準優勝がありますし、木村皆斗もファーストクォーターラウンド6では全体3位で表彰台に上っています。この過去の開催で上位に入っていた3名は予選3連勝で勝ち上がり、その実力を発揮していたように思います。

 人気を集めていたのもこの3名です。1番人気は脇本勇希、2番人気は佐々木豪、3番人気は木村皆斗となり、その中で初優勝を果たしたのは3番人気の木村でした。

シリーズ4走すべて1着の完全優勝で初の栄冠を勝ち取った木村皆斗

 木村は予選から準決勝まで積極的な先行を見せていましたが、決勝では競輪でも実績上位の脇本と佐々木がいたからか、思い切ったレースはできていませんでした。しかしながら、結果的にはそれが功を奏するわけですから「レースは生き物」だと改めて思うばかりです。

自分の先行スタイルを一切譲らなかった佐々木豪

 それでは決勝を振り返っていきます。スタートの並びはインコースから⑥中村圭志伊勢崎彰大河村雅章木村皆斗脇本勇希佐々木豪となりました。ただ、2周目に入ったところで伊勢崎が自転車を外に上げていくと、その後ろにいた河村と共に、佐々木の後ろとなる5番手と6番手に付けました。これは「レースの主導権を握るのは佐々木」と見てのポジションチェンジと言えます。この2人が下がったことで2番手になったのが木村です。

 そして「PEDAL ON」の前からポジションを上げていったのが脇本と佐々木でした。競輪でも先行を見せている佐々木のダッシュに伊勢崎がついていけなかった一方で、2番手を回っていた木村は、外から佐々木に合わせていった脇本の後ろという絶好の位置を取りました。

脇本勇希(1番車・ホワイト)の後ろの位置を取った木村皆斗(4番車・ブルー)

 残り2周で先頭に立っていたのは佐々木でしたが、その外を脇本が並走していきます。PIST6だけでなく自転車競技「ケイリン」でも、こういった展開となった時には、捲ってきた選手の後ろに入るのが一つの作戦になります。しかし、なんと佐々木は脇本に対して「競輪」のように先行勝負を挑んでいきます。

残り2周のもがき合いは意地と意地のぶつかり合い

 そして、対する脇本も一歩も引きませんでした。その理由は両選手ともに、ただ完全優勝を果たすのではなく「内容にもこだわったレースがしたかった」のでしょう。それだけに「勝ちたい!」という気迫が全面に出ていたラスト2周における両選手のもがき合いは、実に見応えがありました。

ラスト2周における先頭・佐々木豪(2番車・ブラック)と脇本勇希(1番車・ホワイト)の両選手の壮絶なもがき合い

 もし脇本がすんなりと前に出て佐々木が番手を取っていたのなら、その上を叩いていくのは3番手の木村になっていたはずです。この展開なら脇本と木村はもがき合いになるので、後ろを走る佐々木に勝機が訪れたでしょう。その展開を選ばずに自力勝負を徹底したのは『先行選手』である佐々木のプライドです。そこに同じS級である脇本も『先行選手』としてのプライドをぶつけていった形ですね。あのもがき合いはまさに先行選手同士のプライドVSプライドと言えるでしょう。

まだまだ強くなる木村皆斗

 そしてファイナルラップ。最終バックで満を持して2人の後ろにいた木村が発進していきます。そのまま捲り切った形となっただけに、「転がり込んできた勝利」と言える部分もあるかもしれません。木村としても納得がいかないレースだったかもしれませんが、このメンバーを相手に優勝できたのは確実に自信になったはずです。

消耗し合った2人を外から捲っていく木村皆斗(4番車・ブルー)

 木村は養成所時代に2度ゴールデンキャップを取っているだけでなく、学生時代は競技でも優秀な成績を残してきました。デビューから1年ほどしか経っていない競輪でもすでに実績を残しており、7月からはS級に上がれるところまで来ています。今大会のようにきちんと先行することに意識を置いて行けば競輪でもPIST6でもまだまだ強くなれる選手です。

変化していく駆け引き、さらにレースは奥深くなっていく

 そのほか、今回のラウンドの特徴として「ポジションチェンジ」が挙げられるでしょう。決勝の伊勢崎だけでなく、準決勝でも脇本が2周目で1番手から6番手まで車を下げていましたし、PEDAL ONの前からのポジションチェンジが見受けられました。

「PEDAL ON」の前から各選手の思惑が交錯し大胆なポジションチェンジがあった

 これまでのPIST6はペーサーが外れるまではレースが動かない傾向にありました。しかし、選手たちが出走経験を重ねていく中で、その辺りが変化してきています。決められたスタート位置では勝つのが難しいと感じたり、脚質的に先行しそうな選手の後ろを回りたいと考えたりする選手も増えてきたのでしょう。今後も早々にポジションを変える選手が出てくることで、レースは更に流動的になっていきそうです。

高配当も期待できるPIST6

 また、昨日の決勝では3連単が28,180円と高配当のレースになりました。人気を背負っていた佐々木が車券圏内から外れたり、後方から追い上げてきた河村が5番人気だったことなどが要因ですが、河村も木村もタイムトライアルでは決して上位ではありません。

 2人ともタイムトライアル1位の脇本とは結構な差がありながらも、レースの組み立て次第で勝ち上がっていくことが可能であり、しかも能力的に僅差の選手が揃う決勝では、逆転の可能性があることを証明してくれたと思います。

 「PIST6はタイムで決まる堅いレースだろう」というイメージを持たれがちですが、勝ち上がってきた選手で争われる決勝は、そこにポジションチェンジといった高度な駆け引きも加わってきます。その辺りが活発になってくるとレースが面白くなっていくのは言うまでもありませんが、結果として上位人気の選手を下位人気の選手が破るような、いわゆる「高配当」も期待できるようになっていくでしょう。

坂本勉が選ぶ! 今シリーズのMVP

 優勝した木村…と言いたいところですが、決勝で2周に渡って迫力あるもがき合いを見せてくれた佐々木と脇本ですね。PIST6の舞台であのようなレースを見たのは初めてでした。しかもそれでいて脇本は3着にも残っています。もちろん着順は木村の方が上で、勝利者は木村に他なりません。でもレース内容は佐々木・脇本の両選手が上回っていたように思います。

 ここは意地と意地でぶつかり合った佐々木と脇本にMVPと敢闘賞の両方を贈りたいですね!


【netkeirinからPIST6のレースに投票しよう!】

 netkeirinではPIST6の出場選手の成績や内容充実の出走表を見ながら、ラクラク買い目を作成することができます。作った買い目はTIPSTARの車券購入ページに送ることができるので、そのまま車券投票が可能です。

 また、出走表の下部にはPIST6攻略法として「予想の基本」を掲載していますので「予想の仕方がわからない」といった初心者の方にも安心です。PIST6の開催日にはレース映像のライブ中継もありますので、ド迫力のスピードバトルを観戦しながら楽しくベッティングしてみてはいかがでしょう。「PIST6 Championship 2022-23」もいよいよセカンドクォーターに突入! すでに楽しんでいる人もこれからの人も目指せ的中!


●坂本勉(さかもと・つとむ)
1984年、ロサンゼルス五輪に出場し銅メダル獲得。日本の自転車競技史に初めてメダルをもたらし、“ロサンゼルスの超特急”の異名を持つ。2011年に競輪選手を引退したのち、自転車競技日本代表コーチに就任し、2014年にはヘッドコーチとして指導にあたる。また2021年東京五輪の男子ケイリン種目ではペーサーも務めた。自転車トラック競技の歴史を切り開いた第一人者であり、実績・キャリアともに唯一無二の存在。また、競輪選手としても華麗なる実績を誇り、1990年にKEIRINグランプリ、1989年と1991年にはオールスター競輪の覇者となった。現在は競輪、自転車競技、PIST6と多方面で解説者として活躍中。展開予想と買い目指南は非常にわかりやすく、初心者から玄人まで楽しめる丁寧な解説に定評がある。

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