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「認知度不足を痛感も、手応え」鈴木千樹代表が語る"PIST6"の未来/特別インタビュー

2022/01/12(水) 18:00 2 8

TIPSTAR DOME CHIBAにて。この日は「PIST6 Championship JAPAN HEROES」年内最後のレースが開催されていた (Photo by Kenji Onose)

千葉の「TIPSTAR DOME CHIBA」で2021年10月から開催されている新しい自転車競技トーナメント「PIST6 Championship(以下、PIST6)」。10~12月にかけて行われた開幕シーズン「JAPAN HEROES」はシーズンファイナルを終え、過去ナショナルチームで活躍するなど、自転車競技経験豊富な雨谷一樹がシーズンの覇者となった。そして2022年1月現在、新シーズン「ZERO」がスタートしている。「JAPAN HEROES」のシーズン最終日、netkeirin編集部はPIST6に関わるイベント運営、来場者の体験設計などの現場を作り上げてきた(株)PIST6の鈴木千樹代表にインタビューを実施。「PIST6」が開幕してからの3ヶ月について、また今後の新たな展望について話を聞いた。

「PIST6」という中身に関しては自信あるものに仕上がっている

 よく晴れたPIST6年内最終レースの開催日、TIPSTAR DOME CHIBAにPIST6公式ロゴ入りパーカーのカジュアルな出で立ちで登場した鈴木千樹(すずき・かずき)氏。 代表を務める(株)PIST6は、千葉市より公営事業であるPIST6の包括委託を受けた(株)JPFから一部再委託を受け、PIST6のレース開催を担当している、(株)JPFと(株)ミクシィによる合弁会社だ。

ーーまずは10月から始まった「PIST6」ですが、実際に動き始めて見えてきたもの、現在の状況についてお聞かせください

 そうですね。私たちは公営競技という特別な権利を扱わせていただいている業界で、新しい挑戦をしているところです。新しいことを始めるのにはどうしても時間がかかります。準備段階からコロナの影響も受けましたが、この場所で新しい競輪を立ち上げ、11月には有観客での開催もスタートすることができ、(今日で)最初のシーズン「JAPAN HEROES」が納められる、ということに、まず一安心しています。

ーーおめでとうございます。新しい挑戦もまだまだ始まったばかりだと思いますが、3カ月を振り返ってみていかがですか?

 課題を感じています。「PIST6=新しいケイリン」の中身に関しては「場」を含めての作り込みにかなり時間をかけてきているので自信があるものになっているんですが。外へ向けての認知というところが、まだまだ及ばない状況です。来ていただければ絶対に楽しんでもらえる中身はできたと思います。今後はまず知ってもらうことに力を注ぎたいですね。

光あふれるサブエントランス、隣接はレストラン「ORANGE & PIZZA」(Photo by Kenji Onose)

 良い悪いではなく、今まで「競輪=ギャンブル」というイメージがあったので、ファミリーや若者といった広い層に届きにくい面もあったかもしれません。これについては「PIST6はスポーツを楽しみながら、かつベッティングもできる場である」というイメージづけはできているかなと思います。あとはそれを知ってもらうためにも、どれだけ現地にお越しいただけるか、新しい楽しさを体験してもらえるかということ。また実際にお客さんがもっと入った場合にも、そのイメージを守り続けるということも課題になりそうです。

 バーエリアなんかも、ちょっと飲みにくる感覚で使っていただければなと。目の前で自転車競技を見ながら、おつまみ食べて、美味しいお酒飲んで、友達と楽しんでという場にしてもらいたいですね。

ーーそういった具体的な楽しみ方が、外に伝わるといいですね

 PIST6はスポーツとしての側面を重視しているので、選手へのリスペクトは見える形にしていきたいと思っていますね。今でも良いレースや、1着になった選手に客席から自然と拍手が出るといった会場の雰囲気があり、選手もファンに手をあげて応えたり。選手がスポットを浴びるような演出もしていますし、それが選手のモチベーションにもなるんですよね。トーナメント中、全てのレースで1着になった選手にインタビューをしているのですが、選手も「順位決定戦でもいいからインタビューされたい」と言ってくれています(笑)。

『ZERO』は、これから始まる通年のチャンピオンシップの黎明期

「ZERO」は黎明期となるシーズン、新年度からの年間リーグを占う重要な位置づけ(Photo by Kenji Onose)

ーー1月からの新シーズンになる「ZERO」の名称の意味はなんでしょうか?

 始まりの前、まさに「ZERO」です。現行の競輪で「競輪グランプリ」を頂点としているように、ここから「PIST6チャンピオンシップ」での通年の頂点、栄誉を作っていきたいと思っています。春、夏、秋、冬の4シーズン、それぞれのシーズンチャンピオンと、最後に年間でのファイナルチャンピオンを決める形での調整をしているところです。次年度からそれら全てを実現できるかは分かりませんが、新年度4月から始めていく、そのスタートの一歩前。「ZERO」から新たな段階へ。その黎明期を目撃できるシーズンとして期待していただきたいです。

ーー2021年10月から12月の「JAPAN HEROES」のシーズンについてはどうでしたか?

 「JAPAN HEROES」は、まずは開幕したという段階で選手も我々も手探りの状態でした。「PIST6ってこういうものなんだ」ということを試行錯誤していった3ヶ月間だったと思います。ポジティブな面もありましたが、お客さんの入りなどの面では、もう少しがんばりたかった。ただ、実際に出場した選手が面白いと感じてくれているのは、業界にとっても良い影響になっていると思います。お客さんにも選手が楽しんでいることが伝わっている、良い流れが確認できたと思いますね。

 これは「PIST6」というスポーツ競技であり新たなブランドである、とお客さんに伝えられたらと思ってやってきました。実際に僕が話したお客さんの中には、競輪だと思ってなくて「これ賭けれるんですか?」っていう人もいたので(笑)。「PIST6」としてのスタートのためのシーズンだったかなと。

足を運んでもらえれば、魅力は必ず伝わる。そのために何をするか

千葉公園の緑と、スポーツ施設などとシームレスに「PIST6」のヘルシーなイメージが定着して欲しい(Photo by Kenji Onose)

ーーこれからの施策について、お話しできる範囲でお聞かせください

 先程言ったように、中の作り込みに集中してしまって、手薄になっていた集客。お客さんにこの場所の魅力を伝えて実際に足を運んでもらう施策は、もうスタートしています。年末から千葉県内の駅やショッピングモールの映画館でも広告を出すようにして。まずは地元の千葉から盛り上げていければと考えています。

 新シーズンに向けてと言う点では、我々だけではなく業界の色々な関係者や自転車競技団体などとの調整もありますが、スポーツ競技としても魅力的なシーズンにしていけるよう取り組んでいます。昨今のコロナ情勢によってしまうのですが、当初の計画通り海外からも選手を呼んだりと、自転車競技全体の魅力を伝えていけるよう業界の皆様と調整をしています。一歩一歩の手応えは感じています。

ーー自治体との施策は何かありますか?

 千葉市さんとはもうずっと一緒にやっていますが、千葉市の神谷市長もどんどん広報誌にも載せていこうと言ってくださっていますし、市長自らSNSでPIST6のことを発信してくださっています。千葉市の今年の10大ニュースに載せていただいたり。ただ現時点ではまだ、千葉周辺に住んでいる人にさえ、ここがどんな施設で何をやっているか伝えきれていない状況です。何よりそれを第一に改善していきたいです。

ーーここ千葉公園は緑も多く、スポーツ施設もある環境はとても明るい健康的な雰囲気です。これは強みにできそうですか?

 はい、週末は子供達も多いので、ここはなんだろう? って覗きにきていたり。以前の千葉競輪場の時代は、公園と競輪場が分断されていたので。まあ子供たち向けの施設ではなかったですし。今でこそ公園からのアプローチができていますが、以前は壁で区切られていたんです。ここ(ガラス張りのサブエントランス部分)はまだ開放してないですが、このガラスから何やってるのか覗いている人が多いんです(笑)。

「自転車は持っています、乗っているなんて言ったら社員に叱られちゃうレベル」と笑う鈴木氏(Photo by Kenji Onose)

ーー鈴木さんご自身のお話ですが、学生時代に自転車競技に興味があったのがTIPSTAR DOME CHIBAと(株)PIST6の生みの親である、(株)JPF入社のきっかけとお聞きしています

 えっとですね、自転車競技も実は…当時は全然知らなくて(笑)。もともと僕の学生時代にはストリートのカルチャーでピストバイクが流行ったんです。でも、これってそもそも競輪の自転車なんだよな、ストリートカルチャーとしては流行っているけど、元の競輪って僕ら世代に流行っていないのはなぜだろう?と思って。

 それで競輪について調べていた時に弊社(JPF)※を見つけました。そこで弊社がオリンピックの写真判定をしたことがあったりする会社だということを知って、興味を持ったのが最初です。その後受けた入社面接で代表の渡辺と話をしていたら、渡辺も昔、DJをしていたという話題になって面白いところだな、となったのがきっかけです。 ※編集部注:鈴木氏は現在(株)JPFの常務取締役も兼任している

 そしていざ、競輪場に来てみて。自転車競技自体に魅力がないのかというと、見てみたらとても深いし面白いし、オリンピック種目にもなっているものだし。これは、打ち出し方が問題なのかなと。今の競輪を作ってきた関係団体やお客さんに対してのリスペクトもありますし、今までのお客さんを大切にしながらも、新しいお客さんを呼ぶにはどうすればいいのか、それを考えていくうちに魅力に取り憑かれた感じですね。

ーーヨーロッパの自転車競技なんかは、若者も多くて盛り上がっていますね

 先日行われたロンドンのチャンピオンズリーグもそうですが、向こうは文化として根付いているというか。我々も野球場に観戦に行くのって選手の一挙手一投足を見たいという人も当然いますが、多くの人はビールを飲んだり応援して場を楽しんでいる。社交場として楽しみたいっていう文化ですよね。

 ヨーロッパでは自転車競技でもその文化が出来上がっているから、競技を見ながら、ビールを飲んで、友達と食事したりしながら盛り上がれる。そういった文化を千葉にも新しく作って根付かせていければと考えています。

ーーご自身では、その後に自転車は乗ったりしていますか?

 乗らなくはないんです、弊社は自分でも自転車乗ろうという雰囲気があるので自分でもロードバイクは持っているんですが。乗っているかというと社員に怒られてしまう程度なので(笑)持っています、くらいでお願いします(笑)。でも、伊豆ベロドロームで走ったことがあるんですよ、めちゃくちゃ怖かったですけど。でもあの場所で走ったという経験をしているので、70kmのスピードで6人が競い合うっていう凄さが体感でわかるというか。

自転車競技って面白いんだ、と選択肢のひとつを生む場所に

鈴木氏本人も愛用のPIST6パーカーをはじめとしたグッズも揃う。エントランスでは現代美術家の松山智一氏による彫刻とウォールペイントが出迎える(Photo by Kenji Onose)

ーー最後に、この記事の読者や未来の選手たちに向けてメッセージをお願いします

 日本で唯一の常設で、ほぼ毎週末に大会が開催されている国際規格の自転車競技場になると思うので。まずは見に来ていただければ。来てもらえたらこんなにかっこいいんだ、と思ってもらえると僕は思います。

 最終的にはPIST6がきっかけで競輪選手になりたいと思う若い方が出てきたり、自転車競技に興味を持つ人が増えたり。そういう拠点になっていかなくてはと思います。でも、まずはそれ以前に、自転車競技って面白いんだ、と、スポーツ観戦の選択肢の一つになってくれるような場所を作っていきたいです。

 TIPSTAR DOMEそのものにも色々と楽しめる工夫をしているので、まずは気軽に遊びに来て欲しいですね。アートだってありますし。あといま僕が着ているパーカーもそうですけど(笑)、グッズも普段使いできるようなオシャレなものを用意しているので、ぜひご覧になって欲しいです!

写真 小野瀬健二 取材・構成 netkeirin編集部

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