2025/11/25(火) 18:00 0 4
今年の顔であり、2026年S級S班所属となる9名の選手たちによる一発勝負。競輪界の一大決戦「KEIRINグランプリ2025」が30日、平塚競輪で開催となる。netkeirinでは9日間、出場選手たちの特徴やグランプリまでの道のりを日替わりでお届けしていく。今回は競輪一家でおなじみ、吉田3兄弟の長男・吉田拓矢を紹介する(構成:netkeirin編集部)
父が元選手の吉田哲也、叔父も元選手の吉田伸二、そして弟には現役選手の吉田昌司、吉田有希というまさに“競輪一家”の家庭で育った吉田拓矢。兄らしく一家を牽引する走りで20年の佐世保記念でGIII初制覇、そして翌年21年の競輪祭を単騎で制しGI初制覇を挙げるなど順調すぎるほどの活躍ぶりだった。
しかしスター街道はそう簡単に歩めない。タイトルを獲った良い流れのまま迎えた21年末の大一番・グランプリ。宿口陽一、そして関東の総大将・平原康多の前回りという大役を任されて吉田は迷うことなく果敢に先行勝負を挑む。だが、そんな吉田・宿口の決死の二段駆けを古性優作が単騎捲りで全てを呑み込んだ。関東ラインから勝者を送り出すことはできず、めでたいはずの初のグランプリはとても苦い思い出となってしまった。
そして翌年22年は賞金14位でS班から陥落。23年、24年もあと一歩が届かないもどかしいレースが続き、グランプリからは遠ざかってしまった。
しかし今年の吉田は年始から勢いが違った。まず今年一発目のGI・全日本選抜で優出を果たすと、次走の玉野記念で優勝するなど、勢い・実力ともに明らかにS班を狙えるデキにあることは間違いなかった。
そして続く大一番のダービー、初日特選では3番手から鋭く追い込み新山響平、脇本雄太、古性優作ら強力メンバーを封じて白星発進を決めると、準決勝では車番の悪さというハンデも跳ね返して鋭く追い込み2着で決勝への切符を手に入れた。
迎えた決勝戦。暴走失格を喫した因縁の23年オールスターも含めて、幾度となくタッグを組んできた眞杉との2車ライン結成となり、今回はあのオールスターとは前後逆で挑むこととなった。
レースは大方の予想通り新山響平が突っ張り先行を敢行し、関東コンビは中団5、6番手の位置をキープ。そのままの隊列でレースは進み、最終バックを通過したところで眞杉匠が捲り発進する。凄烈な加速で菅田の牽制を切り裂くように突破し最後の直線を迎えた。盟友・眞杉とのマッチレース、激しい末脚勝負を制し、最後の一踏みで前へ出たのは吉田だった。
レース後、勝因を問われた際に「子どもが誇りに思ってくれる父親でいたいと思っていたので頑張れた」と語った。年末の大舞台でもまたパパが躍動する姿を愛する家族のために披露したい。
吉田拓矢の選手としての魅力といえば、やはり安定感。今年出場したビッグレースで優出を逃したのは準決勝で敗れた宮記念とガラポン抽選で敗れた共同通信社杯のみで、他の6大会では崩れることなくしっかりと決勝戦まで勝ち上がった。
その魅力を象徴するレースがダービーの初日特選だ。初手でまず新山響平ー菅田壱道の後ろを確保。しかし打鐘で後方から脇本が仕掛けてきたタイミングでググっとペースを上げた北日本勢と一瞬口が開いてしまい、割り込まれそうになるも、この位置をしっかりとキープして、最後の直線では菅田壱道に牽制を貰っても失速することなく鋭く突き抜けた。このレース巧者ぶりこそが安定感の源と言えるだろう。
「とっつきやすいし、いい関係性」と話す眞杉とのコンビならこの魅力もさらに引き出せるはず。あの敗戦から4年。あの時よりもさらにパワーアップした吉田拓矢が再び眞杉匠と共に、栄光の頂を見据える。
