2025/11/26(水) 18:00 0 0
今年の顔であり、2026年S級S班所属となる9名の選手たちによる一発勝負。競輪界の一大決戦「KEIRINグランプリ2025」が30日、平塚競輪で開催となる。netkeirinでは9日間にわたり、出場選手たちの特徴やグランプリまでの道のりを日替わりでお届けしていく。今回は九州のエースとして地区6年ぶりのグランプリ出場を果たした嘉永泰斗を紹介する。(構成:netkeirin編集部)
自転車競技の強豪・九州学院出身で養成所入所前から高く評価されていた嘉永。デビュー4年目の2021年にビッグレース初出場、同年に地元記念も制覇するなど順調にステップアップ。GI制覇も時間の問題と大きな期待を集めていた。
だが、そこからは“あと一歩”が足りない日々が続く。特に最大のチャンスであった23年の「共同通信社杯競輪(GII)」では予選を圧巻の内容で勝ち上がり、決勝戦で新山響平、清水裕友、深谷知広といった超強力メンバーを差し置いて1番人気に推される。しかし、レースでは深谷のブロックに屈して7着に敗れ、レース後に「脚力が足りなかった」と悔しさを滲ませるコメントを残した。
その後は長いスランプに突入し、約2年もの間、ビッグレースで優出すらできない時期が続いた。
そんな暗い雰囲気から一変、急激に復調気配を感じさせたのが今年8月の「オールスター競輪(GI)」だった。初日のオリオン賞では山口拳矢と接戦繰り広げ3着、二次予選Aでは脇本雄太、中野慎詞らをロング捲りで粉砕し北津留翼とワンツーを決めるなど、超強力メンバーを相手に嘉永の自力が通用し始めた。
そして続く「共同通信社杯競輪(GII)」でも相手が清水裕友、岩本俊介のS班2人に寺崎浩平という厳しい準決勝を乗り越えて優出を果たすなど、完全に九州のエースとしての風格が戻った。
そんないい流れのまま迎えた「寛仁親王牌(GI)」(以下:親王牌)。準決勝は河端朋之、吉田拓矢がマッチレースを繰り広げるところを猛追して3着でまたまたビッグレースで決勝進出を決めた。
決勝戦は犬伏湧也擁する四国勢が人気を背負い、それに吉田拓矢、古性優作が続く形で嘉永は完全に伏兵的な立ち位置だとファンは考えていた。しかしレースは大波乱。犬伏の先行という展開が大方の予想とされていた中、吉田がまさかの先行策に出る。しかし嘉永はここで冷静に関東2車の後ろ3番手を確保し、その隊列のまま打鐘を迎えた。
最終1センター、清水裕友が5番手から捲り発進するところを合わせる形で嘉永が3番手から仕掛ける。先行する吉田の番手・恩田淳平が必死に車間を切って牽制を入れるが、それをパワフルな捲り一閃で楽々と乗り越えて先頭に立つと、そのまま後続を突き放して悲願のGI初優勝をつかんだ。
レース後嘉永は「まだ信じられない」と整理がついていない様子だったが、続けて「来年2月は熊本で全日本選抜がある。そこにS級S班で迎えられる。」と早くもS班としての責任感のようなものを感じさせるコメントを残した。
以前当サイトで行った独占インタビューで「負けられない相手」として同期の眞杉匠を挙げていた嘉永。今回のグランプリではまさにそのライバル対決が実現する。宿敵をなぎ倒し、長らく低迷していた九州地区に希望の光をもたらしたい。
嘉永と言えば強力なまくりが持ち味だが、今まではここぞ! の場面で後手を踏んで決め切れないというシーンも少なくなかった。しかしここにきて勝負強さも備わって、かなりパーフェクトに近い選手になってきた。
そして親王牌優勝後、その魅力にはさらに磨きがかかり、「競輪祭(GI)」の最終日には太田海也、新山響平、深谷知広、石原颯といった超積極型の選手が揃う中、単騎でバックを取るロング捲りを放ち1着を獲得したように、今の嘉永は仕掛けどころを逃さない。
メンバー構成的にグランプリは単騎戦となりそうだが、今の嘉永なら単騎でも後手を踏まずに必ず見せ場を作ってくれるはずだ。
