2025/12/03(水) 18:00 0 8
今年の顔であり、2026年S級S班所属となる9名の選手たちによる一発勝負。競輪界の一大決戦「KEIRINグランプリ2025」が30日、平塚競輪で開催される。netkeirinでは9日間にわたり、出場選手たちの特徴やグランプリまでの道のりを日替わりでお届けしていく。今回はスピードで時代を築く2022年のグランプリチャンピオン脇本雄太を紹介する。(構成:netkeirin編集部)
高校時代から国体2連覇、ジュニア世界選手権出場と輝かしい実績を残し、その後のナショナルチームの活動でも東京五輪出場、世界選手権銀メダルなど世界に名を轟かせる走りで日本の自転車競技を牽引した脇本雄太。
また、競輪での走りも圧巻で、ビッグレースでは数えきれないほどの優勝歴を誇り、なおかつ自分が勝つだけではなく、ここぞの場面では村上兄弟、稲垣裕之などの前で“漢字の競輪“も体現してきた実績もある。
そんな競輪界の大スター・脇本だが、今年は山あり谷ありの1年だった。
昨年のグランプリでは古性優作を優勝へと誘い、自身も3着に逃げ粘る好レースで24年を締めくくった脇本。そして迎えた25年一発目のGI「全日本選抜競輪」では決勝戦で同県の寺崎浩平の捲りを鮮やかに抜き去り、いきなりのGI制覇を達成。
その後「ウィナーズカップ(GII)」、「日本選手権競輪(GI)」では優出を逃し、GIIIでも優勝から遠ざかるなど一時は低迷期に陥るが、再起のきっかけとなったのが「高松宮記念杯競輪(GI)」だ。
予選2走は共にロング捲りで番手選手を連れ込みつつ、3着以下を大きく引き離す走りでロケットスタートを決める。そして白虎賞・準決勝ではナショナルチームの後輩である太田海也との対決となるが、連日とも太田の先行を豪快に捲って連勝をさらに伸ばした。
完全優勝が懸かる決勝戦。相手には深谷知広ー郡司浩平ー松谷秀幸の南関3車に太田海也ー清水裕友の中国2車と強敵が揃った中、脇本は全日本選抜と同様に同県の後輩である寺崎に前を託す。
初手の位置取りは寺崎のオーダー通り中団からのスタート。赤板で後ろ攻めの関東勢と中国勢が踏み合う絶好の展開となったところで、寺崎がカマシ先行を敢行。そのままの隊列でレースは最終バックまで進み、ここで脇本が番手発進。
番手から出るか、寺崎を残しに行くか、のちに「葛藤はありましたね…。」と語っているように難しい判断ではあったが、ここは地元の古性とワンツーを決めるためにシビアにペダルを踏み込んだ。
そしてレースは最後の直線へ。完全に後続を突き放し、脇本と古性のマッチレースになるが、思い切り抜きにかかる古性に差を詰めさせないパワフルな走りでそのまま押し切り、脇本が今年2度目の優勝を勝ち取った。
その後も「オールスター競輪(GI)」で寺崎を初GI制覇へと誘うなど順風満帆な様子だったが、10月の「寛仁親王牌(GI)」でアクシデント発生。3日目まで順当に勝ち上がったが、準決勝を当日欠場。ウォーミングアップ中にローラーから転倒し、左ひじ脱臼骨折の大怪我を負ってしまう。
自身のSNSでは手術痕の画像をアップしているが、その傷跡はとても痛々しい。グランプリを万全な状態で迎えることが出来るのか、非常に心配なところではあるが、これまで数々の経験を積んできた脇本ならこの困難も乗り越えていけるはず。まずは当日、元気な姿を見せてほしいところ。
脇本の魅力と言えばやはり、異次元のスピードで前を一瞬にして呑み込む捲りだろう。今まで幾度となく、普通では考えられないような圧巻のレースを見せてきているが、今年特に凄まじかったのは京王閣記念の決勝だ。
後ろから抑えに来る菅田壱道の番手・新田祐大の位置で眞杉匠が飛びつき策を敢行。両者がもつれた結果、最終1コーナーで新田と大川龍二が落車し、脇本も落車こそしなかったものの、その煽りを受けて金網付近まで迂回する不利を受け、映像からもフレームアウトするほどの後方に置かれてしまう。
そして3コーナー。菅田の番手を奪取した眞杉が番手捲りを放ち、このまま抜け出すかと思われたが、画面の右端から急に一人だけジェット機のようなスピードで飛んでくる選手が一人。脇本だ。
そのままイエローライン付近の大外をブン回してあっという間に前団に迫ると、最後の直線では抜け出す眞杉を楽々と交わし、先頭でゴールを駆け抜けた。
「え? なんであの位置から届くんだ!?」とファンはみな驚いたが、脇本自身も「まさか届くとは思っていなかった」と驚いている様子。だが、不可能を可能にしてしまうのが脇本の脚。グランプリでも輪界最強たる所以を選手・ファン全員に見せつける。
