アプリ限定 2024/10/13(日) 18:00 0 36
『誰が残りのGIを優勝するのか? 誰が賞金争いを制してグランプリの切符を手にするのか?』は競輪ファンの関心の一大要素! 共同通信社杯競輪終了後、賞金ランキングへの注目度も高まっており、明暗を分ける“ボーダーライン”を予測している人も多いことでしょう。今回は2021年〜23年の過去3年間のデータを参照して「グランプリ出場のボーダーライン」について考察したいと思います。(構成:netkeirin編集部)
ボーダーラインを考察するにあたり、過去3年分のデータを並べてみたところ、「共同通信社杯終了時点の上位9名」は、その後に順位変動はあるものの、激しい順位変動は起きない傾向にあることがわかった。過去3年において、共同通信社杯終了時点のランキング10位以下の選手がグランプリの出場を決めたケースはわずか3例のみで、いずれの選手も賞金の積み増しによる順位入れ替えではなく、GIを勝利して優先出場権を獲得したものである(詳細は下記表をご参照ください)。
年 | 選手名 | 権利獲得方法 | 共同通信社杯 終了時点順位 |
---|---|---|---|
2023 | 該当なし | 該当なし | 該当なし |
2022 | 新田祐大 | 寛仁親王牌優勝 | 20位 |
2022 | 新山響平 | 競輪祭優勝 | 30位圏外 |
2021 | 吉田拓矢 | 競輪祭優勝 | 11位 |
この事実を参考にして、改めて今年の共同通信社杯終了時点でのランキング上位9名を振り返っておきたい。なお、GIタイトル獲得者は「出場確定」、未獲得の選手は「賞金額」を記載する。
順位 | 選手名 | 出場権利選考 |
---|---|---|
1 | 古性優作 | 出場確定 |
2 | 平原康多 | 出場確定 |
3 | 郡司浩平 | 出場確定 |
4 | 北井佑季 | 出場確定 |
5 | 清水裕友 | 92,308,696円 |
6 | 眞杉匠 | 87,728,674円 |
7 | 脇本雄太 | 74,452,948円 |
8 | 岩本俊介 | 72,893,274円 |
9 | 新山響平 | 67,859,000円 |
現時点では古性優作、平原康多、郡司浩平、北井佑季の4名がGIを制しての出場を決めており、残り5枠の出場枠が残っている。寛仁親王牌と競輪祭でこの4名が再び優勝するか、あるいは10位以下の選手が新規で優勝するかで椅子の数は変動する。
ちなみに、過去3年で賞金争いに打ち勝ってグランプリ出場を決めた選手の「共同通信社杯終了後〜競輪祭終了」の期間に上乗せした賞金積み増し額の平均額は「1,700万円」である。残り2つのGIで優勝して出場権利を“新規で”獲得する選手の有無を考慮しつつ、この平均値を参考にボーダーラインを予測すると、下記の通りになる。
残りGI新規優勝者数 | ボーダーライン(予測) |
---|---|
0人 | 8,500万円程度 |
1人 | 9,000万円程度 |
2人 | 9,200万円程度 |
あくまでも過去3年データより算出できるひとつのサンプルに過ぎない。とはいえ、共同通信社杯終了時点で9,200万円を突破しており、なおかつ6連覇中と異次元的な強さを示している地元防府記念を残している清水裕友はよっぽどのことがない限りグランプリ出場を逃すことはなさそうだ。
また、ランキングにおける賞金差額に視点を向けてさまざまなケースを想定してみたが、眞杉匠が10位以下になる確率はかなり低い。共同通信社杯終了時点のランキングと過去データを照らし合わせると、清水裕友と眞杉匠までが安全圏内と言えるだろう。
より精度の高いボーダーライン予測をするためには上記の考察に加えて、今年の賞金額のアップ幅についても考慮しなくてはならない。2021年から車券売り上げの増加にともない、年々賞金額は膨らんでいる。特にGI決勝への割り当ては高く、2021年と2024年では大きく異なる。下記表に寛仁親王牌と競輪祭の決勝2位以下の(2021年と2024年の)賞金差額表を示すのでご覧いただきたい。大幅アップしている様子は一目瞭然だ。
順位 | 寛仁親王牌決勝 | 競輪祭決勝 |
---|---|---|
2 | 5,080,000円 | 5,760,000円 |
3 | 3,160,000円 | 3,740,000円 |
4 | 2,225,000円 | 2,756,000円 |
5 | 1,737,000円 | 1,993,000円 |
6 | 1,420,000円 | 1,540,000円 |
7 | 1,306,000円 | 1,484,000円 |
8 | 1,183,000円 | 1,386,000円 |
9 | 1,115,000円 | 1,317,000円 |
この3年間で寛仁親王牌の決勝2着賞金は508万円、競輪祭の決勝2着賞金は576万円もアップしている。賞金ランキングによるグランプリ争いを考える時、GIの決勝戦に乗ることの重要性は年々高まっていると言えるだろう。(賞金争い視点では余談になるが、2021年との比較で今年の優勝賞金は寛仁親王牌、競輪祭の両開催共に1000万円以上も増額している)
本稿前半での考察は過去データ比較や過去データ平均を示したものであり、この大幅な賞金額アップは加味していない。なおかつGI予選・準決勝や各GIの間に行われる記念開催も考慮すれば、2024年のボーダーラインは「500万円程度は上振れしそう」と予測するのが現実的だ。先ほどの表をアップデートしたものが下記表である。
残りGI新規優勝者数 | ボーダーライン(予測) |
---|---|
0人 | 9,000万円程度 |
1人 | 9,500万円程度 |
2人 | 1億円程度 |
「ボーダーラインが1億円になるわけない」という声も聞こえてきそうだが、記事執筆現在、もっと上にボーダーラインが敷かれるケースも多々見つけており、1億2000万円台がボーダーラインになる展開も確認している。
また、今年残りのGIで古性優作、平原康多、郡司浩平、北井佑季以外で新規の優勝者が誕生した場合、2022年の推移に似ている。2022年は賞金による出場選手は3枠でボーダーラインは「9350万円(競輪祭終了時点7位・平原康多)」だったので、賞金がアップしている今年の予測値が1億円というのは何ら不思議な数値でなく、自然である。逆に、古性優作、平原康多、郡司浩平、北井佑季が残りのGIを優勝する場合は賞金による出場選手は5枠となり、ボーダーラインは下がると見るのが自然である。
GI戦線でバトルを繰り広げる上位選手たちは“タイトルを獲得してのグランプリ出場”に挑んでいるため、「もしも残りのGIで優勝できない場合」の条件で考察するのは選手にもその選手のファンにもいささか失礼だ。だが本稿のテーマは『ボーダーライン予測』であるため、あくまでも参考データとして受け取ってもらいたい。
記事執筆時点の10月11日現在で確定している上位選手のあっせん状況を確認し、「GIを優勝せずとも (上記で考察した)ボーダーライン予測付近の賞金を獲得可能」な選手たちを16名に絞り込んだ。
寛仁親王牌と競輪祭の両方で決勝2着の場合は約5,000万円(49,456,000円)の上乗せになるので、やはりどれだけGIの決勝で良い着を獲るかが重要だ。また、記念開催も完全優勝なら600万円を超える賞金獲得が可能なので、僅差の戦いになった際には勝負をわける要素にもなってきそうである。
上記16名の中でも特に注目しておくべき5名をさらに絞り込んだ。
選手名 | 注目理由 |
---|---|
深谷知広 | 2024年後半戦好調、賞金アップ率高い |
吉田拓矢 | 2021年競輪祭優勝実績 |
佐藤慎太郎 | 2023年寛仁親王牌、京王閣記念ともに準優勝 |
松井宏佑 | 2023年競輪祭準優勝 |
松浦悠士 | 2023KEIRINグランプリ優勝、競輪祭決勝3着 |
現在賞金ランキング10位の深谷知広は共同通信社杯競輪で決勝5着、続くGIII開催の岐阜記念で決勝2着、熊本記念で優勝と後半戦の賞金アップ率が群を抜いている。まさに今の時期の“主役”という存在感があり、昨年は競輪祭で決勝進出(9着)の実績もある。今年のランキング争いを語る上で最重要人物である。吉田拓矢は9位の新山響平と470万円差の12位で、2021年に競輪祭を優勝しているほか、2022年は寛仁親王牌で決勝進出を果たしている。
特別視すべきは佐藤慎太郎。脚質「追込」の選手の中で今年も最高ランクで推移しており、昨年10月は寛仁親王牌と京王閣記念で準優勝を果たしている。今年も両開催に出場するほか、2020年に優勝実績を残している四日市記念への出場が決まっている。GI戦2つに加えて、好相性の記念を2開催残しているため、賞金の積み増しにも勢いがありそうだ。ちなみにGI優勝者を除いて2023年の「共同通信社〜競輪祭期間」の賞金積み増し額は第1位(3,200万円)だった。この時期に強いということ。
また昨年の競輪祭で準優勝の松井宏佑もこの時期に賞金を伸ばしている。2023年「共同通信社〜競輪祭期間」の賞金積み増し額は第2位(3,100万円)だった。昨年はボーダーラインのひとつ下の10位で競輪祭を終えており、文字通りに“あと一歩”。郡司浩平や北井佑季の同県選手が出場確定しているため、状況によっては強い追い風を受けられる位置でもある。
最も特別視すべきが2023年のグランプリ覇者で賞金王の松浦悠士だろう。今年は怪我による戦線離脱の影響で低空飛行が続いていたが、ここにきてランキング19位の4,880万円。しかも佐藤慎太郎同様にGI開催2つに加えて記念開催も2つ出場が決まっている。選手本人は連載コラムで「寛仁親王牌か競輪祭のどちらかを獲るしかないと考えています。相手次第になってしまいますから」と明言しているが、昨年の競輪祭は決勝3着であり、この季節に賞金を積み増す傾向も強く出ている。当然ながら、目を離すべき選手ではない。
これから始まる寛仁親王牌から競輪祭まで、『誰がグランプリへの出場を決めるのか?』という興味は尽きないだろう。賞金額のアップもあり、ボーダーラインは9,000万円〜1億円あたりの水準になりそうだ。過去3年のデータに基づいての予測記事につき注目選手には挙げなかったが、現在11位の窓場千加頼はニュースターとしての真価も問われるだろう。2024年はランキング変動なしに静かに進むのか、はたまたすでに17人が5,000万円越えというランキング状況に大変動があるのか。寛仁親王牌を前に今一度思いを馳せたい!