記念・特別は9車立て、欠車で5車立ては暴挙

　新型コロナ感染予防対策として従来の9車立てから7車立て(A級・S級)に移行ならば、10個レース制にすれば、そこまで密にはならず。宿舎も選手に負担をかける分宿(ホテル)にしないで済むのに、レース数を減らせば売り上げ、そして選手側からすれば斡旋本数が充たされないで、来年3月までは補充を無くし、追加も前検日の8日前までに決められた事で初日から6車そして5車のオンパレード。それで封印してたレースカットを強行。それに関しては賛成だが、根本的に違和感しか感じられない。

　競輪は創生期から9車立てで、余程の事が無い限り(9車を)割る事はなかった。それで隆盛を極めたのにもかかわらず、レース数を増やせば売れると判断したのがそもそもの間違い。ファンの資金は限られてるので、(1日のレース数が)“10個”であればそこで勝負するわけだし、顕著な例が以前のミッドナイトに現在のモーニングが(1日のレース数が)“7個制”で結果を残してるという事実。

　5車立て・6車立ては「競輪」にあらず、「ボート」の世界。記念・特別は9車立てなら、せめて7車立てまででしょう。5車立ては暴挙。選手が足りないならそこでレースカットだと思う。

　昔からラインはあったけれど“並び”はファンもしくは我々プロ(予想業)の読みに任せ、顔見せは単なる選手紹介で、コメントも作戦面は話し合いをさせず厳禁だった。それで並びを読むのに、どれだけ努力したか。それも競輪の魅力だったような気がする。昔に戻る事は天と地がひっくり返っても無理ならば、せめて記念・特別は7車立てまでにして、オールドファンにも楽しんでもらえるようにして欲しい、というのがこの道60年の私の見解。

眠れなくなるほど推理したあの頃を思い出す

　昭和の選手と平成生まれの選手との違いは、競輪学校(現養成所)の訓練である。

　昭和は距離を踏ませ、登坂をより多く取り入れたスタミナ重視の競輪。平成に入るやナショナル仕込みのスピード重視の競輪。それによりタイムが飛躍的に上がり、ラスト1周勝負に移行した。ましてや7車立てが主流になったことでその傾向は加速し、“職人"と呼ばれたマーカーのテクニックは通用しなくなった。「縦一本」競技みたいな競走形態ばかりになり、奥深さは消えていった。それが若者に受けたら大成功だったが、現実は厳しい。

　昭和の選手で根強い人気があるのは“横"もやれてスピード負けしない小倉竜二・諸橋愛・佐藤慎太郎・守澤太志・内藤秀久。玄人受けするレーサーで、競輪ファンの推定7割はいるであろうオールドファンからも支持されている。

　平成の代表は力任せの脇本雄太・新田祐大・新山響平・山崎賢人・松井宏佑・町田太我。“縦"も“横"も両方を兼ね揃えてるのは松浦悠士・郡司浩平・清水裕友・山口拳矢。

　もちろん当時無敵を誇った中野 浩一・井上茂徳・滝沢正光の時代も凄かった。さらにその前には高原永伍・平間誠記の13期生から、福島正幸・田中博・伊藤繁・吉川多喜夫・藤巻昇と伝説のスターはいたが、現在のルールではとてもとても。

　昔と現在はどっちが上かと尋ねられたら、私は科学的トレーニングを取り入れた現在のトップスターが強いと思う。比較する事自体に無理はあるが、それにしても、入場制限する程、お客が押し寄せた全盛期の競輪が懐かしいし、ルール・制度、そして話し合いで決める並び・作戦を明かし、推理するだけで眠れぬ夜を過ごした頃に戻って欲しい気持は死ぬまである。