アプリ限定 2024/02/22(木) 18:00 0 39
競輪選手の人数は、男女合わせて約2,300名。プロ野球の約900名、Jリーグの約1,700名と比較しても、競輪は国内においてプロ選手の多い競技であることがわかる。さらに注目すべきはその選手寿命だ。今回は「競輪選手の年齢」をテーマに、データを分析してみた。
項目 | 年齢 |
---|---|
平均年齢(全体) | 38.3歳 |
平均年齢(男子) | 39.1歳 |
平均年齢(女子) | 28.6歳 |
プロ野球平均引退年齢 | 28〜29歳 |
Jリーグ平均引退年齢 | 25〜26歳 |
2024年2月時点で選手登録されている全競輪選手の年齢データを集計したところ、平均年齢は38.3歳。プロ野球選手(NPB)やJリーガーの平均引退年齢と比較しても非常に高く、その選手寿命の長さが読み取れる。
競馬やボートレース等の他の公営競技と異なり、競輪は「生身の人間の力によるレース」にも関わらず、第一線で活躍する40代以上のベテランレーサーは珍しくない。
そういった理由からも、競輪は『セカンドキャリア』として選ばれることが多々ある。元ヤクルトスワローズの松谷秀幸や元松本山雅FCの北井佑季など、元プロ野球選手や元Jリーガー、さらには他競技のオリンピアン等も活躍している。
つまりデビュー時点で30歳を過ぎた「オールドルーキー」も多いのだ。”転身組”はアスリートだけに留まらず、元公務員のS1レーサー皿屋豊、元美容師のガールズレーサー長澤彩など異色キャリアの選手もいる。
プロ野球での歴代最年長選手は50歳まで現役を続けた元中日ドラゴンズの山本昌氏。サッカー界では現在56歳の”キングカズ”こと三浦知良選手がポルトガルのクラブで出場を続けている。
だが競輪界にはこれを上回る”還暦レーサー”が存在する。60歳を超えても現役で自転車にまたがり、激走をみせているのだ。
2023年度は当時の現役最年長選手だった佐古雅俊氏が、63歳で惜しまれつつ引退。現役最年長の座を引き継いだ森江信行氏も61歳で引退した。そして、今も現役で走っている60代の選手は6名いる。
選手名 | 級班 | 府県 | 年齢 |
---|---|---|---|
佐々木浩三 | A級2班 | 佐賀 | 61歳8か月 |
北沢勝弘 | A級3班 | 栃木 | 61歳5か月 |
小林覚 | A級3班 | 神奈川 | 61歳3か月 |
谷尾佳昭 | A級3班 | 岡山 | 61歳0か月 |
野崎修一 | A級3班 | 栃木 | 61歳0か月 |
高橋京治 | A級3班 | 埼玉 | 60歳2か月 |
※年齢は2月22日時点
還暦レーサーのほとんどが最下位クラスのチャレンジ戦(A級3班)で奮闘しているが、現在の“最年長レーサー”佐々木浩三はA級2班だ。2番目の年長者である北沢勝弘は昨年11月と今年1月に落車に見舞われているが、いずれも1か月程度で復帰しているガッツの持ち主。3番目の小林覚は昨年12月に2度、今年は2月18日に1着を取っている。
オフシーズンがないため、一度デビューすれば長く休むことはできない競輪選手という職業。長きにわたり鍛錬を重ねている“還暦レーサー”には頭が下がる。その諦めず戦う姿に勇気をもらっている競輪ファンは少なくないはずだ。
一方で競輪界には「代謝制度」がある。成績不振が続くと強制引退となってしまう制度で、プロ野球でいう「戦力外通告」に近い。この制度により年間約60名が競輪界を去る。
毎年若い新人選手がデビューする競輪界で、ベテラン選手が生き残っていくことは簡単ではない。強制引退にならなくとも、オフシーズンがない競輪界で長く気力・体力を保つことは並大抵のことではないだろう。
2023年後期の審査では、先述した現役最年長レーサー森江信行氏(61歳8か月)が代謝となり、42年の現役生活を終えた。
引退には代謝による強制引退のほか、選手本人の意志で選手手帳を返納する自主的な引退があるが、ここでは2023年度に引退した選手の平均年齢と現役選手の平均年齢を比較してみたい。
項目 | 年齢 |
---|---|
現役選手平均 | 38.3歳 |
現役選手平均(男子) | 39.1歳 |
引退選手平均(男子) | 45歳 |
現役選手平均(女子) | 28.6歳 |
引退選手平均(女子) | 34.3歳 |
現役選手と引退選手の年齢は男女ともにプラス6歳程度と、思いのほか大きく離れていない。これは幅広い年齢層の選手が現役で走っているということを示している。ちなみに2月22日時点での最年少選手はガールズの谷元音羽(19歳)である。
なお2月22日時点で、2023年度に選手登録消除となったのは78名で、そのうち60名が代謝による引退だ。
期 | 平均年齢 |
---|---|
2023年前期 | 男子:48.6歳 女子:34.0歳 |
2023年後期 | 男子:48.6歳 女子:35.3歳 |
※期末まで出走し、翌月末に「あっせん保留」となったものを「代謝」とする
女子の引退選手は全部で7名(うち6名が代謝)で、自主的に引退したのは矢野光世さんのみ。代謝となった選手の中には当時21歳の宮本杏夏さんと50歳の門脇真由美さんが含まれている。ガールズは代謝となった3名全員がデビューからわずか1年半だったこともあり、男子のように「年齢を重ねると成績が落ちてくる」という図式には必ずしも当てはまらない印象だ。
一方で男子選手は12名が自主的に引退した。故郷の村長選に当選し、兼業ができないことから引退した牛山貴広氏(42歳)や、S級最年長優勝記録保持者だった西川親幸氏(57歳)、シンガーソングライターとしての顔を持つ異色レーサーだった仲山桂氏(53歳)などだ。
全引退選手と代謝選手の平均年齢に大きな開きはない。他競技の選手寿命の短さからもわかるように、プロの世界は志半ばで道を断たれることがほとんど。自ら引退の時を選ぶということは一部の限られたアスリートにしかできない。
11月に自主引退した佐藤佑一氏(40歳)がラストラン後に話したように「やり尽くした」思いで身を引けることは、スポーツを生業にする者にとって幸せなことなのかもしれない。
競輪選手は主に獲得賞金で生計を立てる。2023年の全体の平均取得賞金は1407万9345円で、この金額は過去10年で最も高かった。賞金王の松浦悠士は2億5000万円を稼ぎ、上位レーサーであるS級選手の平均取得額は2273万9110円。命をかけ、賭け事の対象となる厳しい職業だが、「もう一度夢を追いたい」という人にとって夢のある世界であることは間違いないだろう。