2025/09/15 (月) 06:00 47
KEIRINグランプリ二度制覇!“ヤマコウ”の愛称で知られる山口幸二さんの予想コラム。元トップレーサーならではの鋭い読みは必見です。
福井共同通信社杯競輪決勝メンバーが決まりました。先日の函館オールスター競輪を優勝して凱旋レースとなった寺崎浩平や、全冠制覇(グランプリ含む)の脇本雄太が注目されて、近畿勢が有利に進めると思いましたが、決勝は5車並ぶと言うウルトラCの並びとなりました。
メンバー、ライン構成は以下の通りです。
③寺崎浩平(福井・117期)ー①古性優作(大阪・100期)ー⑨南修二(大阪・88期)ー④三谷将太(奈良・92期)ー⑥小森貴大(福井・111期)
②嘉永泰斗(熊本・113期)
⑤太田海也(岡山・121期)
⑦深谷知広(静岡・96期)
⑧野田源一(福岡・81期)
近畿が5人並ぶことになりました。「同県の小森に寺崎の番手を回らせて、古性ー南ー三谷の別線でいいんじゃないの?」など、賛否両論あると思います。近畿の並びが決まるまで時間がかかりました。時間がかかるということは意見の調整がまとまらなかったということですね。決勝のメンバーが出揃って30分くらい経ってから神妙な顔で古性が現れました。そこで「前で走る選択肢もあったが後ろの意向も考えてまとまることになりました」と経緯を話します。古性が大将なので難しい舵取りも彼に一任されます。その中で「難しいな…」を連発し、小森の勝機も遠くなる決断は、どれが正解か分からない苦渋のものだったと思います。
今、近畿の自力選手の中心は脇本と寺崎です。そこを回るまでにみんながどれだけ勝負してきたのか、「同県で回れるならば強い選手の近くに引っ越せば回れる」という「同県」の発想を、近畿地区は「競輪は格で並ぶ」の原点に立ち返ったものだと言えます。私が現役の時から近畿地区の選手は「同県や点数が上でも認められない選手は前を回したくない」と競り合う選手がたくさんいました。いや、全国にもそんな選手はたくさんいました。それがまだ色濃く残っているのが近畿地区だと言えます。
今や寺崎(あるいは脇本)の番手が一番優勝の可能性が高く、まだタイトルを獲っていない南や三谷には受け入れ難い並びなのだと思います。小森にとって酷な並びとなりましたが、強い選手の後ろを回るということは簡単ではないと気付いたことでしょう。近畿の並びを受け入れて、「それでも番手を回りたいから競ります」でもいいし、「地元なので太田海也の番手で優勝を狙います」でもいい。勝つために苦しい練習をしているのだから、自分の主張ははっきりアピールした方がいい。小森に必要なのは追込み(マーク)選手としての勝負。それがないと前を回ることは難しい。しかし、それを貫くと認める人が必ず出てきます。
私も5番手を回ったことがあって、「何のために苦しい練習をしているのか」と悔しい思いをしたこともありました。その経験が「競輪は位置が大切」と思うきっかけになったし、そのために何をすべきかを考え始めました。かつて福井GIIIで脇本の後ろを巡って、野原雅也(福井・103期)と井原克彦(福井・91期)が葛藤したように、小森も一皮剥けるいい機会だと思います。「魚を与えるのではなく釣り方を覚えろ」の決断が古性をそうさせたのでしょう。
近畿が5車並んで、後の選手が全員単騎ならば古性の優勝は限りなく近いでしょうね。ヨコもしっかりしている選手が並べば隙は生まれないと思います。前受け突っ張りでも、後ろから攻めても古性と勝負する選手はいないと思います。
展開図は以下の通りです。
H.③①⑨④⑥ ② ⑤ ⑦ ⑧
←⑦
←⑤ ②
B.③①⑨④⑥ ⑧
寺崎が誰にも邪魔させることなく先行できれば、⑤太田や②嘉永、⑦深谷がまくるのは難しいでしょうね。
・3=1ー9
・1ー9ー3
近畿が有利に運ぶことができますが、少しでも面白いレースになることを期待しています。
山口幸二
Yamaguchi Kouji
岐阜県大垣市出身。日本競輪学校62期卒業の元競輪選手。1988年9月に大垣競輪場でデビュー、初勝利。1998年のオールスター競輪で完全優勝、同年のKEIRINグランプリ'98覇者となる。2008年には選手会岐阜支部の支部長に就任し、公務をこなしながらレースに励む。2011年、KEIRINグランプリ2011に出場。大会最年長の43歳で、13年ぶり2度目のグランプリ制覇を果たし、賞金王も獲得した。2012年12月に選手を引退、現在は競輪解説者としてレース解説、コラム執筆など幅広く活動する。父・山口啓は元競輪選手であり、弟の山口富生(68期)、息子の山口聖矢(115期)・山口拳矢(117期)は現役で活躍中。