年に一度、東西の誇りをかけた激闘が火ぶたを切るーー。
「高松宮記念杯競輪(通称:宮記念杯)」は、6つあるG1レースの中で唯一、東西対抗という構図を持つ特別な一戦。毎年6月に開催され、その頂点に立った者には、年末12月30日の「KEIRINグランプリ2025」出場権という栄光が与えられます。今年もその座を巡って、トップ選手たちが熾烈な戦いを繰り広げます。
本記事では、過去の売上推移や高配当ランキング、S班選手の最新成績データをもとに、2025年大会の見どころを徹底解説。数字の裏に隠されたドラマとともに、注目ポイントを深掘りしていきます。
今年2月の「全日本選抜競輪(G1)」では脇本雄太が実力を見せつけ優勝。そして5月の「日本選手権競輪(G1)」では、吉田拓矢が悲願の初制覇を果たし、すでに2名がグランプリの切符を手中に収めました。残された“7席”を巡り、火花散る戦いがいよいよ始まりますーー。
優勝賞金は堂々の5,000万円。2着でも2,514万円、3着でも1,643万円と、3着でもG3の3倍以上の高額賞金が懸かるこの舞台。賞金ランキングの争いという意味でも、選手にとっては絶対に取りこぼせない一戦です。
今回は、S級S班の精鋭たちが過去にどんな走りを見せてきたのかを振り返りながら、今年の戦いを多角的に展望していきます。
優勝 | 2着 | 3着 | 着外 | |
---|---|---|---|---|
古性優作 | 2 | 0 | 1 | 0 |
脇本雄太 | 1 | 2 | 0 | 5 |
郡司浩平 | 0 | 1 | 0 | 3 |
眞杉匠 | 0 | 0 | 0 | 0 |
新山響平 | 0 | 0 | 0 | 2 |
犬伏湧也 | 0 | 0 | 0 | 0 |
岩本俊介 | 0 | 0 | 0 | 0 |
清水裕友 | 0 | 0 | 0 | 2 |
優勝 | 2着 | 3着 | 着外 | |
---|---|---|---|---|
松浦悠士 | 0 | 0 | 1 | 2 |
深谷知広 | 1 | 0 | 0 | 1 |
山口拳矢 | 0 | 0 | 0 | 0 |
佐藤慎太郎 | 0 | 2 | 3 | 5 |
高松宮記念杯競輪は、G1レースの中でも唯一、東西対抗戦という特別な形式で行われる大会です。その分、選手同士の連係や相性、戦術面の巧拙が結果を大きく左右します。
そんな中で、最も高い実績を誇るのが古性優作です。これまでに【優勝2回・3着1回】という抜群の安定感を見せており、この舞台との相性の良さは際立っています。今年も優勝候補の筆頭といえる存在です。次に注目されるのが脇本雄太。こちらも【優勝1回・2着2回】と好成績を残しており、特にここ一番の爆発力には定評があります。ただし、決勝での着外も5回と波のある一面もあるため、仕上がり次第では展開に左右される可能性もありそうです。郡司浩平は【2着1回】と決勝進出は果たしているものの、まだタイトルには手が届いていません。東日本のエース格として、今年こそは結果を残したいところです。
一方で、眞杉匠、犬伏湧也、岩本俊介は、これまで高松宮記念杯で決勝進出がなく、今大会でのブレイクが期待されます。特に眞杉はG1タイトルホルダーでもあり、この大舞台での初躍進が待たれます。また、清水裕友と新山響平も過去に決勝進出の経験はありますが、いずれも着外に終わっています。今大会で存在感を示せるかどうかが、今後のS班定着にも関わってくる重要な一戦となりそうです。
さらに、2025年にS班から陥落した選手たちの実績にも注目です。深谷知広は【優勝1回・着外1回】と、少ないチャンスで結果を残しており、一発の怖さを今なお持ち合わせています。佐藤慎太郎は【2着2回・3着3回】と、なんと5回も決勝で確定版に名を連ねており、勝ち切れないものの安定感はS班級と言えるでしょう。一方で、7月S班昇格が決まった松浦悠士は【3着1回】、山口拳矢は決勝進出経験すらなく、やや相性に苦しんでいる印象です。
これらの戦績から見えてくるのは、やはり古性・脇本を中心とした近畿勢の強さです。そこに郡司や佐藤、深谷といった経験豊富な実力者たちがどう食い込んでくるのか。そして、眞杉や犬伏といった新勢力が勢力図を塗り替えるのかーー。今年の高松宮記念杯は、世代交代の兆しとベテランの意地がぶつかり合う、見応えのある一戦になりそうです。
1950年大津で開催し、今年で76回目を迎える高松宮記念杯競輪。長い歴史の中で、車券売上はどのように推移してきたのか? そして、最も熱狂に包まれた年はいつだったのか? 過去のデータをひも解きながら、その軌跡を振り返ります!
回次 | 優勝者 | 売上 (円) |
---|---|---|
1 | 山本清治 | 41,381,400 |
2 | 山本清治 | 76,158,000 |
3 | 高倉登 | 69,704,200 |
4 | 松村憲 | 69,875,100 |
5 | 中井光雄 | 69,922,200 |
6 | 中井光雄 | 119,135,100 |
7 | 中井光雄 | 114,115,600 |
8 | 西村亀 | 138,912,500 |
9 | 加藤晶 | 153,304,900 |
10 | 山本清治 | 165,074,800 |
11 | 石田雄彦 | 171,376,100 |
12 | 笹田伸二 | 232,670,200 |
13 | 笹田伸二 | 262,739,000 |
14 | 高原永伍 | 335,173,000 |
15 | 戸上守 | 478,021,900 |
16 | 白鳥伸雄 | 582,623,900 |
17 | 宮地雄資 | 774,365,400 |
18 | 平間誠記 | 887,640,700 |
19 | 吉川多喜夫 | 1,122,503,400 |
20 | 高原永伍 | 1,365,709,400 |
21 | 田中博 | 1,291,814,300 |
22 | 稲村雅士 | 1,867,182,200 |
23 | 福島正幸 | 2,181,428,400 |
24 | 太田義夫 | 2,777,046,500 |
25 | 荒木実 | 3,770,363,700 |
26 | 藤巻清志 | 3,871,969,100 |
27 | 荒木実 | 4,767,053,100 |
28 | 谷津田陽一 | 5,143,396,500 |
29 | 阿部良二 | 6,274,253,100 |
30 | 荒川秀之助 | 7,350,185,000 |
31 | 藤巻昇 | 8,179,980,600 |
32 | 久保千代志 | 8,124,905,000 |
33 | 伊藤豊明 | 7,755,993,000 |
34 | 尾崎雅彦 | 8,049,430,300 |
35 | 佐々木昭彦 | 7,986,873,700 |
36 | 滝澤正光 | 9,164,825,400 |
37 | 滝澤正光 | 11,872,741,300 |
38 | 滝澤正光 | 13,567,153,500 |
39 | 井上茂徳 | 17,301,965,800 |
40 | 滝澤正光 | 21,512,717,500 |
41 | 鈴木誠 | 23,547,687,600 |
42 | 佐々木昭彦 | 26,206,726,800 |
43 | 滝澤正光 | 26,401,005,300 |
44 | 井上茂徳 | 26,645,300,500 |
45 | 神山雄一郎 | 29,250,404,000 |
46 | 神山雄一郎 | 32,334,780,900 |
47 | 吉岡稔真 | 32,387,761,800 |
48 | 吉岡稔真 | 34,324,611,600 |
49 | 高木隆弘 | 35,156,474,100 |
50 | 太田真一 | 28,511,350,700 |
51 | 金子真也 | 27,763,873,600 |
52 | 高木隆弘 | 25,785,516,000 |
53 | 山口富生 | 21,059,643,300 |
54 | 小嶋敬二 | 17,460,823,800 |
55 | 松本整 | 17,040,177,400 |
56 | 村本大輔 | 15,082,351,100 |
57 | 山崎芳仁 | 14,962,752,100 |
58 | 小嶋敬二 | 14,921,111,000 |
59 | 渡邉晴智 | 13,728,197,200 |
60 | 平原康多 | 12,370,644,100 |
61 | 平原康多 | 10,746,051,900 |
62 | 深谷知広 | 9,790,176,500 |
63 | 武田豊樹 | 10,344,361,600 |
64 | 成田和也 | 10,302,504,400 |
65 | 稲川翔 | 9,242,544,500 |
66 | 武田豊樹 | 9,911,065,900 |
67 | 新田祐大 | 9,205,375,700 |
68 | 新田祐大 | 8,963,332,900 |
69 | 三谷竜生 | 8,509,916,300 |
70 | 中川誠一郎 | 8,491,669,800 |
71 | 脇本雄太 | 7,059,050,100 |
72 | 宿口陽一 | 8,100,180,700 |
73 | 古性優作 | 9,099,329,800 |
74 | 古性優作 | 11,655,738,900 |
75 | 北井佑季 | 12,712,523,100 |
高松宮記念杯競輪は、1950年の第1回大会からスタートし、長い歴史の中で売上面でも競輪界をけん引してきました。初回の売上は約4,100万円と控えめでしたが、その後は開催規模や注目度の高まりとともに年々伸び、1980年代後半から90年代にかけては“黄金期”とも呼べる売上記録を打ち立てました。
特に注目すべきは、第45回(1994年)~第49回(1998年)にかけての5年間です。毎年300億円台の売上を記録し、第49回大会では過去最高となる351億円超を達成しました。この頃は、神山雄一郎や吉岡稔真といったスター選手の活躍も相まって、競輪人気が社会現象的な盛り上がりを見せていた時期でもあります。
しかし2000年代以降は、社会の娯楽の多様化や景気の影響、そしてインターネット投票の普及前夜という背景もあり、売上は徐々に減少傾向に入りました。2010年代には100億円を切る年も珍しくなくなり、かつての勢いに陰りが見え始めます。
ところが、近年は状況が少しずつ変わってきています。2021年(第72回)以降、売上は再び上昇傾向に転じており、第73回は90億円台、第74回は116億円、第75回(2024年)は127億円超と、直近では3年連続で伸びを記録しています。
これは、競輪界全体の若返りや注目選手の台頭、インターネット投票環境の整備、さらにはKEIRINグランプリ出場権をかけたレースとしての注目度の高まりが影響していると考えられます。特に古性優作や脇本雄太といったファンの多い実力者が好成績を残している近年は、売上にも好影響を与えていると言えそうです。
2025年の第76回大会は、前年を上回る売上を記録できるかどうかが一つの焦点となります。新旧スターが揃い、世代交代の予感も漂うなかで、レースそのものの質とドラマ性が問われる重要な一戦となりそうです。
高松宮記念杯競輪は、実力者同士がぶつかり合うG1レースでありながら、思わぬ高配当が飛び出す“波乱の舞台”としても知られています。実際に過去の配当ランキングをひも解くと、10万円超えのビッグ配当や、近年の岸和田開催での番狂わせが目立ち、車券ファンの記憶に残るレースが数多く生まれています。
ここでは、高松宮記念杯競輪で記録された歴代の3連単高配当トップ10を紹介しつつ、その傾向や背景を探ります。
順位 | 年 | 3連単 配当金額 | 開催場 |
---|---|---|---|
10 | 2004 | 26,060 | 大津びわこ |
9 | 2008 | 34,200 | 大津びわこ |
8 | 2023 | 37,340 | 岸和田 |
7 | 2019 | 44,490 | 岸和田 |
6 | 2012 | 51,970 | 函館 |
5 | 2009 | 53,770 | 大津びわこ |
4 | 2021 | 58,660 | 岸和田 |
3 | 2022 | 91,950 | 岸和田 |
2 | 2016 | 96,850 | 名古屋 |
1 | 2005 | 109,040 | 大津びわこ |
高松宮記念杯競輪では、年によっては驚くような高配当が飛び出すことがあります。歴代の3連単配当ランキングを見ると、波乱のドラマがどのような舞台で起きてきたのかが見えてきます。
最も高い配当が記録されたのは、2005年・大津びわこ競輪場での10万9,040円。そのほかにも、2004年・2005年・2008年・2009年と、大津びわこ開催がTOP10内に4回もランクインしており、「荒れる宮記念杯」の代名詞的存在となっています。大津びわこのバンク特性や気候条件、レース展開が予測しづらい要因になっていたのかもしれません。
一方、近年では岸和田開催が高配当の舞台となっている点も見逃せません。2021年(5万8,660円)、2022年(9万1,950円)、2023年(3万7,340円)と、ここ3年間で3回もランキング入りしており、番狂わせが起きやすいバンクとして注目されています。また、名古屋(2016年・9万6,850円)や函館(2012年・5万1,970円)も高額配当を記録しており、開催地ごとのバンク特性や風向き、ラインの組み方が結果に大きく影響していることがうかがえます。
これらの傾向から考えると、高松宮記念杯競輪では「鉄板」だけでは語れないレース展開が多く、高配当狙いのファンにとっても楽しみなG1であることがわかります。今年の開催地である岸和田でも、再びビッグな配当が飛び出す可能性がありそうです。
高松宮記念杯競輪とは、1950年に「高松宮・同妃賜杯競輪」としてスタートした伝統あるGⅠレースで、当初は大津びわこ競輪場で開催されていました。1963年に特別競輪(G1)として正式認定され、1998年からは現在の「高松宮記念杯」の名称に改称。2011年の大津開催を最後に持ち場を移しました。1973年からは東西対抗戦の形式が導入され、時代ごとに番組構成が変化しながらも、その特色は継承されています。
2023年からはガールズG1「パールカップ」が同時開催され、再び6日制に。S級トップ選手の白熱の対戦がより見ごたえある構成で展開されています。
「高松宮記念杯競輪」2025年6月17日(火)~6月22日(日)岸和田競輪の出走表、競輪予想、結果など最新情報を特集。
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