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【松浦悠士の勝負テーマ】自分にないものを持っている選手との戦いに燃える

2021/06/16 (水) 10:00

前回のコラム公開後、間髪入れずに各地のレースへ出場し続けている松浦悠士選手。ダービー王の称号を手に入れてからすぐ、函館記念『五稜郭杯争奪戦(GIII)』、地元広島『全プロ記念競輪(FII)』、別府記念『オランダ王国友好杯』に参戦。今回も松浦選手によるレースの振り返りをお届けします。また、編集部に寄せられた読者質問にも答えていただきました!

 みなさんこんにちは、松浦悠士です。今回は函館記念と地元広島で行われた全プロ記念、別府記念について振り返っていきます。また、読者の方からいただいた質問にも答えていきたいと思います!

ダービー直後の函館記念で野口さんと対戦

 函館記念の結果は優勝することができ、3場所連続で優勝することができました。函館は、シリーズが開催する前から千葉の野口さんとの戦いを楽しみにしていました。野口さんは4月に西武園記念で完全優勝を決めていて、状態の良さが際立っていましたし、脚力が上がっている印象を受けていたからです。そして、準決勝に野口さんとの対戦が実現しました。

 僕は強い選手の中でも「自分に持っていないもの」を持っている選手との対戦に特別燃えます(笑)。僕は野口さんみたいな先行勝負はなかなかできないと思っていますし、実践で野口さんの戦法を体感したい、その上で自分の戦法で倒したいということを意識していました。自分のテーマを持って挑んだ結果ですし、清々しい戦いができましたが、内容も勝負も負けてしまったので、悔しさ満点でした。

準決勝を終えてレースを振り返る松浦選手と野口裕史選手(撮影:島尻譲)

 決勝はレース前から自分で先行するつもりで臨んだことが功を奏しました。自分で行こうという心づもりでしたし、落ち着いて周りを見ることもできていました。古性君の動きから仕掛ける気配があったので、慌てずに対応して4番手の位置でレースを進めることができたのが大きかったです。ダービーが終わり、ほど良く肩の力が抜けていたことも、良い結果に繋がったように思います。

函館記念『五稜郭争奪戦』で3場所連続の優勝を果たした松浦選手(撮影:島尻譲)

地元広島開催! 全プロ記念競輪で優勝

 地元広島でのシリーズは特別な思い入れがあります。結果は優勝することができて4場所連続の優勝報告となり嬉しい限りです。でも「連続優勝」ということに対する意識はあまりないですし、おごりもありません。一走一走の積み重ねが「たまたま」連続したという感じです。満足できないポイントや課題もあるので、これからもやることはまだまだあります。

ゴール後、小倉竜二選手が松浦選手の右手を掲げ勝利を称えた(撮影:島尻譲)

 初日は小倉さんと慎太郎さんに先着されての3着でした。自分が「ここだ!」というタイミングで行きましたが、末が甘くなり押し切ることができませんでした。このようなレースでしっかりと押し切れる脚力が必要だと振り返っています。

 選手によって様々な考え方がありますが、僕は自分の勝利だけを見る競輪はしたくありません。番手の選手が強い選手だからといって仕掛けを遅くしたり、自分の力量から余力を計算して捲り追い込みにしたり、という戦法は取りたくない。そのレースの行くべきベストタイミングで仕掛けること、そして差されずに押し切ることを目指しています。

 この初日のレースもしっかりと自分の仕掛けをすることができて押し切れなかったのですから、自分が弱いだけ。もっともっと強くならないといけないぞ、という想いでした。

地元広島で4場所連続となる優勝を決めた松浦選手(撮影:島尻譲)

別府記念の仕掛けは2つの意志によるもの

 別府記念は決勝9着で終了しました。決勝レースの心境と仕掛けについて振り返ってみようと思います。決勝戦では2つの意志が働いて、あの仕掛けになりました。3日目の準決勝で拳矢に踏み負けしたことはレースを終えてからもずっと引っかかっており、「このまま負けて終われるか」という気持ちがありました。僕は負けっぱなしというのは絶対に納得できないので、もう一度レースで力勝負をしたいと考えていました。これは僕の基本的な性格によるものです(笑)。

負けて終われないという気持ちで臨んだ決勝(1番車・白が松浦選手 撮影:島尻譲)

 それと、純粋にレース運びを考えてみても、優勝を狙うのなら浩平は後方に置いておきたいというのがありましたし、あのタイミングで行くしかないという判断でした。拳矢を叩き切って浩平を後方に置いたまま主導権を取るという組み立てです。

 最終ホームで叩き切れる感触もあったのですが…。細かく振り返ると、他にも誤算はありましたが、拳矢との力勝負を制することができなかった時点で、かなり厳しい展開のレースになってしまいました…。改めて自分の課題が見えたシリーズになりましたし、もっと強くなるために何が必要なのかを見つめ直したいと思います。それにしても悔しかった(笑)。

決勝は再び山口拳矢選手との力勝負になった(撮影:島尻譲)

今月から読者の方の質問に答えます

 今回のコラムからnetkeirin編集部に届いている読者の方の質問に答えたいと思います。質問を投稿してくれた方、ありがとうございます!

今回は4問の読者質問に真っ向勝負!(撮影:島尻譲)

ーー『西の松浦、東の郡司』というような同い年である二人のライバル関係に興味があります。松浦選手がどういう意識を郡司選手に向けているのか知りたいです

 浩平は同い年ですし、僕側からはめちゃめちゃライバル視しています(笑)。僕は「脚力が負けている」と思っているので、まず「同じレベルの脚力まで持っていきたい」というのがあって、その点で目標にしている存在です。

 でも彼からすると僕個人をライバル視しているかどうかはわからないですね。もう少し全員に意識を向けて広く見ているような印象があります。ただ、現時点で負けている、劣っていると思う部分を感じていても、レースになれば勝つことだけにこだわっています。位置取りや踏み込むタイミング、展開の中でできることを考えて作戦を組み立てていますし、自分が勝てる引き出しを用意して戦わないと、という感じですね。

ーーレースに出ていないときは何を考えていますか?やっぱり競輪のことが頭から離れないものでしょうか?それともオフはオフという感じですか?

 競輪のことを四六時中考えています。家族で過ごしている時も気になっていますし、同県の選手が出走していたり、自分が強いと思っている選手が出走しているとレースをチェックしてしまいます。あと、気を張っていると競輪以外のところからも競輪のヒントになることを見つけることもあるんです。そういうのもあってオフだから完全に頭から離れることというのはないですね。

 以前、曲がり角を歩いていてフラッとよろけてしまったんです。その時にすぐ横に壁があって、瞬時に肩からぶつけて体勢を整えました(笑)。壁を対戦相手と見立てていて、競りの要領で受け身を取る感じです(笑)。他にも最近はあまりやっていないですが、ゴルフの打ちっぱなしに行っていた頃があって、その時は打つ前に自転車に乗るフォームを意識して体幹・力の入れ方を意識して打ったりもしていました。日常生活の中にも競輪の実践に使えるような練習材料を探していますね。

ーーレース前にどれくらい作戦のパターンを考えていますか?

 これは対戦相手や対戦相手の戦法、組んでいるラインによって大きく変わりますので、一概には言えません。それに自分が大切にしている戦略にも触れる部分ですので、明言できない部分もあります(笑)。でも、例えば三分戦で自分が3番車というパターンで説明すると、「前から」「中団から」「後方から」と最初に3種類の作戦を立てなくてはなりません。

 そこから分岐していって「前受けするとして、どっちのラインがくるのか」とか「中団に位置したとき、どちらのラインが前にいるのか」などをすべて想定しておく必要があるので、最低でも10パターンくらいの作戦を考えています。グレードレースはレベルが上がるほど「他のラインの仕掛けのタイミングが早いか遅いか」という要素も考えなくてはならないので、さらに細かく念入りに分岐させて作戦を組み立てています。

 いざレースが始まると思い描いていた通りにならないことはざらにありますし、状況を見て感性で仕掛けなくてはいけないこともあります。それでも「相手がこのカードを切ってきたときに自分はこのカードを切る」という戦略を練っておくことはとても大切なので、手札の数は多くしていきたいですね。

ーースイーツ王子の松浦選手にとって一番美味しかったスイーツは?

 いろいろ美味しいスイーツを食べていますが、ダービーの後に食べたマンダリンオリエンタル東京の『KUMO』は驚くほど絶品でした。食べたのはマンゴー味だったのですが、他の種類も食べてみたいなと思っています(笑)。また頑張って自分へのご褒美にと考えていますよ。

ダービーの帰りに買ったマンダリンオリエンタル東京の『KUMO』(写真: 松浦悠士Twitterより)

前半戦のレースに関する質問を大募集します!

 僕は今から前半最後となるGI戦『高松宮記念杯』にいってきます。この宮杯で僕の2021年の前半戦は終了し、後半戦へ折り返していくことになります。そこで読者の皆さんに前半戦(1月〜6月)のレースで『気になったこと』や『あのレースの心境について』、『あの仕掛けについて』などなど質問を大募集します!

 このコラムでは自分のレースを解説することで楽しんでもらったり、予想の参考にしてもらったりと考えているのですが、すべて自分のチョイスでポイントをピックアップしているので、来月のコラムからは読者の皆さんの質問にもドシドシ答えたいと思っています。

 このページの下部に「質問フォームへ」というボタンがあるので、そこからレースに関する質問をお寄せください! 戦略が物をいう競技ですので企業秘密はありますが、できる限り答えていきたいと思います。読者の方とコミュニケーションを取りながら書いてみたいのでお気軽にどうぞ。 それでは前半最後のGIレース頑張ってきますので、応援よろしくお願いいたします!

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松浦悠士の“真っ向勝負!”

松浦悠士

Matuura Yuji

広島県広島市出身。日本競輪学校第98期卒。2010年7月熊本競輪場でレースデビュー。2016年の日本選手権競輪でGⅠ初出場、2019年の全日本選抜競輪では初のGⅠ決勝進出を果たす。2019年の競輪祭でGⅠ初優勝を飾り、同年KEIRINグランプリにも出場。2020年のオールスター競輪では脇本雄太との死闘を制し、優勝。自身2つ目のGⅠタイトルを獲得した。ファンの間ではスイーツ好き男子と知られており、SNSでは美味しいスイーツの数々を紹介している。

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