2022/07/27(水) 13:00 0 6
現役時代、ロサンゼルス五輪で自転車トラック競技日本人初となるメダルを獲得し、競輪ではKEIRINグランプリやオールスター競輪といったビッグレースを制したレジェンド・坂本勉氏。“競輪”と“ケイリン”を知り尽くした坂本氏が、新ケイリン「PIST6」のレースを振り返ります。(月2回・不定期連載)
netkeirinをご覧のみなさん、坂本勉です。今回は7月22日・23日に行われた「PIST6 Championship 2022-23」セカンドクォーターラウンド7の決勝レースを回顧していきたいと思います。
【セカンドクォーター ラウンド7 決勝レース動画】
前回のコラムでも書かせてもらいましたが、先日、PIST6初参戦となるセカンドクォーターラウンド6を優勝した永澤剛と八戸自転車競技場で会う機会がありました。
優勝を茶化してやろうと思っていたのですが、永澤の方から「練習こそ重ねてきましたがPIST6は初参戦でドキドキしながらレースに臨んでいただけに優勝はビックリしました」と話しかけてきました(笑)。
またPIST6初参戦に関しては期するところもあったようで「出場メンバーの中で自分は格上だっただけに『優勝しなければいけない』というプレッシャーもありました」と前回のラウンドを振り返っていました。
永澤もそうですが、一度PIST6に出場した選手たちのほとんどが「また準備をした上でラウンドに臨みたい」と話します。これは本来の競輪では使用していない『重い倍数のギア』での練習を重ねながらレースに臨んでいくことで、良い意味で脚力強化のトレーニングにもなっているのでしょう。
PIST6で活躍した選手が、競輪でも好成績を残しているのは、このあたりにも理由があるのではと思います。
その永澤と同じように、セカンドクォーターラウンド7の優勝者・福永大智も今回がPIST6初参戦でした。その福永と同じように予選から連勝を重ねていき、決勝では1番人気となっていた高久保雄介も初出場です。
結果は残り2周から仕掛けた福永が無傷の4連勝で完全優勝を果たすも、高久保はスタート位置のまま6着に敗退。両者の結果を分けたのはどんな理由があったのか? このあたりに触れながら決勝を振り返ってみたいと思います。
まずスタートの並びですが、インコースから⑤須永優太③松山桂輔②鈴木陸来⑥佐野梅一①福永大智④高久保雄介となりました。
タイムトライアル1位となっていたのは10秒279の福永です。ただ3位の鈴木は10秒394、5位の松山も10秒509とそれほどタイム差が開いてなく、前回(セカンドクォーターラウンド6)と同様に、決勝はどの選手もチャンスがあると見ていました。
その中で自分が注目していたのが、スタート時に先頭となった須永です。予選からのレースでは先行も見せていましたし、捲り気味に動きながらいい位置を取っていました。
しかも決勝は1番手ですから、後方から高久保や鈴木が先行体制に入った時にはその後ろを取れるという絶好のポジションでした。その須永と同様にPIST6を走り慣れている鈴木も展開次第では優勝も狙えると思っていました。それだけに福永の思い切った仕掛けには驚きましたし、観ている人も走っていた選手も驚いたことでしょう。
残り3周の「PEDAL ON」となってからも隊列は崩れず、残り2周となった時に5番手のポジションから動き出していったのが福永です。
福永は予選から準決勝まで全て「捲り」で勝ち上がっており、競輪でもカマシを得意としています。そのイメージがあるだけに「決勝でも脚を溜めた上で一気に仕掛けていくのでは」と思っていました。
しかも福永はPIST6初出場でもあり、250バンクを走り慣れていなかったからこそ、確実に決勝まで進めるように捲りを選択していたはずです。ただ優勝後のインタビューでは「決勝では積極的なレースをしたかった」とも話しています。
きっと福永は過去のPIST6のレースも見ていたのでしょう。実力者の揃う決勝では早めに踏み出さなければ勝てないということにも理解していたのかもしれません。
こうなると「福永は捲りだ」と決め込んでいた他の5選手には大きな誤算が生じます。中でも最も割を食う形となったのは高久保でした。
予選、準決勝と積極的なレースを見せていた高久保ですが、この決勝は福永の出方を見ていたはず。予選では残り2周から先頭に立ちましたが、実力者の揃う決勝では「できるだけ仕掛けのタイミングを遅くしたい」とも考えていたのではないのでしょうか。
福永が動き出した時、そこに鈴木が絡んでいく展開も想定していたと思います。ただ、福永は須永の前に入るどころか、その差をみるみるうちに広げていきます。
1番手から優勝を狙うはずだった須永は、追走に脚を使ってしまいましたね。鈴木は残り1周で須永を交わして福永を追いかけていくも、その差を縮めるのが精一杯でした。
この結果というか福永のレースは全く想像していませんでした。PIST6をスタートからずっと見ていますが、正直度肝を抜かれた気持ちです(笑)。
福永が予選から先行を見せていたのなら、まだ話は分かります。決勝に進んでくる大概の選手が、それまでの3走で相手の力量を見定めながら、普段の競輪ではやってないような先行を試した上で、決勝でも早めに仕掛けてくることはよくあるからです。
ただ、福永は決勝になってはじめて先行してくるという、まさに「横綱相撲」というか、スケールの大きなレースを見せてくれました。しかも初参戦であり、タイムトライアル1位かつ、上位人気のプレッシャー付き。そんな中でファンの期待に応えたのは大変に評価されるべきでしょう。
一方で6着に敗れた高久保はそれまでのレースで積極的なレースを見せていながらも、決勝だけは『優勝を取りに行くレース』をしまったのが敗因。福永の積極的な仕掛けも誤算だったと思います。それは須永や鈴木も一緒だと思いますけどね。
優勝した福永は改めてPIST6が自分に合った場所だと再確認できたはずですし、今後も参戦してくれば優勝の常連ともなるでしょう。その際は捲りに加えて、どこかで積極的に仕掛けてくるはずですし、そのレースぶりからは目が離せません。
もちろんこれは完全優勝を果たした福永です。人気に応えるレースで勝ち上がりを決めただけでなく、決勝のレース内容は圧巻の一言です。見事な勝利だと思います。ただ敢闘賞をあげたいのは須永ですね。今回は福永の思い切りの良さにやられる結果になりましたが、展開次第では優勝も狙える位置だったと思えるだけに、次のラウンドでの奮起を期待しています。
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●坂本勉(さかもと・つとむ)
1984年、ロサンゼルス五輪に出場し銅メダル獲得。日本の自転車競技史に初めてメダルをもたらし、“ロサンゼルスの超特急”の異名を持つ。2011年に競輪選手を引退したのち、自転車競技日本代表コーチに就任し、2014年にはヘッドコーチとして指導にあたる。また2021年東京五輪の男子ケイリン種目ではペーサーも務めた。自転車トラック競技の歴史を切り開いた第一人者であり、実績・キャリアともに唯一無二の存在。また、競輪選手としても華麗なる実績を誇り、1990年にKEIRINグランプリ、1989年と1991年にはオールスター競輪の覇者となった。現在は競輪、自転車競技、PIST6と多方面で解説者として活躍中。展開予想と買い目指南は非常にわかりやすく、初心者から玄人まで楽しめる丁寧な解説に定評がある。