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【坂本勉のPIST6徹底回顧】永澤剛の勝因は“競輪”にあり! 追込選手の経験値と磨いたタテ脚で魅せた“格”の違い /レジェンドが見た疾風迅雷 #11

2022/07/20(水) 13:00 0 4

現役時代、ロサンゼルス五輪で自転車トラック競技日本人初となるメダルを獲得し、競輪ではKEIRINグランプリオールスター競輪といったビッグレースを制したレジェンド・坂本勉氏。“競輪”と“ケイリン”を知り尽くした坂本氏が、新ケイリン「PIST6」のレースを振り返ります。(月2回・不定期連載)

 netkeirinをご覧のみなさん、坂本勉です。今回は7月14日・15日に行われた「PIST6 Championship 2022-23」セカンドクォーターラウンド6の決勝レースを回顧していきたいと思います。

【セカンドクォーター ラウンド6 決勝レース動画】


すべてのレースで1番人気だった永澤剛

 セカンドクォーターラウンド6の優勝者は今ラウンドが初出場の永澤剛でした。永澤は青森の所属であり、自分の住んでいる場所とほど近い「八戸自転車競技場」を練習地としています。

初出場で完全優勝を果たした永澤剛

 永澤がセカンドクォーターラウンド6に参加するのも知っていましたし、練習を見に行くと、PIST6で使うカーボンフレームの自転車のセッティングも入念に行っていました。永澤は競輪では追込選手ですが、開催前には自力の練習も取り入れていました。追込の戦法だけではPIST6を勝てないと思ってのことでしょう。

 永澤は普段から人一倍練習熱心な選手です。長くもがいている走りを見て、冗談半分ですが「この走りができるのなら、先行もできるぞ!」とハッパをかけたりもしましたね(笑)。ただ実際に、2次予選では先に先頭へ出た金成和幸を、残り2周で追い抜くと、そこから2周先行し、堂々の逃げ切り勝ちを決めています。

 今ラウンドの永澤は他の選手に比べて競輪の点数的にも格上の存在であり、どのレースでも人気の中心になっていました。本人も2次予選のようなレースができたことで、自信を持って次の日の準決勝、そして決勝に臨めたのではないかなと思います。

タイム的には混戦! どの選手にもチャンスがあった決勝

 それでは決勝を振り返っていきます。スタートの並びはインコースから①大西祐齋木翔多永澤剛内山雅貴山本健也横山尚則となりました。

 この6人で最もタイムトライアルの時計が良かったのは10秒332の大西です。ただ、2位の齋木、3位の内山、そして4位の永澤まで「0コンマ1秒以内」とそれほど差がありませんでした。加えて10秒1あるいは10秒2といった速いタイムを出すような選手たちの戦いではありませんでした。

 タイム的には混戦となっただけに、どの選手にもチャンスがあったと思います。それだけにスタートの位置取りや、道中の動きがかなり重要となってきます。

 そういった意味では3番手というスタート順も、積極的に先行していく齋木のすぐ後ろに位置していた永澤はベストポジションと言えました。齋木の仕掛けにさえ合わせていけば、追込選手の得意とする“番手でのレース”も見えてくるからです。

スタートの並びが3番手かつ齋木翔多(2番車・ブラック)の後ろでベストポジションだった永澤剛(4番車・ブルー)

横山と大西の前2人を後ろから追いかける展開

 ただ「PEDAL ON」のタイミングで動き出したのは6番手にいた横山でした。横山は位置的に「動かなかれば勝負にならない」と思っていたのでしょう。でも先頭を走っていた大西が突っ張り、横山は番手で脚を溜めるような形になりましたね。

 その時3番手だった齋木はわざと横山との車間を空けています。これは後ろの永澤の動きが気になっていたことや、前の2人を追い抜いていこうと考えた時、すぐ後ろに付けて横の動きも入れながら踏んでいくよりも、惰性を付けながら一気に交わしさりたいという狙いがあったと思います。

前2人(大西祐横山尚則)の後ろから、機会を伺う齋木翔多(2番車・ブラック)と永澤剛(4番車・ブルー)

 残り2周で齋木が前2人との差を詰めていった時に、その外に進路を向けたのが永澤でした。永澤は自分のタテ脚を2次予選で試していましたし「早めの先行で勝てる」と考えていたのでしょう。

 ただ、齋木もそれを分かっていましたね。永澤の前に入ると前を行く大西と並走。永澤も大西の後ろに入った横山と並ぶ形となったどころか、齋木と永澤の後ろには山本、大西と横山の後ろには内山が付けたことで、まるで競輪でいう「3車ライン」が2つできあがったような形で、最終周回を迎えていきます。

齋木翔多永澤剛が外から仕掛け、競輪での3車のラインが2つできたような形でラスト1周を迎えた

追込選手が“本領発揮”できる展開

 ただ、こうなると競輪の追込選手である永澤の本領が発揮されます。競輪で例えるならば、ラインの先行となった齋木を直線で交わせれば優勝が見えてくるからです。その通りの結果となり、内を行く大西を捲り切った齋木を、直線で交わし切った永澤が優勝。2着は齋木で、3着は山本と言う、まさに偶発的な“即席ライン”3人での決着となりました。

 永澤の勝因をズバリ言えば「格上だった」ことでしょうか。競輪でハイレベルなグレードレースに多数参戦している経験が活きていましたし、追込選手と言えどもタテ脚もしっかりと鋭い。そこに初出場を前に練習も重ねてきたわけですから、ある意味「順当な優勝」だったと言えると思います。

齋木翔多(2番車・ブラック)を直線で交わし切った永澤剛(4番車・ブルー)

 それは前回セカンドクォーターラウンド5を優勝した眞杉匠も一緒です。小松島記念(GIII)を優勝してからの参戦で話題を集めた眞杉ですが、選手としての実力だけでなく、スタートの位置にも恵まれたことで、危な気なく完全優勝を果たしました。

話題の選手だけでなく「若手自力型」選手たちの参戦を熱望している

 前回の眞杉や今回の永澤のような競輪で話題の選手が参戦してくればPIST6の注目度も高まってくると思いますが、それと同時に、私が参戦を熱望してしまうのは「若手自力型」の選手たちです。

 特に今ラウンドはそういった選手たちが参戦してこなかったからか、スタートの位置取りから目立った動きが無いまま「PEDAL ON」を迎えたり、ラスト2周で先頭に立っていた選手がそのまますんなり踏み出していくなど、レースの動きが遅くなっていました。

 決勝でも横山が大西を交わせなかった時に、後ろにいた内山が叩いて行ければ、まだ激しい攻防があるレースとなったはずです。通常の競輪とは違い、級班年齢問わずのPIST6は格上の選手たちに自分の力をぶつけていく絶好の機会になります。格上の選手たちもそれを真っ向勝負で受け止めるほかない環境ですし、そういったレースこそ面白味が詰まっているものです。

車券攻略のヒント! 実力拮抗しているレースではスタートの並び順を重視

 これまではPIST6の優勝経験者あるいは決勝の常連の選手たちが好成績を残してきました。今ラウンドは過去の優勝者の名前もなかったどころか、タイムトライアルの差もそれほどありませんでした。改めてPIST6のレースにおけるスタートの並び順や競輪での実力がそのまま反映され、その重要性が浮き彫りになりました。

 これはこのコラムを執筆し始めたPIST6の黎明期とも重なります。その時にも書きましたが「実力が拮抗しているレースではスタートの並びを重視」しながら予想を組み立てると良いですね。これが車券攻略のヒントとなりそうです。

坂本勉が選ぶ! 今シリーズのMVP

 練習を見てきただけに「勝って当然」とも言えますが、やはり「格上」の存在感を示した永澤ですね。初出場ながらも連日人気に応えての勝利は見事だったと思います。近々、私も永澤に八戸自転車競技場で会えるのではないかと思いますが「優勝おめでとう!」とちゃかしてみるつもりです(笑)。


【netkeirinからPIST6のレースに投票しよう!】

 netkeirinではPIST6の出場選手の成績や内容充実の出走表を見ながら、ラクラク買い目を作成することができます。作った買い目はTIPSTARの車券購入ページに送ることができるので、そのまま車券投票が可能です。

 また、出走表の下部にはPIST6攻略法として「予想の基本」を掲載していますので「予想の仕方がわからない」といった初心者の方にも安心です。PIST6の開催日にはレース映像のライブ中継もありますので、ド迫力のスピードバトルを観戦しながら楽しくベッティングしてみてはいかがでしょう。「PIST6 Championship 2022-23」もいよいよセカンドクォーターに突入! すでに楽しんでいる人もこれからの人も目指せ的中!


●坂本勉(さかもと・つとむ)
1984年、ロサンゼルス五輪に出場し銅メダル獲得。日本の自転車競技史に初めてメダルをもたらし、“ロサンゼルスの超特急”の異名を持つ。2011年に競輪選手を引退したのち、自転車競技日本代表コーチに就任し、2014年にはヘッドコーチとして指導にあたる。また2021年東京五輪の男子ケイリン種目ではペーサーも務めた。自転車トラック競技の歴史を切り開いた第一人者であり、実績・キャリアともに唯一無二の存在。また、競輪選手としても華麗なる実績を誇り、1990年にKEIRINグランプリ、1989年と1991年にはオールスター競輪の覇者となった。現在は競輪、自転車競技、PIST6と多方面で解説者として活躍中。展開予想と買い目指南は非常にわかりやすく、初心者から玄人まで楽しめる丁寧な解説に定評がある。

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