2022/06/28(火) 18:00 0 3
現役時代、ロサンゼルス五輪で自転車トラック競技日本人初となるメダルを獲得し、競輪ではKEIRINグランプリやオールスター競輪といったビッグレースを制したレジェンド・坂本勉氏。“競輪”と“ケイリン”を知り尽くした坂本氏が、新ケイリン「PIST6」のレースを振り返ります。(月2回・不定期連載)
netkeirinをご覧のみなさん、坂本勉です。今回は6月25日・26日に行われた「PIST6 Championship 2022-23」セカンドクォーターラウンド3の決勝レースを回顧していきたいと思います。
【セカンドクォーター ラウンド3 決勝レース動画】
今ラウンドで注目を集めたのは、ナショナルチームに所属していただけでなく、2018年の世界選手権男子ケイリン種目では銀メダルを日本にもたらした河端朋之のPIST6初参戦でした。
河端は24日に行われた前日のタイムトライアルでも10秒068で1位となっただけでなく、1次予選、2次予選ともに2位の選手に9車身差をつける圧勝劇を見せました。準決勝でも残り1周から加速していき、向こう正面で先頭に立つと、2着の恩田淳平に4車身差をつけ、これで無傷の3連勝で勝ち上がり。決勝でも単勝1.0倍という圧倒的な人気に支持されることになりました。
この決勝で河端と同じように3連勝で臨んできたのがセカンドクォーターラウンド1の優勝者である木村皆斗と、これまで2度の優勝経験がある神山拓弥です。ただ、単勝オッズでは河端と圧倒的な開きがあった中でも河端に真っ向勝負を挑んでいったのが木村、そしてPIST6を熟知したレースぶりで3度目の優勝を果たしたのが神山でした。
それでは決勝を振り返っていきます。スタートの並びはインコースから⑤神山拓弥⑥佐藤朋也①河端朋之③恩田淳平④木村皆斗②望月一成となりました。レースが動いたのは3周目。5番手にいた木村が最後方にポジションを構えます。
これは“PEDAL ON”のタイミングで一気に先頭に立とうという作戦だったかと思います。前回セカンドクォーターラウンド1で木村が優勝を果たした時、このPIST6徹底回顧で「脇本勇希と佐々木豪のもがき合いの結果、転がり込んできた勝利」と書かせてもらいました。
木村自身、前回は不完全燃焼だったと感じていただけに、この決勝では思い切ったレースをしようと思っていたのでしょうし、そこに元ナショナルチームの河端もいたことで、力試しをしたいという気持ちもあったのかもしれません。
“PEDAL ON”で最初に仕掛けていったのは5番手となった望月でした。その後ろから木村が動き出すのも分かっていたはずですが、おそらく誤算だったのは木村が競輪でいうところの「単騎カマシ」のように後続との差を引き離してしまったことでした。それは同時に、後方に構えていた河端にとっても誤算だったと思います。
最終周回を前に棒状の縦一列となってしまっただけでなく「車間の離れた2番手」となった望月が前との差を詰めようと加速していくので、ダッシュするタイミングも掴めなくなります。その上、隊列が伸びた後方に位置していると、コーナーは更に遠心力で外に膨れてしまうので、捲っていくのも難しくなりましたね。
一方、この展開にはまったのが望月の後ろを回っていた神山でした。木村を追走するがために脚を使ってしまった望月とは対照的に、神山は脚をためながら最終周回を迎えることになりました。神山は展開的にも運があったと言えます。
ですが、その運を手繰り寄せたのは、1次予選から前々を踏んでいた積極的な走りであり、何よりも「ZERO」ラウンド4で河端と同じナショナルチームだった雨谷一樹を下した走りが自信になっていたのではないのでしょうか。河端も雨谷の両選手はともにスプリンタータイプの選手です。そのスピードを発揮するには、残り1周まではどっしりと構えながら、一気のダッシュ力で捲っていくのが勝ちパターンと言えます。
タイム差のある1次予選や2次予選からはそれで通用しますが、スピードで及ばなくとも、タテ脚のある選手が揃った決勝では、前を捉え切るのが困難になります。しかも、最終周回に入った神山のように、前の位置取りから捲っていかれると、後ろにいる河端は更に外を回らなければいけなくなるわけです。
神山はタイムトライアルでは10秒722で18位。1位の河端との差はコンマ7秒ほどの差がありました。競輪では追込選手ながらも、PIST6では先行選手さながらに果敢に動いていって、ラスト1周では先頭に立つような走りをしています。これまでの2度の優勝で「250バンクでの勝ち方」を熟知していたことが、ラウンド4の雨谷、そして今ラウンドの河端と、元ナショナルチームの2人を下しての優勝となったのでしょう。
また、6番人気ながらも2着に入り、2車単・3連単ともに2万円車券を演出したのが佐藤です。今大会は決勝まで全て2着となりましたが、それも先行選手の後ろでレースを進めていくという狙いがハマった印象を受けます。この決勝でも準決勝と同じように、神山の後ろにピッタリとついていきました。
最終周回の向こう正面では外から河端が捲ってきていましたが、もし佐藤が神山の後ろにいなかったのならば、河端も外を回ることもなかったでしょうし、もし、河端が佐藤の位置につけていたのならば、直線で神山を捲り切れていた可能性もあります。結果的に佐藤の作戦が、河端の優勝を阻んだと言えるのかもしれません。
これで3度目の優勝となった神山、そして思い切ったレースを見せてくれた木村と優勝経験のある選手たちは巧さだけでなく、思い切りの良さも備えた走りができています。
一方、河端は予選や準決勝とは違い、決勝はすべての選手が早めに動き出すのを、改めて理解できたはずです。次に参戦してきた時には、そのことも考えながら走ってくると思いますし、さらに実力を発揮できるはずです。また、神山や木村のように優勝経験のある選手たちはタイム差に関係なく、車券で狙ってみるべき選手ではないかと思います。
予選からの内容も申し分なかった神山ですね。競輪とPIST6と異なるレースにおいて、“臨機応変さ”を生かした走りで勝ち切っている現状は高く評価されるべきでしょう。
また、敢闘賞は木村です。前回優勝しているにも関わらず、まるでそれを糧にするかのように、決勝では河端へ果敢に挑む“チャレンジャー精神”。結果は残念でしたが、次に繋がる走りになったと思います。彼の実力なら次も積極的なレース運びで、勝利という結果も残してくれるでしょうね。
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●坂本勉(さかもと・つとむ)
1984年、ロサンゼルス五輪に出場し銅メダル獲得。日本の自転車競技史に初めてメダルをもたらし、“ロサンゼルスの超特急”の異名を持つ。2011年に競輪選手を引退したのち、自転車競技日本代表コーチに就任し、2014年にはヘッドコーチとして指導にあたる。また2021年東京五輪の男子ケイリン種目ではペーサーも務めた。自転車トラック競技の歴史を切り開いた第一人者であり、実績・キャリアともに唯一無二の存在。また、競輪選手としても華麗なる実績を誇り、1990年にKEIRINグランプリ、1989年と1991年にはオールスター競輪の覇者となった。現在は競輪、自転車競技、PIST6と多方面で解説者として活躍中。展開予想と買い目指南は非常にわかりやすく、初心者から玄人まで楽しめる丁寧な解説に定評がある。