アプリ限定 2022/06/14(火) 18:00 0 31
「netkeirin」をご覧になってる競輪ファンの皆さん、そして全国500人の鷲田幸司ファンの皆さん、こんにちワシコー!
2022年上半期も終盤になってきましたが、自分は4月に行われた青森G3開催で競輪人生3度目の失格をしてしまい、2023年上半期のS級1班獲得が絶望的となってしまいました。
競輪選手にとって「階級」は一番分かりやすいステータスであり、自分自身も日頃からS級1班という所を目指して戦っていたので正直かなり落胆しましたし、ファンの方にも大変ご迷惑をおかけしました。
自分の今の状態と状況は決して良くありませんが、競輪選手としてファンの方の前で走らせてもらえる事を改めて感謝して、自分の走りで前記の失敗を取り返せるように、またこれからも練習とレースを頑張っていきたいと思います。
6月になると全国的に梅雨の時期に入る為、選手は練習でもレースでも相当悩まされる。今年もこの時期が来たかと毎年思う訳だが、そう思った時期に行われる開催が別名【雨の宮杯】と言われている「G1 高松宮記念杯競輪」だ。
今年は6月16日〜19日の日程で開催されるが、東日本と西日本からそれぞれ54名ずつ計108名が参加する大会で、決勝戦までは東西分かれて勝ち上がりをそれぞれ戦うという歴史と伝統がある大会。勿論、優勝すれば年末に開催される「競輪グランプリ」の出場権を獲得出来て、来年のS級S班もほぼ確定となる。
今年のG1戦は1つ目の「全日本選抜競輪」では大阪の古性優作が優勝、そして2つ目の「日本選手権競輪」では福井の脇本雄太が優勝と近畿地区の2人が前記の権利を既に獲得している。
そして3つ目のG1となる「高松宮記念杯競輪」だが、脇本雄太が規定出走本数不足により不出場の為、今大会は群雄割拠の戦いになると予想されており、誰が優勝するか全く見当もつかないと言っていいだろう。
そんな中、今回のコラムはワシコーが年末の競輪グランプリで脇本雄太と古性優作と近畿ラインで走る姿を見てみたいあの選手と、その選手と関連性が深い九州のあの選手の事を熱く真面目に書かせてもらおうと思う。
近畿地区と言えば「自力型の宝庫」と呼ばれていて、【先行】というスタイルにプライドを持った選手が非常に多い地区だ。
自力選手の意地とプライドの高さは半端じゃなく、若手選手達は同地区なのに敢えて連携をせず、どちらが近畿地区の先行屋としてプライドが高いかという意地の張り合いをするなんてシーンもよく見かける。
だから先行選手は物凄く重宝されるし、上位で、しかも【先行】で頑張ってきた期間が長ければ長いほど「存在価値」や「自己犠牲財産」があるとして、その選手が年齢を重ねてマーク選手に戦法チェンジをしても優先的に先行選手の番手を走るチャンスが与えられるという、正に良い意味での「因果応報」スタイルが近畿地区にはある(最近はどの地区もそうなってきている)。
そういった「ラインの並びは自力で頑張ってきた選手が優先」という流れがある中でマーク選手は勿論、長年先行で頑張ってきた自力選手も
「近畿地区の番手はこの人だ!」
と言わしめる男がいる。
その男の名は南修二選手(大阪・88期)だ。
2003年にデビューしてから今年の7月で20年目に突入する選手だが、公式に残っているデータだけでも棄権41回、失格34回(2022年6月14日現在)と、もはや数字を見ても普通じゃない選手であるという事は誰にでもわかる。
競輪における競り(良い位置を確保する為に選手同士がぶつかり合う事)を語る上で絶対に欠かせられないレースが、2016年3月に行われた日本選手権競輪での大塚健一郎選手(大分・82期)との歴代最長最恐の競り合いだ。見た事がない方は某動画アプリで「競輪 競り」と検索すれば2秒で出てくるから是非一度見てもらうといいだろう。
競輪選手はプロスポーツ選手であり賞金稼ぎであり、毎月2〜3開催 × 3〜4日 = 6〜12日間をレースに出走してその賞金で生活費を稼いでいる。
怪我をして走れなくなったらレースで得る収入は0円になるし、骨折等の大怪我をしたら入院生活。また、怪我をしていなくても失格をした場合はその開催の契約は解除となり、賞金なしで即日帰郷となる。
だから競輪選手なら誰もが階級に関係なく落車と失格だけは絶対にしたくないし、もししてしまったらその後は怪我の影響や事故点(レース中の違反点)の累積を意識してしまい、自分の走りが出来なくなる選手が圧倒的に多い。
そんな選手がほとんどの中で南さんは雨が降ろうが槍が降ろうが、怪我をしていようがしていまいが、誰が先行してようが誰が捲ってこようが、ラインの為ならどんな状況でも己の身体を張る事が出来て、義理人情という意味を走りで見せる事が出来る数少ない選手の内の一人だ。
ラインへの義理人情が余りにも強すぎて、ファンの車券を台無しにしてしまう事は何度もあるが、玄人ファンはその辺もしっかり把握しており、むしろそれがなかったら違和感を覚えてしまうほど、南さんの横の動きというのは当たり前の光景となっている。
誰もが競輪選手を目指していた頃は
「ラインを引き連れた先行をする!」「先行選手を徹底的に守るブロックをする!」
など、男らしい走りをする自分を想像してプロを目指すが、実際にプロとしてレースを走ると周りの評価や自分の点数を気にしてしまい、それを実行に移すのはなかなか難しい。
だが南さんはそんな若い頃に誰もが抱く理想的な走りを、プロになった今でも常に見せ続けている。そしてそんな南さんの走りを見ている近畿地区の先行選手はレースで同乗した際は
「この人なら安心して自分の走りが出来る」「何も言われなくてもやる事をやるだけだ」
と、自ら活力を湧き上がらせて100%、いや120%の力を発揮出来る精神状態でレースに挑めているに違いないだろう。
南さんに競輪に対する考え方や持論を少しだけ聞いた事があるが
「自分がその時その瞬間にやらなければいけない事を後悔しないようにやっているだけ」
と全てはラインの為、そして何より自分自身が納得する為に一生懸命走る選手であり、その走りと考え方が結果的としてファンへの貢度度に繋がっている選手なのではないかとワシコーは分析している。
ワシコー自身は落車と失格だけはとにかく良い事がないと思う反対派の人間だが、南さんの落車と失格だけは男としての意地とプライド、勝負に対する執念と覚悟を見せてもらっている気がして、その時ばかりは思わずその姿に目を奪われてしまう(落車と失格を肯定している訳ではない)
これまで数え切れない程の落車と失格をしてきた南さんだが、近畿地区で1、2を争うガッツと先行選手からの信頼を手に入れて今回地元で開催される「G1 高松宮記念杯競輪」に出場する。
南さんがG1タイトルを取る事は近畿地区みんな(特にマーク選手)の願いであり、全員がその瞬間を見たいと思っている事だろう。
脇本雄太不在の「G1 高松宮記念杯競輪」では、近畿地区大将の古性優作を筆頭に、南修二選手、稲川翔選手、岡崎智哉選手、神田紘輔選手の地元勢の活躍が非常に楽しみであり、ファンの皆さんにもそこに注目して観戦してもらえたら、より一層開催を楽しめるのではないかと思う。
南修二選手の記事を書いている最中、なぜか自分の脳内にある選手の声が響き渡った。記憶を辿ってみると、最近ある選手に声を掛けられた事を思い出した。
「お前、最近何かコラム書いちょんのやろが。次書く時は俺の事書けっち!」
4月の青森G3開催の参加中に検車場で自転車整備をしていたら一人の選手にこう言われた。顔を上げたらそこには修羅...もとい、厳しい表情の九州男児がいた。
その男の名は大塚健一郎選手(大分・82期)だ。
自他共に認める九州地区No. 1のガッツマーカーで、趣味「競り」、特技「ライン分断」、モットー「番手勝負」と他地区のマーク屋からブラックリスト入りされる程、レースに対して熱く厳しい走りをする選手だ。
前記、南修二選手とは競りを武器とするマーク屋同士で、龍と虎... 、いや、拳銃と日本刀... 、いや、悟空とベジータ... 、のような関係性と言える間柄だろう。
大塚さんは自力選手に非常に厳しい事でも有名で、基本的に戦法の選択肢は与えず自分の前を走る選手にはとにかく【先行】を中心に組み立てをさせる。
なぜなら自力選手にとって【先行】という戦法は強くなる上で一番の近道なのだと、そしてそれをやってくれたなら自分が体を張って別戦を封じ込めるから、最後の直線ではライン同士の真剣勝負をしようじゃないか!
というのは表向きの顔で、実は...
「お前よぉ、俺が番手についたらとりあえず行かないけんやろっち」
という圧力的な部分が十二分に込められた作戦伝授なのではないかとワシコーは勝手に妄想している。
そんなワシコー目線はメチャクチャなイメージの大塚さんだが、とにかく負けず嫌いで最後まで絶対に諦めない走りをする選手であり、スピード化した現代競輪でもその気持ちはブレる事なく最後のゴール線まで全力を出し尽くしてゴールする事を絶対に忘れない。
そして何より競輪愛が凄くて
大「なぁ、ワシコー。競輪最高やろっち。お前命懸けて走っとんかっち?」
ワ「一生懸命走っていますが、大塚さんにそれを聞かれたら命懸けとはまだまだ言えないです...」
大「命懸けなあかんっち。競輪最高やろっち。やっぱり競輪が一番やろっち」
と、選手を志していた頃の気持ちを思い出させてくれる頼もしくて心動かす鬼アツな選手だ。
今回の「G1 高松宮記念杯競輪」には残念ながら不出場だが、また必ずG1戦線に返り咲いて、前記南修二選手との龍虎激突... いや、仁義なき戦い... いや、スーパーサイヤ人対決...を見せてくれるとワシコーは確信している(落車と失格を肯定している訳ではない)
冒頭に記したが規定出走本数不足で出場出来ない脇本雄太や、怪我や不調で出場出来ない大塚さんのような選手の思いも含めて、2022年上半期を締め括る「G1 高松宮記念杯競輪」をファンの方に楽しんで頂けたらと筆者は切に願う。
【ご報告】
最後に私事では有りますが、この度日本競輪選手会福井支部の支部長に就任する事になりました。役職に対しての知識や経験はまだまだですが、【競輪】の素晴らしさを広めたい、【競輪】というものを一人でも多くの人に伝えたい、という気持ちは間違いなく日本一だと自負しております。
netkeirinさんでは何度もコラムを書かせてもらいましたが、競輪選手はトップアスリートから個性豊かな選手まで幅広い人材で溢れており、競輪場に関しては施設改善や情報発信をしっかり行なっていけば、ファンもまだまだ増えて、競輪の人気は右肩上がりで良くなっていくと確信しています。
これからはこれまでより多忙を極める事になるとは思いますが、選手としてまだまだ上を目指すのは勿論、支部長としても競輪界をより一層盛り上げられるように一生懸命頑張ります。
これからも応援宜しくお願いします。