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【PIST6】背中で語るオリンピアン中川誠一郎「現役のナショナルチームのメンバーとは戦ってみたい」/ファーストクォーターラウンド2優勝者インタビュー

2022/05/19(木) 13:00 0 1

2021年10月に千葉の「TIPSTAR DOME CHIBA」で開幕した「PIST6 Championship」。ここまで数多くの名シーンや名勝負が生まれているが、PIST6で勝利した選手たちはどのような感想を抱いているのだろうか。今回、netkeirin編集部では「PIST6 Championship 2022-23」ファーストクォーターラウンド2で優勝した中川誠一郎選手にインタビューを実施した。強さの裏にある温厚な性格と中川選手“らしい”考え方が随所に見て取れる取材となった。話題は幅広く、PIST6や自転車の話はもとより「今ハマっているお酒」までも教えてくれた。中川選手の“飾らぬ自然体”はやはり魅力的だ。※インタビューはオンラインで実施(取材日:2022年4月26日)

Photo by Kenji Onose

■ブランクを取り戻し完璧なレース展開を見せたファーストクォーターラウンド2

ーー初出場となったJAPAN HEROESシーズンファイナルでは、ナショナルチーム出身の後輩・雨谷一樹選手に惜敗してしまいましたが、レース後の心境はいかがでしたか?

 悔しさはゼロでしたね。あのレースは僕も力を出し切れたので、「いい勝負ができたな」という気持ちが大きかったです。

ーー「その時の反省を活かした結果タイムトライアルで自己ベストが出せた」と、具体的にはどういった部分を調整されたのでしょうか?

 前回は自転車競技のブランク期間が4〜5年ある中で、PIST6初出場だったので慣れていない部分が大きかったんです。ただ、今回は開催の流れもわかっていたし、普通の感覚で臨めました。前回から見ると多少ギアも調整していたんですが、その影響もあって走りやすさはありましたね。

ーー2次予選から決勝まで、前回より重いギア(4.58⇒4.62)でした。調整が上手くハマった感覚はありましたか?

 前回もタイムトライアルから本戦にかけてギアを上げていたので、流れは今回と一緒なのですが、今回2次予選で少し重いギアに変更したことで、より走りやすくなった気がします。

ーーご自身の中で、今節の調子はいかがでしたか? 初日に比べて、2日目は特に調子が良さそうに見えました。

 タイムトライアルは普段走っている競輪ではやらないので、レクレーションっぽさを感じて好きなんです。楽しいし、リラックスしてシリーズに入っていけるんですよね。でも初日はその気持ちの緩みが少しだけレースに出てしまった気がします。

 2日目は準決勝、決勝と対戦するメンバーも良くなってくるので、ピリッとしないといけないなと。僕の気持ちの弱さが、そう見えてしまったのかもしれません(笑)

Photo by Kenji Onose

ーー優勝インタビューでは「ガチで競技やってた人間なんで1回くらい優勝できて良かった」とおっしゃってましたが、日本代表として自転車競技を牽引してきた中川選手の中で、やはりプレッシャーのようなものはあったんでしょうか?

 いえいえ。プレッシャーとかプライドはほとんど持ち合わせてません(笑)。でも一応「元日本代表」という肩書をもってPIST6に参加させてもらっているとは思ってるので、恥ずかしくないようにくらいの感じですかね。

ーー同開催は2020年のKEIRINグランプリ覇者の和田健太郎選手もいましたが、決勝レースはなにか対策として作戦はあったんでしょうか? それとも力で押し切るという感じでしょうか?

 そうですね。僕からすると決勝は中島くん(中島詩音選手)の方が怖かったですね。ワダケンはほぼマークしていないです。

 PIST6は競輪とは全く別物だと考えているので、競輪での強さは全く参考にしてないです。強いて言うならタイムトライアル結果は多少参考にしますけど、競輪が強いからPIST6も強いとは思っていないです。というか級班もまったく意識していないです。

ーー決勝レースは、ゴールまで誰も寄せ付けず圧倒的な力を見せつけましたが、レース中優勝を確信したタイミングは結構早かったのではないですか?

 残り2周〜1周半くらいで豪(佐々木豪)のペースが緩んだのですが、そのタイミングで僕が踏み込めたので『いけるかな』という感覚はありました。勝利を確信したのはファイナルラップですね。

■オリンピアン中川誠一郎が語る自転車競技

ーー音楽や照明などPIST6独自の雰囲気があると思います。そのあたりはどのように感じてますか?

 競輪のようにギスギスしていないので、楽しくて走りやすいです(笑)

ーー東京オリンピックの会場にもなった『伊豆ベロドローム』をはじめ、世界各地のバンクを走っていると思いますが、それに比べてTIPSTAR DOME CHIBAの乗り心地、走りやすさはいかがですか? 違いはありますか?

 TIPSTAR DOME CHIBAは世界的に見ても走りやすいバンクだと思います。初心者向けというか入門編という感じ。どちらかと言えば伊豆のベロドロームの方がクセがある気がします。

 日本の競輪場も400mバンクでも、立川京王閣静岡等でそれぞれ特徴があるのと同じで、250mバンクもそれぞれ特徴があると思います。その中でも、千葉は走りやすいですね。

Photo by Kenji Onose

ーー競輪と自転車競技でフォームや乗り方を変えたりしてますか?

 変わる選手も多いと思いますけど、僕の場合はそこまで大きく変わらないですかね。ギア倍数が大きく変わったとしても、テンポが少し違うくらいで、やってることは変わらないので、戸惑ったりすることもないですね。

ーー自転車競技と競輪の両方を行き来する際に「調整が難しい、感覚が狂ってしまう」という話を聞いたことがあるのですが、中川選手は気にならないのでしょうか?

 それは慣れですね。慣れないうちはそうかもしれないです。僕はずっと競輪と競技の両軸でやっていたので、完全に慣れがある。ギア倍数の違いも気にならないですよ。

ーー中川選手にとってズバリ自転車競技の面白さはなんだと思いますか?

 どんな競技でも勝った時が面白いと思うので、僕がたまたま自転車競技に向いていたから(勝つことができて)、面白いと感じたのかなと思います。全体的な話? うーん。なんだろ。何が面白いかと言われると難しいですね(笑)

ーー中川選手にとって、今後日本で自転車競技が盛り上がるために必要なことはなんだと思いますか?

 盛り上がるためには、まずそのための知名度を上げることが先決ですかね。競輪を知らない人が多すぎる気がするので、ちゃんと民間放送でも取り扱われるくらいのレベルにならないといけないと思います。

ーー中川選手から見た自転車競技の魅力はなんでしょうか?やはり『スピード』ですか?

 競輪の魅力って中々伝わりにくいですよね。ゲームやサッカーみたいにわかりやすくないですし、その『スピード感』も競輪をやったことがない人にはなかなか伝わりにくい気がしてます。だからこそ競輪の魅力を伝える仕事の方々は大変だと思いますね(笑)

■熊本支部の後輩に見せるオリンピアンの背中

©PIST6

ーーPIST6で戦ってみたい選手、また反対に絶対に戦いたくない選手がいれば教えてください。

 現役のナショナルチームの方々とは戦ってみたいですね。たぶん負けちゃうとは思うんですが、盛り上がりそうなので戦ってみたいという想いはあります。現役のナショナルチームの選手は全然レベルが違いますし、海外の選手が来ると一気にPIST6のレベルが上がると思います。今チヤホヤされてるうちに頑張りたいと思います(笑)

ーーPIST6では熊本支部の選手の活躍が目立ちます。その秘訣はなんでしょうか?

 熊本競輪場のバンクは再建工事中で今使用できないので、熊本支部の選手は「千葉で練習もレースもさせてもらい助かっている」という気持ちを感じていると思います。その分、皆頑張ってるんじゃないかなと思いますね。

ーーオリンピアンとして、熊本の後輩選手にアドバイスをされることなどはありますか?

 アドバイスですか…。僕、背中で語るタイプなんで(笑)。熊本支部の選手が最近本当に強くなってきていて、頼もしいのが7割ですけど「まだまだ負けたくないな」っていう想いが3割くらいありますね。

ーー後輩選手と中川選手はPIST6のレースについて話し合ったり、質問を受けたりするような関係なのでしょうか? それとも「仲間」みたいな感じですか?

 若手が質問してくる時もあります。最近の若手は基本的に友達感覚で接してきますかね。ガチガチの体育会系の上下関係よりも、本当に良い傾向ですよね。僕が若いころは、上下関係が厳し過ぎるように感じていましたが、今の若手はフレンドリーなので良いなと思ってます。

ーー中川選手自身が厳しい中で生きてきたからこそ、上の立場になった今、後輩に対して気を使わせたくないという意識もあるのでしょうか?

 あります。あまり気を使って欲しくないんですよ。まぁ僕も気を使わないんですけど(笑)

ーー準決勝では、普段の競輪では戦うことのない同郷の瓜生崇智選手、松岡辰泰選手と戦われましたが、その時の心境を教えてください。

 凄く楽しかったですね! たまにラインを組んで一緒に走ることがあっても1対1で力を試しあうことは競輪では絶対にないので、PIST6特有の体験ができて本当に楽しかったです。準決勝が一番楽しかったですね。

ーー後輩選手からすると圧倒的に強い先輩選手と走るのはプレッシャーを感じそうですけど…

 いや、でも若手からすれば僕を超えていかないといけないわけじゃないですか。そんなところで止まっていたら「タイトル獲る」なんて言えないと思いますし。準決勝ではそういった想いが絡み合って後輩と走れたので楽しかったです。

 こういう時期なので、打ち上げはできなかったですけど、2人とも決勝が終わるまで待っててくれましたよ。

ーー松岡辰泰選手はTwitterでも「中川誠一郎様が強すぎる」と仰ってましたね!

 まだまだ意地を見せておかないといけないですね(笑)

ーー瓜生崇智選手、松岡辰泰選手とは年齢差がありますが、そこもあまり気にならないですか?

 そうですね。気にならないです。年齢差があっても普段から仲はいいですかね。けど、やっぱり若手と接していると「勢い」があるんですよ。競輪もギアや部品、パーツとかどんどん進化しているので、置いて行かれないように必死ですね。

■連載コラムの『ほろ酔い放談 競輪の因数分解』も大人気! 輪界屈指の“酒好き”

Photo by Kenji Onose

ーー練習後や休養日など、プライベートはどんなことして過ごしてますか?

 基本はゲームをするか、漫画を読むかですね。そういうのでリラックスして過ごしてます。

ーー当サイトで連載している『ほろ酔い放談 競輪の因数分解』コラムも人気です。以前は佐賀の地酒『光栄菊(こうえいぎく)』がお気に入りとのことでしたが、今はどんなお酒にハマってるんですか?

 熊本の酒だと、花の香酒造の産土(うぶすな)という酒が良いですね。

ーーやはりすぐ出てきますね! 競輪やPIST6開催前もお酒は飲んでらっしゃるんですか?

 基本毎日飲んでます。そんな大量には飲まないですけどね! 嗜む程度で毎日です(笑)

ーーちなみに、ナショナルチーム時代の遠征中は選手ではなくスタッフの方々とお酒を楽しまれていると聞きました。

 当時は年齢的にも選手よりスタッフ寄りだったので(笑)。ワッキー(脇本雄太)はよく付き合ってくれたんですけど。節制という意味もあってお酒を飲まない選手も多いんですよ。僕はちょっとくらい飲んでいた方が調子が良いタイプなので、良い意味でスタッフさんを利用させてもらってました(笑)

ーーオリンピックに2大会連続(ロンドン・リオデジャネイロ)で出場されていますが、一番の思い出を教えてください

 一番印象に残っているのは、ロンドンの時にポール・マッカートニーが見に来ていたことですね(笑)。イギリスは自転車競技が凄く盛んで国技のような位置づけだからだと思うのですが、女子チームパシュートでイギリスが金メダルを取って大騒ぎしているところに、ポール・マッカートニーがいました。すごくないですか? ポール・マッカートニーですよ。

ーー世界的大スターです

 オリンピックって本当に凄い舞台なんだな! というのをそこで改めて実感しましたね。

ーーいつも連載コラムでも面白いエピソードが満載ですし、これからもよろしくお願いします

 がんばります(笑)

ーーさいごに中川選手の活躍を楽しみにしているPIST6ファンの皆さんへメッセージをお願いします!

 もっともっとPIST6が盛り上がっていって欲しいです! ぜひ遊びに来てください!

◆中川誠一郎選手のプロフィール(取材時)

出身  :熊本
生年月日:1979/6/7
班級  :S級1班
府県  :熊本
身長  :174cm


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