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【坂本勉のPIST6徹底回顧】相手がどんなに最善を尽くしても…“スピードこそ絶対正義”となぎ倒した伊藤信の豪脚/レジェンドが見た疾風迅雷 #6

2022/04/21(木) 19:30 0 4

現役時代、ロサンゼルス五輪で自転車トラック競技日本人初となるメダルを獲得し、競輪ではKEIRINグランプリオールスター競輪といったビッグレースを制したレジェンド・坂本勉氏。“競輪”と“ケイリン”を知り尽くした坂本氏が、新ケイリン「PIST6」のレースを振り返ります。(月2回・不定期連載)

 netkeirinをご覧のみなさん、坂本勉です。今回は18日・19日に行われた「ファーストクォーター」ラウンド3の決勝レースを回顧していきたいと思います。

【ファーストクォーター ラウンド3 決勝レース動画】


雨谷一樹と伊藤信の明暗を分けたのは準決勝での走り

 今開催ですが、出場選手を見た時に自分だけでなく、ファンの皆さんもまた、雨谷一樹伊藤信の決勝での直接対決を期待したはずです。ここまでの4回出場し3回優勝し3着が1回と安定感が際立っている雨谷と、タイムトライアルで歴代1位の時計を持っており、前回の大会ではそのスピードをいかんなく発揮して見せた伊藤。

 この2人のレースは、スタートを取れた位置で構えながら脚を溜めて、ラスト1周半あたりから一気に捲っていき、そのまま後続を突き放してゴールという、脚質や戦法も似通っています。

 ただ、雨谷が準決勝で3着に敗れて決勝進出を逃したのに対し、伊藤は決勝も含めて、強いとしか言いようのないレース内容で、2節連続での完全優勝。2人の明暗を分けたのは準決勝での走りでした。

雨谷の準決勝は、“らしくない”走りだった?

4回出場し3回優勝と、優勝候補だった雨谷一樹

 雨谷が出走した準決勝Bですが、残り3周で鈴木浩太が仕掛けていっただけでなく、その番手には平山優太が入る形で、残り2周を迎えていきます。若手2人の思い切ったレースを最後方で構えていた雨谷からすると、いつもの仕掛けでは届かないのではないのかとの考えもあったはず。それがいつもよりも早めの踏み出しとなっただけでなく、一気に全力で駆けてしまったのだと思います。

 ただ、それまでの雨谷ならば、ぐんぐん加速を続け、捲り切ってからもゴールまで余力を残せていたはずです。ただ、この準決勝では早めに脚を使わされた上に、藤原憲征といった後続の選手たちに、目標とされる展開にもなってしまいました。

 タイムトライアルでは伊藤(10秒150)に続く、2位の時計(10秒195)となった雨谷ですが、いつもより時計が出ていないなとも感じていました。
 ふと気になって今月の配分を見ていたら、2月、3月が競輪だけで3開催の出場だったにも関わらず、今月はPIST6も含めて、この時点で3開催目。配分が詰まっていたことで、疲れも溜まり、思うような走りができなかったのかもしれません。

 それが2着に敗れたどころか、外を回ってきた大塚英伸にも交わされてしまうという結果になったのだと思います。

圧倒的なスピードで残り1周半で仕掛けた伊藤信

 一方、伊藤は連勝を飾った初日に続き、準決勝Aも万全のレース内容で決勝に進出しました。この決勝でも2枠からのスタートながら、残り3周で他の選手たちがいい位置を取ろうと動き出しているにも関わらず、どっしりと構え、残り2周では5番手まで位置を下げ、落ち着いていました。

どっしりと構え、残り2周では5番手まで位置を下げていた伊藤信(1番車ホワイト)

 自分の脚力を信じるかのように、いつもと同じように残り1周半で仕掛けていくと、前の4人を大外から一気に捲ってしまいます。結果からすればスピードの違いなのですが、他の選手たちからすれば、どうしようもなかったというところでしょう。

前の4人を丸飲み、大外から一気に捲った伊藤信(1番車ホワイト)のスピードは圧巻だった

徳田匠は曽我の後ろをとるイメージ通りのレース展開にみえたが…

 ただ、脚力では伊藤に叶わなくとも、この決勝ではそれぞれの選手たちが、勝つためのレースをしていたと思います。特に動きが目立っていたのは徳田匠です。4枠から残り2周半で先頭に立ちますが、後ろから曽我圭佑に叩かれると、その番手をキープします。

 徳田は学生時代に始めた自転車競技をきっかけに競輪選手となりましたが、そこでは長い距離のレースを得意としていました。トップスピードでは伊藤に叶いませんが、持久力があるだけに、前々に踏み出していくだけでなく、いったん番手に入ってから、再度、踏み直していくこともできます。

後ろから曽我圭佑(2番車ブラック)に叩かれるも、その番手をキープする徳田匠(3番車レッド)

 その意味では曽我の後ろはイメージした通りのレースであり、先頭に立った曽我もまた、自分の脚質を考えた時には、徳田を後ろに置きながら、後方にいる伊藤と距離を取っていくのが、優勝に近いと考えていたのでしょう。

 残り1周に入ってからも、2人ともにかかっていましたし、あの展開となった時に一番有利なのは徳田だったと思います。曽我を番手捲りで超えていくタイミングも完璧だったと思います。ただ、その展開すら、伊藤は想定していたのでは? と思えたほどの仕掛けのタイミングであり、そして自信に溢れた走りでした。

PIST6初出場も素晴らしい立ち回りの岡村潤に期待

 徳田の後ろを回りながら、3着に食い込んで見せたのが岡村潤です。これが“巧さ”だと思います。岡村はPIST6初出場ながら、競輪で培ってきた立ち回りを生かしたレース運びをしていましたね。今後も定期的に参戦してくるようだと、車券に絡んでくる選手となりそうです。

これからもレベルの高いレースが行われていくPIST6が楽しみ

 もし、この決勝に雨谷が出ていたら、また違った展開になったのかもしれません。先ほども書きましたが、脚質や戦法だけでなく、250のタイムもほぼ一緒。そうなると競技のケイリンと同様にスタートの位置に加え、勝負どころの位置取りも重要となってきます。

 もし、二人がお互いをけん制しあうように、後方で脚を溜めていった場合、内枠を引いて、なおかつ早めに先頭に立った他の選手が、有利になる展開も見込めます。それだけに今後の開催では、伊藤と雨谷の直接対決が見てみたいですね。そして、2人に引けを取らないスピードを持った選手たちが、ドンドン参戦してくることで、更にレベルの高いレースが行われていくとも思っています。

坂本勉が選ぶ! 今シリーズのMVP

 ゴール前で後ろを振り向いてみせた力の違い。自分のレースに徹しながら、勝利をおさめてみせる格の違いを考えれば、やはり伊藤でしょうね。今開催に限定するのなら、もし、雨谷が決勝に進んでいても、タイムだけでなく、レースごとの勢いにも勝っていた伊藤が優勝していたと思います。

完全優勝を飾り満面の笑みでガッツポーズをする伊藤信


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●坂本勉(さかもと・つとむ)
1984年、ロサンゼルス五輪に出場し銅メダル獲得。日本の自転車競技史に初めてメダルをもたらし、“ロサンゼルスの超特急”の異名を持つ。2011年に競輪選手を引退したのち、自転車競技日本代表コーチに就任し、2014年にはヘッドコーチとして指導にあたる。また2021年東京五輪の男子ケイリン種目ではペーサーも務めた。自転車トラック競技の歴史を切り開いた第一人者であり、実績・キャリアともに唯一無二の存在。また、競輪選手としても華麗なる実績を誇り、1990年にKEIRINグランプリ、1989年と1991年にはオールスター競輪の覇者となった。現在は競輪、自転車競技、PIST6と多方面で解説者として活躍中。展開予想と買い目指南は非常にわかりやすく、初心者から玄人まで楽しめる丁寧な解説に定評がある。

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