2025/11/27(木) 18:00 0 10
今年の顔であり、2026年S級S班所属となる9名の選手たちによる一発勝負。競輪界の一大決戦「KEIRINグランプリ2025」が30日、平塚競輪で開催となる。netkeirinでは9日間にわたり、出場選手たちの特徴やグランプリまでの道のりを日替わりでお届けしていく。今回は先日の競輪祭を制し、奇跡の大逆転を決めた阿部拓真を紹介する。(構成:netkeirin編集部)
新山響平、吉田拓矢のGIウィナーをはじめ、その他にも取鳥雄吾、簗田一輝、鈴木竜士など、上位戦線で活躍する選手も多い黄金世代・107期卒の阿部。
しかし養成所時代は在校順位16位と目立つ存在ではなく、デビュー後はS級昇級後5か月で初優勝を果たすなど、出だしこそ順調だったが、20年後期に失格3回で降級、落車も相次ぎ成績も降下するなど苦しんだ時期も非常に長かった。
そして今年も5月の宇都宮記念で準V、7月には豊橋競輪で優勝を果たすなど良い波が来たかと思えば、9月の岐阜競輪、奈良競輪と連続で落車してしまうなど、以前と同じく一歩進んで一歩下がるような日々が続いていた。
そんな流れで迎えた競輪祭。初戦からいきなりS班眞杉匠、金メダリスト山崎賢人、110点越えの強豪佐々木豪と強力すぎるメンバーが集う番組に入ってしまう。点数は105点で、脚質もバリバリの自力型というわけではない阿部は、自力4車の中で当然最低人気だった。しかしレースでは立ち回りの巧さを発揮して、なんと眞杉の番手を奪取するとそのままその位置を手放さずに確定板入りを果たした。
そして単騎戦となった二次予選、準決勝でも嗅覚を活かした位置取りで共に2着で高配当を演出し、あれよあれよという間に決勝まで辿り着いてしまった。そして幸運なことに同期のスーパースター吉田拓矢の後位は不在で、そこに阿部が収まる形となった。
迎えた決勝戦。吉田が5番車、阿部が6番車と不利な車番だったが、阿部の大きな武器の一つであるスタートの速さを活かして前中団を確保することに成功。その位置取りが功を奏してカマシ先行を敢行する松本貴治の後ろ3、4番手に収まり阿部にもチャンス十分の展開でレースは最終バックに突入した。
古性の仕掛けに合わせて吉田が捲りを放つが、これを荒井がブロックしタテへと踏む。阿部は機敏な動きでこの後ろにスイッチし、いよいよ最後の直線。輪界屈指のタテ脚を備える荒井との火花散るマッチレースを制して先頭でゴールを駆け抜けたのは最下位人気の阿部だった。
6(阿部)ー2(荒井)ー3(松井)の組み合わせはなんと3連単504通り中最低の504番人気で配当は35万円という大波乱の結果になった。レース後阿部は「謝った方がいい案件ですかね? 504番人気が来てしまったので(笑)」と話しているがとんでもない。少数派ではあるが全国の大穴党のファンは一生忘れられない思い出となったことだろう。
まさかまさかの大逆転でのグランプリ出場となるが、本人は「グランプリが何日にやるのかも分かっていません(笑)」とまだ実感が湧いていない様子。だが、この勢いのままもう一発! の波乱劇をグランプリでも期待しているファンは多いだろう。平塚での阿部の走りが今から楽しみだ。
阿部の選手としての魅力は競輪祭の勝ち上がり戦でも魅せた「レース運びの巧さ」だろう。
その強みが光ったのが宇都宮記念の決勝戦だ。車番が悪いながら初手で中団を確保すると、後ろから抑えに来る清水裕友に合わせて先切りで先頭に立つ。そして最終ホームからカマす清水裕友ラインの3番手・大塚玲が前との口が開いたところを見逃さずに捌いて3番手を奪取した。そして最後の直線では番手の小原太樹こそ交わせなかったものの、鋭いタテ脚で2着に強襲する阿部らしい競走で3連単57,800円の波乱を演出した。
自力で戦うにせよ、誰かの後ろを回るにせよ、激戦必須のグランプリにおいて冷静な立ち回りができるという武器が大きなプラスになることは間違いない。阿部らしさ全開の競走に期待だ。
