2021/09/23(木) 15:00 0 11
東京スポーツの前田睦生記者がレースの中から”思わず唸った”選手をピックアップする「今週の競輪好プレー」!今回は山口拳矢が衝撃の優勝を果たした、共同通信社杯からの好プレーをピックアップ。前田記者直筆解説と一緒にぜひご覧ください。
山口拳矢(25歳・岐阜=117期)の優勝という衝撃で終わった共同通信社杯。その中の1つのレースが、多くの人々の胸を打った。
2日目(18日)の二次予選B・8Rだ。
芦澤大輔(39歳・茨城=90期)と辰弘(33歳・茨城=95期)の兄弟が連係したレース。この2人の兄弟連係は初めてだった。ともにマーク型として定着している兄弟。特に大輔は“鬼のアシザワ”と呼ばれる番手勝負上等の超ハードマーカーだ。
「競輪場の兄はもちろんだし、普段の兄も好き」。慕い、憧れ、背中を追ってきた辰弘。どんなレースをするのか…。
打鐘で先頭に立つと、そのまま冷静にペースを保ち、上げ、風を切った。
「色んな経験が生きてました。もし20代のどこかで兄と連係できていたとしても、こんなレースはできなかったと思う」。焦ることなく、しかし熱く。兄はその気持ちを受けて、最終バックで番手まくり。山口と筒井敦史(45歳・岡山=85期)には行かれたものの、桑原大志(45歳・山口=80期)の猛襲を耐えて3着。準決勝の切符を手にした。
「2人でつかみ取った3着でした」。兄の言葉が響く。そして「3角過ぎから記憶がないんですよ」とも。
これで3着以内に入れなければ、弟の走りは無駄になる。全身の血管がぶち切れてしまってもいいと思って踏み込んでいた。弟から兄に受け継がれたバトンの重みは多くの選手たちに伝わっていた。
レース後、「色んな選手からいいレースだった。熱い走りだった」と芦澤兄弟は声をかけられたという。中でも「村上(義弘、47歳・京都=73期)さんから『気持ちのええレースだった』と言われた時は、また泣きそうでした」。
辰弘は2人で連係するとコメントを出す時、すでに泣いていた。根性と兄弟愛と涙が入り混じったレース。辰弘の先行、大輔の執念の番手まくりに★5つ。競輪が持つ物語としての極みをいくレース、走りだった。
すごいで賞=★★★★★(星5つ)