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“還暦レーサー”奮闘の一方で強制引退に追い込まれる20代も… 選手寿命が長い競輪界の実態にせまる

アプリ限定 2025/03/27(木) 12:00 0 33

競輪選手の人数は、男女合わせて約2,300名。プロ野球の約900名、Jリーグの約1,700名と比較しても、競輪は国内においてプロ選手の多い競技であることがわかる。さらに注目すべきはその選手寿命だ。今回は「競輪選手の年齢」をテーマに、データを分析してみた。

(撮影:北山宏一)

競輪選手の平均年齢は38.4歳

項目年齢
平均年齢(全体)38.4歳
平均年齢(男子)39.3歳
平均年齢(女子)28.9歳

 全体の平均年齢は38歳と他のスポーツと比較すると考えられないほどに高いのが競輪の特徴。全員が単騎で戦うガールズケイリンの平均年齢が28歳なのに対して、男子の競輪の平均が39歳であることを考えると、ライン戦が選手寿命を延ばしているとも考えられる。

47歳で1億円⁉ トップで戦い続けるベテランも

 平均年齢の高さからもわかるように、競輪は他のスポーツでは大ベテランと呼ばれるような年齢でもまだまだ元気に活躍している選手が多い。佐藤慎太郎は43歳にして競輪界イチのビッグレースであるグランプリを43歳で制し、2023年には47歳にして年間で1億円を稼ぐなど、競輪界トップクラスの成績を残している。

佐藤慎太郎(撮影:北山宏一)

 また、先日行われた全日本選抜競輪(GI)出場選手の中で最年長だった山口富生はなんと55歳。5年後には還暦を迎える年齢ながら、最終日には1着を獲得し自身が持つ最年長GI勝利を更新するなど、衰えを感じさせない成績を残している。

年齢を感じさせない自力繰り出す大ベテラン

 競輪では若手選手が空気抵抗の多いラインの先頭で戦い、ベテラン選手がその若手をマークするという構図が一般的だが、ベテラン選手の中にも若手選手のように自力メインで奮闘している選手もいる。例でいうとパリ五輪に出場し、GI戦線でも活躍する太田海也の師匠・藤田昌宏だ。ビッグレースの初出場は43歳(2018年・日本選手権競輪)と遅咲きの選手で現在はA級で戦っているが、2025年に入ってからは6開催すべて決勝進出(3/7時点)、自力戦でも捲りを中心に連対7回と若手にも劣らない自力で好成績を残している。

藤田昌宏(写真左)と小嶋敬二(写真提供:チャリ・ロト)

 またGI4勝のレジェンド、“小嶋社長”の愛称でも親しまれる小嶋敬二も55歳ながら自力で奮闘している。2024年後期では28年ぶりにA級戦を走ることになったが、期間内で決勝を逃したのはわずか1回。9月の松戸競輪の決勝では強力な若手を相手に逃げ切り勝ちを収めるなど、まだまだ自力で戦える力を持っている。

還暦超えても現役のレジェンドレーサー

 上記でもベテランレーサーの活躍を取り上げたが、これまで紹介した選手よりもさらに年上の還暦レーサーも競輪界には存在する。強制引退の制度があるため、やりたいという意志だけでは現役を続けられない競輪界で還暦まで続けるというのは常人では不可能だ。脂が乗った若手たちにも負けずに食らいつくその姿に敬意を表したい。

還暦レーサー一覧

選手名級班府県年齢
佐々木浩三A級3班佐賀62歳8か月
北沢勝弘A級3班栃木62歳5か月
野崎修一A級3班栃木62歳0か月
高橋京治A級3班埼玉61歳2か月
川添輝彦A級3班沖縄60歳0か月
遠澤健二A級3班神奈川60歳0か月
三浦靖A級2班岐阜60歳5か月
宮倉勇A級1班千葉60歳7か月
村上清隆A級3班山口60歳10か月
重一徳A級2班鹿児島60歳11か月

※年齢は2025年2月27日時点

 昨年までは6人だった還暦レーサー。その中で小林覚谷尾佳昭が惜しまれつつ引退したが、今年から遠澤健二ら6人が新たに還暦レーサーの仲間入り。計10人の選手がが還暦を迎えても若手に負けじと競い合っている。

宮倉勇(写真提供:チャリ・ロト)

 還暦レーサーの大半は一番下の級班であるA級3班でデビュー間もない若手たちとしのぎを削っているが、今年還暦レーサーの仲間入りを果たした宮倉勇はA級1班の格付け。昨年の後期ではチャレンジ戦も経験したが、ダッシュ鋭い若手たちにも食らいつき、コンスタントに決勝まで勝ち進む。そして今年からは再びA級1・2班戦に復帰。1月には落車もあったがすぐに復帰し、その後も安定して確定板に食い込む活躍を見せている。

逃れられない「強制引退」

 一方で競輪界には「代謝制度」がある。成績不振が続くと強制引退となってしまう制度で、プロ野球でいう「戦力外通告」に近い。この制度により年間約60名が競輪界を去る。

項目年齢
現役選手平均38.4歳
現役選手平均(男子)39.3歳
引退選手平均(男子)47.8歳
現役選手平均(女子)28.9歳
引退選手平均(女子)31.1歳


 昨年、平均引退年齢よりもはるかに若い20代で輪界を去ったのは男女合わせて9名、中でも男子最年少で代謝となった北野佑汰はまだ25歳。競輪学校の在校成績は69人中39位と特段悪い成績ではなかった。同期で北野より順位が低かった佐藤礼文晝田宗一郎はGIに出場するなどの活躍を見せているあたり、競輪という競技の難しさを実感させられる。

20代にして競輪界を去った北野佑汰(写真左)と日吉克実(写真提供:チャリ・ロト)

 同じく29歳と若くして輪界を去ることになった日吉克実はデビューからわずか2年で代謝となってしまった。日吉は学生時代は陸上100mで桐生祥秀に圧勝、新記録樹立など圧倒的な成績を残した選手で、競輪へと転向する際は鳴り物入りで競輪学校に入学。しかしデビュー後はケガに苦しみ、思うような成績を残せずに無念の強制引退となった。

 還暦を迎えても現役を続ける選手もいれば、若くして競輪界を去る選手もいる。これが競輪の興味深いところであり、残酷な部分でもあるだろう。

 落車によるケガや強制引退など、さまざまな重圧のなか命がけで戦う選手たちを、どうか温かく応援してほしい。


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