2021/09/03(金) 12:00 0 10
競輪選手になるためには、日本競輪選手養成所を出なければならない。学生時代から自転車競技に親しんできた候補生が多いなか、「適性試験」を合格して他競技から競輪の世界に足を踏み入れる選手もいる。
今回はその「適性試験」でスピードスケートから転向し、6月にガールズケイリン選手として本格デビューした本多優選手に、近況と養成所時代、そしてこれからについて話を聞いた。(取材・構成 netkeirin編集部)
ーー大変な時期に取材をお受けいただいてありがとうございます。8月12日にはいわき平で「ガールズドリームレース」が開催されましたが、ご覧になりましたか?
本多優:見ました。児玉(碧衣)さんは少し調子を落としていて、大きなプレッシャーの中「楽しんでやる」と話していたのが印象的でしたね。私は今楽しむ余裕がなかなかなくて……児玉さんの姿を見て「自分も楽しんでやる気持ちを持とう」と思いました。
ーー出場選手とご自身との違いなどを感じられたのでしょうか。
そうですね。メンタル面もそうですし、経験値が全く違いますね。自分たちは120期生で差が開いているので、まずは経験を重ねていけたらなと。
ーーまずは一歩ずつですね。ところで同じタイミングで東京五輪がありましたが、そちらはご覧になりましたか?
はい! 自転車競技ももちろん見ましたし、スケートボードで12歳の選手(開心那選手)が銀メダルを獲りましたよね。新しい競技で自分より若い選手が活躍していて、自分も頑張んなきゃなって刺激になりました。
ーースケートボードは若い選手がたくさん活躍していましたもんね! ちなみに本多選手は養成所に入る前はスピードスケートをされていたんですよね。
そうです! 夏は自転車のトレーニングもしていたんですよ。だから自転車に乗ること自体は慣れていたかもしれないですね。
ーーそうなんですね! スピードスケートの経験が競輪に生かせている部分もあるのでしょうか?
競輪とスピードスケートは使う筋肉が似ているので、脚力は生かせていると思います。太ももの裏とか。
ーーなるほど。ガールズケイリン選手を目指すと決めたとき、ご家族はどんなふうに仰ってましたか?
「お金稼いできてね」って(笑)。うちは貧しくもないけど特別裕福でもなかったので、家族に今までの恩返しをしたいなって思ってるんです。だから稼げるように頑張りたいですね。自分でもお金使いたいし(笑)。
ーーこれまでの感謝の気持ちが大きいんですね。
背中を押してくれてますからね。母も「頑張ってね」って言ってくれるし、祖母はよく電話をくれるんです。毎回レースを見てくれててすごく嬉しいので、もっと喜んでもらえるように頑張らないと。
ーー温かいご家族ですね! 本多選手はご実家からバンクに通われているそうですが、1日のスケジュールはどんな感じなんですか?
家からバンクまで2時間くらいかかるので、起きるのは5時半くらい。ホームバンクの前橋競輪場までは自分で運転していきます。群馬はガールズの選手があんまりいないので、男子の強い選手と一緒にもがいてます。あとはバイクで引いてもらったり、検車場でローラーに乗ったりして4時間くらい練習して、また2時間かけて帰ります(笑)。
ーー往復4時間の運転はちょっと大変そうです…。
楽しく移動しないと地獄なので(笑)、歌ったりしてますよ。K-POPとか、今は夏なので平井大さんの曲とか…。たまにぶつけますけどね(笑)。
ーー気分転換にもなっているんですね! そして帰ってからはジムに行く、と。
そうですね。ジムでは体幹とかのトレーニングをしてます。17時くらいに家に帰るんですが、両親は共働きで私が最初に帰ってくるので、お風呂掃除や夕飯の支度、弟の迎えに行ったりします。
ーーきつい練習のあと家事もこなしているなんてすごいです。自由な時間が少ないのでは?
弟たちにご飯を食べさせて、自分の時間が取れるのは21時以降ですね…。適当に携帯いじったりしてたらいつのまにか寝ちゃってます(笑)。
ーーそれは疲れるでしょうね。お休みの日はゆっくりできていますか?
休みの日は本当になにもしないですよ(笑)。起きるのも遅いし、ゴロゴロしてるし。散歩はたまに行きますね。家の周りが本当に森で、トトロの世界。歩きたくなるんです。あとは師匠に改造用の自転車を借りてるので、それを触ったりとかですね。
ーー休みの日も自転車に!菅藤(智)師匠はどんな言葉をかけてくれますか?
あまり多くは言ってこないですが、「今日はギアはこれでやってみよう」とかアドバイスをくれます。競走についても、LINEで長文で送ってくれますね。ここがこうだったから、こうしたほうがいいよね、とか。
ーー優しいんですね。では、本多選手はこの先、どんな選手になりたいと思っていますか?
最近すごく思うのは「勝てる選手」になりたいな、と。今5着とか6着、7着しか取れていないのがすごく悔しくて。
ーー将来「勝てる選手」になるために、どんなことが必要だと考えているんでしょうか。
気持ちですかね…。あとは、出し切ること。ひとりで練習していたからか、休憩すれば何本でも走れちゃうところがあるんです。でも数じゃなくて1本1本集中して、その成果をレースで出せるように。練習から常に「この1本しかない」って気持ちでやらないとと思っています。
ーー応援しています! 最後に、本多選手が大切にしている言葉を教えてください。
「やればできる」! 今は全部が難しいんですけど、家族のためにも自分のためにも、良い結果を残したいです。
ーー今後のご活躍を楽しみにしています。本日はありがとうございました!
ルーキーシリーズでは3着が5回あったものの、本デビュー後は7月24日立川競輪での4着が最高成績となっている本多。先輩レーサーたちとの力の差をまざまざと見せつけられている。しかし、まだ今は経験値稼ぎの時期だ。9月に20歳の誕生日を迎える彼女。バンクでのびのびと躍動する姿が見られる日が楽しみだ。
※制作スタッフ全員がPCR検査陰性を確認し、マスクおよびフェイスシールド着用の上、取材・撮影を行いました。