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【京王閣競輪】元JRAジョッキー勝浦正樹氏に聞く競輪の魅力「ギャンブル的なバランスがベスト」/ゴールドカップレース開幕記念インタビュー

2024/10/25(金) 17:00 1 21

10月26日から京王閣記念「ゴールドカップレース」が開幕する。今節はS級S班選手が5名出場するほか、昨年覇者の新田祐大、ダービー王かつ関東の総大将・平原康多が参戦する。グランプリの出場権利を懸けた争いも終盤戦。この大一番の開催を記念して、競輪愛MAXの元JRAジョッキー・勝浦正樹さんにシリーズ展望をお聞きしました。(取材日:10月8日 取材構成:netkeirin編集部)

元JRAジョッキー勝浦正樹氏(photo by Kenji Onose)

「もう競輪は生活の一部です(笑)」

ーー今回は京王閣記念のシリーズ展望や勝浦さんの思う競輪の魅力をお聞かせください。

勝浦 よろしくお願いします。それにしても京王閣記念の出場メンバーすごくないですか。間違いなく面白いシリーズになると思いますよ。楽しみですね。

ーー勝浦さんは本当に競輪が好きですよね。これまでたくさんの企画にご協力いただいています。

勝浦 もう生活の一部と言ってもいいと思います(笑)。車券を買ってレースを見て、そうなっちゃうのかーっていうのはもちろんありますけど、つまらないと思ったことは一度もないんですよ、競輪。ずーっと面白いですね。

ーー競輪をはじめたきっかけはどんな感じなのでしょう?

勝浦 正直はっきりとは覚えてないですね。いつからか自然にという感じ。ジョッキーになって2年目くらいから北海道で走っていたんですが、知人の紹介で函館の朝市でお店を営んでいる菊地圭尚の親父さんと仲良くなったんです。そのとき圭尚が競輪選手を目指していて、その時から応援してきました。これが競輪との出会いエピソードですかね。

ーーずっと交流があるんですか?

勝浦 今でも親父さんは“おとうさん”だし、本当の家族のような仲です。だから圭尚のことを“兄弟”のようにも感じています。ずっと交流は続いていますよ。

菊地圭尚は兄弟同然」と嬉しそうに話す勝浦氏(photo by Kenji Onose)

ーー公営競技つながりとかギャンブルという視点ではなく、人との繋がりから競輪へ興味を持ったのですね。

勝浦 そうですね。でも競輪だけではなく、オートレースやボートレースなどもやりますけど、競馬と同じ公営競技という部分に親近感を覚えたのもあったでしょうね。それに大体まわりに誰かしら好きな人がいるんですよ。競輪好きとかオートレース好きとかボート好きとか。車券を買うようになったのは「人から勧められて」のきっかけが大きいかもしれないです。

ーー最初に車券を購入した時にどんな感想をお持ちになりましたか?

勝浦 これまた記憶にないですね(笑)。勝ったとか負けたとかすらも覚えていないです。たしか、「よくわからないな」という感想だったんじゃないかな。競輪って最初は覚えることがたくさんあるので、面白いとか楽しいとかは後々に感じていきました。

ーーはじめて行った競輪場はどこだったでしょう?

勝浦 子どもの頃に千葉競輪に行ったのが最初ですが、ちゃんと車券を買えるようになってから行ったのは22歳くらいだったかな。ちょうどドームになってからすぐの小倉競輪に行きました。競輪好きの先輩ジョッキーに連れられて。この時も「おもしろい!」って感じでレースを見てたわけではなかったことを覚えています。

ーーちなみに今はどのくらいの頻度で競輪をやっていますか?

勝浦 さっき話した通り、生活の一部です(笑)。気が向いたタイミングでだいたい毎日レースを探しています。

ーーグレードレース以外も注目していますか?

勝浦 もちろん。注目選手一覧を見て気になる選手がいたらグレードレースじゃなくても買います。今はネットで簡単に情報収集できて簡単に車券購入できます。選手の成績や調子もリサーチしやすい。なので、それも生活の一部になる要因でしょうね。

ーー相当なレース数を見ていますよね(笑)

勝浦 見ている時は全レース見ているかも(笑)。

スマホでレース情報をチェックするのが日課になっている(photo by Kenji Onose)

競輪の魅力は「ギャンブルとしてのバランスが良いところ」

ーー府中の東京競馬場から競輪を観に行くことはありましたか?

勝浦 ありましたよ。京王閣立川も府中から近いですから。特に覚えているのは雪が降って競馬の開催が中止になったとき。競輪好きの津村(明秀騎手)と帰りに競輪を楽しんだことは記憶に残っていますね。それは立川競輪の思い出なんですけど。京王閣の話をするなら“行きやすさ”ですね。改札を出てすぐという好立地。競輪は生で見てこそ、と思うので、交通の便がいい京王閣は嬉しい競輪場です。現地の見やすいオーロラビジョンもいい。“生で見てこそ”は競輪も競馬も一緒ですね。

ーー“生で見てこそ”と思うポイントはどんなところですか?

勝浦 音です。生で観戦すると画面では伝わらない迫力があるのは言うまでもないですが、僕が特に感じるのは“音の良さ”ですね。競輪のレースってタイヤの「シャー」っていう音がすごく気持ちいいんですよね。競馬もそうですけど、やっぱり生で聞く音には臨場感がありますし、レースの魅力だと思いますよ。

ーー結構な数の競輪場に行かれているのですか?

勝浦 残念ながら全然です。函館はもちろん、今も話したように千葉立川京王閣小倉。あ、栗東滞在の時にバスで向日町も行きましたね。近いので松戸取手も行きます。川崎も当然あるでしょ。それくらいかな。あんまり多くの競輪場には行ってないかもしれませんね。あ、大宮も行ったか、それと…。

ーー勝浦さん、十分多いです(笑)。

勝浦 今の夢は旅打ちというか、遠くの競輪場に遊びに行くことですかね。四国なんていいなあと思います。行ってみたいです。

「旅打ちなんて最高だよね」と思いを馳せる勝浦氏(photo by Kenji Onose)

ーー競輪の魅力はどんなところにありますか?

勝浦 ギャンブル的に面白いと思います。僕はオートもボートもやるし、競馬の世界では騎手として生きていました。それぞれの公営競技を知っていますが、競輪はギャンブル性にバランスの良さを感じるし、それってとても魅力的だと思います。「儲かるよ!やった方がいいよ!」って言いたくなりますもん。ラインの絆とか競輪ドラマだって魅力がある。でもその前にギャンブルとしての“おいしさ”を感じているんですよ。

ーーバランスというのは「的中難易度に対する配当の大きさ」のようなことでしょうか?

勝浦 そうです。そもそも確率上、出走頭数の多い競馬よりも当たりやすいギャンブルとは言っていいですよね。細かく言えばそうじゃないケースもありますが。1着に来る選手を予想して2着や3着を手広く買うとするじゃないですか。その時に1着や2着が堅い決着だとしても、3着にそこまで人気を集めてない選手が来たとしましょう。そういう時に配当を見て驚くことがあります。「3連単で5000円以上つくの?」みたいな感じで。

ーーなるほど。

勝浦 レースがワンパターンじゃないからでしょうね。競輪って同じメンバーで走っても同じ決着にならないところに面白さがあります。同じメンバーでも並びが違えば、展開も変わる。見れば見るほど予想のための材料が増えて、車券推理も楽しくなっていく感じはありますね。

ーー最高で何倍くらいの車券を的中させたことがありますか?

勝浦 12、3万車券を狙って取ったことがあります。このあたりが最高です。でも1度ではなく、何回かありますよ。大きい配当を演出してくれた選手って記憶に残っています。

佐川翔吾選手や竹山陵太選手が好配当演出してくれた」と的中体験を思い返して楽しそうに語る勝浦氏

京王閣記念ゴールドカップ展望「僅差の戦い、調子の良し悪しで決まる気がする」

ーーそれでは話題を京王閣記念に移しましょう!まず注目選手をお聞きしてもいいですか?

勝浦 いや、注目するべき選手が多過ぎて(笑)。『この選手に注目!』と限定するのは非常に厳しい豪華メンバーです。

ーーたしかに豪華メンバーゆえに注目選手が絞るのは難しいです。

勝浦 はい。S班に目が向きますが、全然S班だけじゃない。1班も昨年京王閣記念を優勝している新田祐大選手、平原康多選手も出ますし、犬伏湧也選手も強いでしょ。とんでもない記念開催だと思いますけど(笑)。でも実力が高いレベルで拮抗するはずですから、車券を考える時はレースを見て調子は見極めたいですよね。こういうシリーズこそ選手の調子の良さは大きく結果を左右すると思います。“GIの後”というのも調子に出る気がしますしね。

ーーなるほど。

勝浦 あとは番組や並びですよね。選手の実力はさることながら、調子の良し悪しにも加えて、番組と並びもちゃんと見ておきたいです。僅差で勝ち負けが決まる可能性が高いので、そういう要素も影響大というか、車券推理する上で大事になるのではないかと思います。

ーー「僅差だからこそ番組と並びの影響大」ですか。騎手としてレースを生業にしていた勝浦さんの視点ですね。

勝浦 今の競輪って枠順はめちゃくちゃ大事じゃないですかね。「前々から攻めたい」というコメントもよく見ますし、そのために選手たちが『初手の位置』を重要に考えていることがわかります。枠順の良し悪しでレースの組み立てやすい、組み立てにくいが変わる気もしていて。競馬でも枠順はとても大事です。馬のタイプにもよるし、どの枠がいいとかは必ずしも断言できるものではないんですけど。ただ、重要は重要に違いない要素なので、少しそこに意識はありますね。

ーー勉強になります。

勝浦 でも好ましい枠に思えて『本当に良い枠なのかどうかは別』だったりもする。勝負事って何でもそうじゃないですか? 僕は麻雀が好きなので麻雀に例えちゃいますけど、配牌が良くても負ける可能性ってゼロじゃないですよね。良いと思っても自分よりも良い配牌の人と戦っている場合だってある。配牌が悪かったからこそ転がってくるチャンスもある。こういう部分を見極めたいですね。

ーー枠の良し悪しと選手の調子を掛け合わせて考えるということですね。

勝浦 でも読み切った気になって全然的中しないってこともあるでしょうね。競輪予想はそういう難しさはありますよ。そこが奥深くて面白いんですけどね。

実力拮抗するレースはライン構成、車番などを注視するべきと話す勝浦氏(photo by Kenji Onose)

ーーそれでもシリーズで気になる選手をひとり挙げるとしたら、やはりS級S班の選手になりますか?

勝浦 いえ、“気になる”という括りならば地元選手です。特に気になるのは高橋築選手かな。強いイメージがありますし、地元での奮起を期待したい選手です。鈴木竜士選手も今年はスタイルを変えながら頑張っています。東京の選手たちがどうシリーズを戦うのか、どう豪華メンバーを迎えるのか、ここは盛り上がると思いますよ。もう少し広く“地元地区”で捉えるなら、関東の結束力を示す場にもなるでしょうし、楽しみですね。

ーー地元勢の奮闘も楽しみです。

勝浦 あとは寛仁親王牌の結果が出ていない今の段階(取材日10月8日)で予測するのは難しいですが、賞金争いに影響があるタイミングですから、そこにも目が行きます。今年も熾烈な争いですよね。

ーー車券の買い方や戦術はどうでしょうか?

勝浦 それはあまり変わらないかもしれません。1着を獲る人を予想して2着、3着に別線がきそうな高配当が出そうなレースを狙い撃ちしたいです。番組をしっかり見て勝負レースを見つけたいですね。ライン決着が濃厚なレースではラインのワンツーを素直に予想して3着「全」とかもやってみたいですね。力が拮抗しているので混戦もありそうですし、場合によっては3着あたりにノーマークの選手が来ることなんてあるかもしれない。

ーー勝浦さんは本命重視的な考えはあまりしないのですか?

勝浦 そうですね。配当狙いの穴寄りの思考で買います。なので、混戦もありながらのハイレベルなシリーズになりそうですし、京王閣記念とても楽しみです。

ーー豪華シリーズを楽しみましょう。それでは最後に「元騎手から見る競輪選手」について教えていただき、インタビューを締めてもらってもよろしいでしょうか?

勝浦 すごい、の一言ですよ。騎手も全国各地でストイックな考えで勝負に挑んでいますけど、「己を鍛える」という点では明確に違うじゃないですか。開催に向けてどうやってシリーズにピークを持って行くかを考えて自分の体を仕上げるわけですから。ラインが分ける勝敗こそあると思うんですけど、まずは自分の体をしっかりと走れるところまで準備する必要がある。大変な商売です。僕は競輪選手を尊敬しています。

「競輪選手ってホントすごいよ」とビッグリスペクト!(photo by Kenji Onose)

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