2024/04/23(火) 17:00 0 5
東京スポーツの前田睦生記者がレースの中から”思わず唸った”選手をピックアップする「今週の競輪好プレー」。今週の好プレーは負けられない戦いで力を出し尽くした小原将通の好プレーをお届けします。前田記者直筆解説と一緒にぜひご覧ください。
4月22日の別府競輪2日目の3R、A級準決で地元の雄が奮戦していた。小原将通(36歳・大分=92期)は明るく人懐っこい笑顔が持ち味。闘争には向いていないように見えるのだが、実は高校時代から名前が知れていた逸材だった。
S級に上がって随所にその片鱗を見せたものの、ケガもあり、やや体重が増えていったこともあって今ではA級での戦いとなっている。柔らかな選手生活に落ち着きそうなところ、しかし、この日は魅せた。
同県の新星・甲斐俊祐(25歳・大分=121期)の番手回りというチャンス。ただし、このレースには、勝てる走りで新人ながらも番手勝負上等のファイター・都築巧(24歳・高知=123期)がいた。芸人・ザキヤマのギャグである「来る〜〜」を小原は真似するのが得意で、この時は「誰か、来る〜〜」と心の中で思っていたと推測される。
ヤツはやはり、来た。打鐘前に上昇していく甲斐の番手に、都築は内から飛び付いてきた。「キタ〜〜」。織田裕二の声が聞こえる。いったんはアンコにする形で都築を下げさせたものの、前受けしていたのは誰であろうタイガーマスク。篠原忍(41歳・愛知=91期)だ。勝利者インタビューではタイガーマスクに変身する男が、勝負どころをめがけてきた。
都築も前の並走を見ながら、チャンスを探る。残り1周の地点。小原は渾身の体当たりで篠原を消耗させる。審議になったプレーではあるものの、ギリギリの勝負。地元戦で見せた意地の走り…。
都築が追い上げてきて、篠原もまだ内にいる1センター。地元戦、後輩の甲斐の番手。「負けられない…」。今回の好プレー。しのぎ切って、力を出し尽くして、2着に続いた。明るく陽気な男が魅せた、気持ちひとつの好プレーに★3つ。
ゼェゼェと息も絶え絶えになっていたであろうレース後の小原の姿に、ただ拍手を送りたい。
すごいで賞=★★★☆☆(星3つ)