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中野浩一が描く “冠レース”「中野カップレース」と「久留米競輪場」の未来

2021/06/21(月) 12:00 0 7

久留米の魅力、そして中野カップレースへの思いを語ってくれた中野 浩一氏(撮影: 竹井俊晴)

久留米競輪場で26日から開催される「中野カップレース(GIII・最終日29日)」。久留米が生んだスーパースター・中野 浩一氏に、自身の名前が入る“冠レース”への思いについて聞いた。

ーー久留米という街の魅力について教えてください

 練習拠点だった伊豆と久留米については思い入れが強く、自分の原点ですね。久留米に帰ってくると「ああ、戻ってきたな」という感じがします。少しずつ街が変わり始めていて、新しい道が出来たりすると迷子になったりしたこともありましたけど(笑)。昔は「さんしゃ(医者、自転車、芸者)」の街と呼ばれていて、タイヤのブリヂストンの工場があったり、自転車にはなじみ深い街。食べ物も美味しいし、とても生活がしやすい街です。

ーー中野カップレースはどういう経緯で始まったのでしょうか

 自分が36歳で引退してすぐに「冠レースを」という話をいただきました。自分からやってくれって言ったわけじゃないですよ(笑)。施行者含めて全体の流れでそういう話になりました。当時、記念競走(現グレードレース)での冠レースが実現したのは自分だけだったので光栄でしたね。設立当初の思いとしては、「どんな選手でも“中野カップレース”で走りたいと思ってもらいたい」という気持ちでいっぱいでした。最初のうちは賞品も豪華で、副賞に車があった時代もありました(笑)。

ーー開催時期についてはいかがですか

 今は6月末で開催されていますが、昔は冬だったり夏だったり。本当はね、開始時期も固定した方がよくて、たとえば11月の競輪祭は、相撲の九州場所と同じ時期に設定されていて、冬場だし、フグは美味しいしで(笑)。日本に四季があるように、この季節にはこのレースみたいな。川崎競輪場の桜花賞は4月に、花月園競輪場(現在は廃止)の菊花賞は11月に、とかね。自分はそういう四季折々に合わせた番組の組み方を考えた方がいいと思っています。話はそれましたが、ファンのみなさんに6月末に中野カップレースがあるって思ってもらえたらと思います。このところ6月の後半ぐらいは台風が多くて心配だけれど、四日間良い天気で終わるといいな、といつも思っています。

ーー売上も気になりますね

 そうですね。競輪全体が低迷していた時期もあったなかで、中野カップレースは、幸い、記念のなかでは売上が良い方のレースです。これもファンのみなさんのおかげ。選手たちもそれにこたえるような走りを毎回見せてほしい。選手に対して結構厳しいこと言ってしまいますが、これもファンに喜んでもらうためと思っています。

ーー久留米競輪の基本構想検討委員会としてもご活動されてます

 久留米競輪場も開設から70年以上が経過しておりまして、老朽化への対応、継続的に収益を生み出す事業としての改善が必要不可欠になってきています。もちろん収益も大切なのですが、一番は施設の老朽化の問題。現状を踏まえながら、作り替えなきゃいけないという話をしています。耐震基準に満たしていない建物もあります。昔は8000人ぐらい入る競輪場だったけど、今は車券の販売方法も変わってきていて、規模に合ったコンパクトで安全なスタンドにしていかなくては、という話をしています。

ーー久留米競輪場は将来どんな競輪場に?

「どういう競輪場がお客さんに喜ばれるか」という視点から検討しています。まず臨場感ですね。迫力のあるレースが観戦できる(どの位置からでもレースが見やすい)というのが一番です。昔から提唱していますが、施設の造り方だけじゃなくて、映像の見せ方も重要になると思います。韓国の競輪場へ行くと、カメラがあっちにもこっちにもあって、様々なアングルから迫力ある映像を提供してくれています。見えちゃいけないところは見せちゃいけないですけどね(笑)。あとはなんといっても環境面です。ここは十分ケアしないといけない。清潔で、居心地の良さが求められてきます。お客さんに“また来ようかな”って思ってもらえる競輪場。久留米競輪場がそうなってくれることが私の願いです。

ーーもう久留米市長へは提言は終わってますか?

 そうですね。市長への提言は一通り終わっています。売上の問題もありますし、コロナ禍で先が見えづらく、話が思うように進んではいないのが現状ですね。競輪場施設の併用という話も挙がってきています。施設を集約・コンパクト化するとともに、スポーツ・レクリエーション施設として活用する計画もあります。トレーニング場所がなかなかない久留米の学生たちに、思う存分自転車の練習をしてもらえる場所になったらと思っています。久留米競輪場が地域の人たちに愛される競輪場であってほしい。

【第27回中野カップレース(GIII)】
開催時期:2021年6月26日(土)〜29日(火)
開催場:久留米競輪場

●中野 浩一(なかの・こういち)
高校卒業後、1975年にプロデビュー。無傷の18戦無敗を記録。「九州のハヤブサ」の異名をとり、77年のサンクリストバル世界選手権プロ・スクラッチ(現在のスプリント)で日本人選手で初めて優勝。その後、前人未到の10連覇を達成。80年には日本のプロスポーツ選手として初めて年間獲得賞金が1億円を突破。「世界のナカノ」「ミスター競輪」とも呼ばれ、92年の引退後は競輪をはじめ自転車競技の解説、スポーツコメンテーターとして活躍。2006年4月紫綬褒章を受章。日本自転車振興会顧問。1236走中666勝、2着221回、3着101回(4着以下はわずか248回で、うち9着は4回のみ)。通算優勝回数168回。

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