閉じる

【競輪祭】平原康多「SSだから強いとは思わない、強い選手になりたい」

2023/11/26(日) 22:45 0 29

小倉競輪場のナイター競輪「第65回朝日新聞社杯競輪祭(GI)」は26日、最終日を開催。平原康多は10年間守り続けてきた「S級S班」の座から陥落が決まった。これまでの平原の言葉とともに、最終日(落車棄権後)レース後に聞いた話をお届けする。(アオケイ・八角記者)

「この状況を乗り越えて、また一から頑張ります」と話した平原康多

 競輪祭4日目、平原は二次予選A(11R)に出走して6着、準決勝進出を逃した。レース直後の第一声は「よえー」。それからしばらくして、翌日5日目の番組を確認すると「怪我を克服できなかった一年。(陥落に)落ち込むタイプじゃないし、自分が弱いだけ。この状況を乗り越えて、また一から頑張ります」と淡々と話した。

 度重なる落車と怪我で、平原にとっても選手人生の中で最大の壁に苦しんだと言っても過言でないシーズン。満身創痍、それでも「怪我との戦いは選手でいる以上はあること。そんな中でも仲間には迷惑をかけられないので、自分も最低限のレースはしようと思っている」と己を鼓舞して走り続けてきた。

 "平原康多のいないグランプリ"を考えると寂しさが募る。S級S班陥落にファンはもちろん記者や関係者、多くの人が落胆したことだろう。

 しかし、平原本人は違う。「S級S班にこだわりがないので、何とも思わない。別にSSだから強いとは思わない」という平原の言葉を思い出した。以下は地元オールスター(8月・西武園)の直前インタビューの話である。

ーーS級S班の座をキープするためにも、残り3つのGIでの優勝はもちろんですが、賞金ランキングといったあたりは意識されますか。

平原:何もないです。S級S班にこだわりがないので、何とも思わないですね。別にSSだから強いとは思わないし。以前からずっとそういう考えですよ。執着はないですね、何がなんでもSSにしがみつきたいとかっていうのはない。「強い選手になりたい」っていうのはありますけど、「SSだから強い」とは僕は思っていないので。そういう風に周りには見られがちですけど、そういう風には思っていないので、競輪選手のことを。

ーー平原選手は探究心が強い印象があります。平原選手が考える「強さ」とは何でしょうか。定義みたいなものってありますか。

平原:競輪選手としての強さですか?強さか…。色んな強い選手がいると思うし、一言では言い表すことができないですよね。ワッキー(脇本雄太)とかで言えば、「速さ=強さ」みたいな状況になっているじゃないですか。

 それでワッキーは勝てているから、結局、それが正解みたいな部分もあるし。色んな強さがあって、それこそ「怪我をしても何度でも強くなって、這い上がってくる人の強さ」っていうのも色々な選手や先輩方を見て感じてきましたし。

 だから、色んな強さがあるので一概には言えないですけど、自分が目指しているところでいえば「全てを兼ね備えること」なのかなと。それが本当に自分の理想としている競輪選手なんだと思う。

 速さもあれば、巧さもあったり。さっき言った精神的、肉体的な部分の強さもありますし、それらを総合して兼ね備えているっていうのが「強さ」なのかなと思います。

ーーご自身の能力をグラフ化してみたとき、一番足りていないと思うところはどこでしょうか。

平原:全部、足りていないですよ。そういう風に思っていられるうちは「もっと強くなりたい」という気持ちを持って、まだまだ選手をやれるのかなと思いますね。

ーーあくまで自分自身が納得いく「総合的な強さを持つ」選手を目指して、ということですね。

平原:そうですね。結局、やっぱりバイオリズムとかもあると思うし、色々とそういう良い悪いもあると思うので。そういう波があってS級S班だったり、A級1班だったり、色んな選手がそういう良い悪い状況を繰り返していると思う。だからこそ、別に絶対的な力があれば、ずっとそこのランクに勝手にいるだろうし。そこに居られないってことは自分に力がないだけ、っていう単純な感じで考えています。どんなレースでも手を抜いて走ることはしないし、その姿勢、積み重ねが力になると思っています。

 平原自身、このS級S班として君臨した10年間も少しでも「強くなりたい」その一心で歩を進めてきた。また、吉田拓矢眞杉匠森田優弥ら後輩たちにも「強いものに1対1では勝てないから、みんなで力を合わせてっていうのがラインで、そのように戦えるのが本当に理想の競輪」と伝えてきた。その教えを後輩たちは体現し、関東地区の足並みは確実に揃い始めた。

 来年は平原に変わって新たにS級S班に君臨する眞杉を中心に、関東地区は新時代を迎える。「一人でもSSが出てくれて良かった。眞杉自身は不安が多いみたいで、よく話を聞いてくるけど自分が分かる範囲で伝えていくつもりです」。そう話した平原にとっても、関東地区にとっても、2024年は新たな幕開けとなる。

 最終日の平原は今年5度目となる落車棄権に終わった。医務室から出てきた平原は肩を押さえて左脚を引きずり、顔をしかめて「最悪の一年(苦笑)。続くときは何でこんなに続くんだろうね。まずはしっかり治して、また来年頑張ります」と検車場を後にした。

 その後の決勝は、眞杉がオールスター以来2度目のGI優勝を飾ってグランプリに弾みを付けた。

 終わりは始まり。終わりがあることは何かの始まりでもある。平原の復帰、そして再来年のS級S班への返り咲きを待ちたい。

閉じる

新着競輪ニュース

ニュースランキング

ニュース&コラムを探す

検索する
投票