2023/11/05(日) 10:00 0 7
東京スポーツの前田睦生記者がレースの中から”思わず唸った”選手をピックアップする「今週の競輪好プレー」。今週の好プレーは佐藤礼文の心にジーンとくる好プレーをお届けします。前田記者直筆解説と一緒にぜひご覧ください。
玉野競輪場で代替開催となった「防府競輪開設74周年記念 周防国府杯争奪戦(GIII)」の2日目、敗者戦ではあるが、心にジーンとくるレースがあった。
11月3日、2日目3R選抜の佐藤礼文(32歳・茨城=115期)の走りだ。多くのマーク選手にとっては“普通”のレベルだろうが、成長というキーワードを伴う好プレーだった。
打鐘から先行した笠松将太(31歳・埼玉=100期)の番手回り。2車の構成なので、仕事は丁寧に、が求められる。8番手からまくってきた近藤隆司(39歳・千葉=90期)のスピードがいい。
が、近藤も佐藤の顔が見えたのか、3角辺りでやや鈍る。佐藤は体をじわ〜っと当てて止める。戻りが遅いというリスクもあったかもしれないが、3番手以降の様子も把握できていたのだろう。前の笠松との距離感もつかみ、差し切ってのワンツーだった。
佐藤、いや、あやふみ、いやレイブンと書いた方がいいか。茨城のマークの血脈に連なり、芦澤大輔(41歳・茨城=90期)の後継者と期待される鬼の一族だ。芦澤の前を回った函館があり、その後、芦澤が納得できる走りを続けられず、前橋では後ろ回り。
先だっての取手ではジカ競りに行く武田豊樹(49歳・茨城=88期)ー芦澤の後ろを固めることになった。芦澤にしてもそうだが、「自分が競る」という気持ちを持つ中で、この位置になった。悔しいはず。しかし、この格を上げていけるかが、マーク屋の人生だ。
この玉野の走りで、レイブンが目指している「自力選手に信頼される選手」への道は一歩前進だ。★は3つ。もっと高いレベルでもやれる選手。だが、今いきなりを求めず、一歩ずつでも前に進むことが大事な時期だ。
いつか芦澤が、武田が「礼文が前」と口にする日が来る。彼らもそこを譲らないための闘いを続けるわけだが、レイブンの可能性、気持ち、根性は伝わっている。ひとつのレースに込められた長い闘いを好プレーとしたい。
すごいで賞=★★★☆☆(星3つ)