野原雅也選手の突然の訃報に、みんなショックを受けているが、渡辺十夢も目を潤ませていた。

「後輩だけど雅也に対しては尊敬していた。近畿の厳しい競輪に対して、誰よりも真摯に向き合っていたからね。普段は温厚な性格だったけど、レースに入れば、気迫を全面に出してガッツがあった。ワッキーの前で頑張り、ワッキーの後ろで結果を出す事を夢見ていたんじゃないかな。俺は、厳しい競輪から脱落して逃げ出してしまったけどね…」

　渡辺十夢は謙遜するが、激しい競りを売りにしていた。松本整さんが引退して、村上兄弟による、近畿の競輪が始まる過渡期が、一番の全盛時代だったかもしれない。

「これは市田さんが、よく言っていた。記念で結果を残してからでないと、特別競輪では、自分の位置がない。結局、何にもやれず、俺は、生まれたての子鹿で終わってしまった(苦笑)」

　名バイブレーヤーがいるから競輪が成り立っているし、もっともっと評価されて良いマーク屋だ。(町田洋一)