2022/10/17(月) 10:15 0 4
千葉の「TIPSTAR DOME CHIBA」で17日から「PIST6 Championship」のサードクォーター ラウンド6が開催される。2022年9月24日〜29日にかけてアメリカ・ロサンゼルスで開催された『UCI 2022マスターズ世界選手権トラック』で見事、世界一となり凱旋となった伊藤信(一次予選D・4Rに出走予定)に話を聞いた。(アオケイ・八角記者)
ーーおかえりなさい!そして、マスターズ世界選手権・優勝おめでとうございます!
ありがとうございます。こんなにも喜んでいただけるとは、嬉しいですね。
ーー振り返っていかがですか?
いや〜、市本さんが初日に出番で。レースを見て僕も熱くなったというか。体にカーッと熱が入って、その日はあまり眠ることができないくらいの「いいモノが見られた」という高揚感が凄かったです。翌日は自分の出番なのに(笑)。結果的に出場した日本人選手3人(※)がみんな優勝することができたし、いい経験になりましたね。
※男子スプリント:伊藤信(35〜39歳カテゴリー)、市本隆司(50〜54歳カテゴリー)、 案浦攻(55〜59歳カテゴリー)で優勝。案浦は元競輪選手で、07年に引退後はアメリカへ渡った。
ーーマスターズ世界選手権に挑戦して良かったですか?
凄くいい体験をすることができましたね。帰ってきてからも、色んな方々に喜んでいただけて、本当に嬉しかったです。
ーー来年はマンチェスター開催、連覇を狙っていますか?
分からないです。でも、僕的にはあっさり優勝してしまった感じがあるので、また“違う山”を登りたいな、と。市本さんは行く気満々ですよ!
ーー伊藤選手自身、PIST6に参加して考え方や環境など、何か自分の中で変わったことはありますか?
元々、競技志向の考えも高いほうでしたが、より自転車ファンのことを考えることが多くなったかな、と。自転車が好きな人に、もっとトラック競技やPIST6のことを知ってもらいたい気持ちがある。日本でもロードレースが好きな人は増えてきているけど、なかなかトラック競技はファンの裾野が広がらないので…。日本はトラック競技の短距離種目においても強いんですけどね…。
ーー乗り物としても身近である自転車。スポーツとして、自転車が秘める可能性はどう感じていますか?
僕自身、自転車を始めたのが大学3年生からで17、8年前くらい。その頃に比べたら、競技用の自転車を見る機会って増えたと思うんですよ。まだファンライド(サイクリング等)の人が多いので、もっと競技志向の人が増えたり、“観るスポーツ”としても受け入れられてほしいですよね。
ーーメジャースポーツに比べ、自転車競技が目に留まる機会は少ないですが、PIST6をキッカケに広まってほしいですよね。
このTIPSTAR DOMEは凄く見やすいと思う。自分が走ってきた色々なトラックのなかでも、ここの雰囲気は独特で他にはない魅力があるバンク。ちょっとこうね、クラブではないけど、ショーアップされたような見やすさがありますよ。僕も競技を引退したら観る側として楽しみたいと思っていて、いつになるか分からんけど(笑)。
それこそ、伊豆にあるベロドロームの1コーナーにも「自転車はメジャースポーツだ」という広告が掲げられているんですよ。自転車競技を盛り上げたい、メジャーにしたいという気持ちは選手も関係者も一緒ですよね。
ーーPIST6を客観的にご覧になっていかがですか?
トラック競技は淡々と進行していくのに対して、PIST6にはレースの合間にダンスショーやパフォーマンスがある。カタチとしても凄く良くできていると思いますし、YouTubeの配信を見ていてもエンターテインメント性は抜群だと思うので、もっと認知されてほしいです。
ーー大学2年次にトレーナーとして入部した自転車競技部、3年次には選手へ。そのときは、このような自転車人生を描いていましたか?
マスターズ世界選手権で優勝することができて、想像もしていなかった光景を見ることができた。1年前ですら、想像もできなかったことですから。本当に驚きですよね。
マスターズには何年も前から、いずれは参戦したいとは考えていた。PIST6に参加して、この1年でタイムも縮まったし、40歳を待つよりかは行くなら今かな、と思って参戦しました。
ーー海外の選手たちとのレースや交流を通じて、新たな発見はありましたか?
元選手の人や、日本で国際競輪が開始されたときぐらいに参加していた元選手がいて。みんなが声をかけてくれたし、世界の中の競輪みたいなものも見られた。自分が出場しなくても観客として行っても面白いと思います。
会場でも競輪やPIST6のことを実況の人がアナウンスしてくれていたんですよ。
行ってみて、参加している人たちに感動しましたね。ある意味、気持ちや情熱があれば一生、競技はできると思います。クラス別の参加選手には74、5歳の人もおるんですよ。70オーバーのおじいちゃんが400万の自転車に乗って走っていたり、下りの階段で「手を貸しましょうか?」って声をかけたおじいちゃんもレースになれば力強く走っているし(笑)。
今、パリで開催中のエリートの世界選手権がレベルはもちろん上。でも、マスターズはある意味、世界一自転車への熱量が高い大会かもしれない。情熱の意味では世界一ですよ。そういった空気を肌で感じることもできたし、本当に行って良かった。
ーー先ほど「“違う山”を登りたい」とおっしゃっていましたが、今後、挑戦したいことは?
今年は日本選手権で海外選手とスプリント種目で対戦もできた。自分は、そのような走っている中で高揚感や自分の中でもドキドキするようなモノを求めている。どうせやるなら強い選手と戦っていきたいな、と。
正直、優勝したときに「やったー!」という感じはあまりなかった。自分でも意外でしたね。同時に「まだ、ここじゃないな。できるなら、もっと高いレベルを目指したいな」と思ったんです。表彰式で国家が流れたときはジーンとくるものはありましたけど。それよりも、市本さんと案浦さんが優勝して、ふたりが表彰台の真ん中に立っている姿を見たときのほうが嬉しかった。
ーーさて、タイムトライアル(10秒323)に関してはどうでしょう?
10秒1台が出ればいいかなと思ったけど…。(マスターズの会場だった)ロサンゼルスのバンクは滑りやすく重たく、ガタがあって。2回ドリフトして怖かった(苦笑)。滑りながら走るようなバンクだったので、その感覚がまだ残っているのも要因かもしれない。うーん、走っていても体に力強さがなかったかな…。
さすがに、年がら年中120%での状態ではいられない(苦笑)。今回は駆け方も失敗したけど、一旦、心身を緩めているところでもあったし、ここに向けて追い込んだトレーニングをしていないから仕方ないですね。でも、優勝の報告もしたかったですし、欠場は考えていなかった。まだ負けたワケではないし、本番はこれからですから!
ーー最後に意気込みをお願いします!
万全とはいかないが、勝負はできると思います。とりあえず今の精一杯を、ですかね。目の前の一戦一戦、今の自分の全力を出し切れるように頑張ります。
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