2022/10/14(金) 18:00 0 7
2022年10月2日、TIPSTAR DOME CHIBAで開催されている高速自転車バトル「PIST6 Championship」は誕生から1周年を迎えた。自転車競技種目“ケイリン”に準ずる形式で行われるレースは「競輪」とは別視点の見どころがあり、出場する競輪選手たちは級班やラインという括りを飛び越え、個と個のスピードバトルを繰り広げている。また250走路を照らす光のレーザー演出やPIST6 DANCERSによるダンスパフォーマンスなど、この1年、さまざまな“新しさ”を発信したPIST6。今回は2年目に突入した節目として、PIST6開幕からの1年を記録とともに振り返る。(netkeirin編集部)
2021年10月2日、千葉市TIPSTAR DOME CHIBAで「PIST6」が産声をあげた。開幕シリーズ「JAPAN HEROES ラウンド1」のオープニングレースでは地元千葉の支部長・中村浩士が勝利を飾り、「たくさんの人への感謝でいっぱい。無事開幕できたことがうれしい」とコメントした。日本発祥の競技“ケイリン”を全世界に届けるべく、PIST6の挑戦が始まった。
1年を振り返ると、複数回優勝し“強い選手が強い”というのがPIST6の特徴とも言えるだろう。中でも、前人未到の4連覇を達成した伊藤信を“絶対王者”と見る人も多いはずだ。伊藤は「PIST6 Championship ZERO」から台頭し、以降圧倒的な強さを見せている。「競技が大好きなので、プロとしてケイリンを走れると知ったときはこんなええ話ないやろ! とすごく楽しみだった」と走れる喜びを語っていた。伊藤自身の脚質と競技性がマッチし、もはや向かうところ敵なし。伊藤は各開催で優勝を目指す一方で「早く9秒台のタイムを出したい」とさらなるスピードを求めている。
伊藤に続いて3度優勝しているのが雨谷一樹と神山拓弥、根田空史の3人。雨谷は開幕シリーズ「JAPAN HEROES ラウンド1」で完全優勝を果たし、絶大なインパクトと共にPIST6の歴史に名を刻んだ。雨谷は7回出場のうち6回表彰台に上がるなど、確固たる地位を築き上げている。ナショナルチームで培った経験とスピード、250走路で爆走する雨谷はひときわ光彩を放っていた。
一方、その雨谷を下しての優勝もあるのが神山。レースでは「楽しんだもの勝ち!」と断言し、タイムではなく気持ちでレースを走っていると語る。勝利者インタビューでは栃木の後輩・雨谷をイジるなど観客を笑わせることにも余念がない。実際に神山は「レースとパフォーマンスの両方で魅了できる選手でありたい」と話している。入場時には独自のパフォーマンスで会場を湧かせ、いつでもフルスロットルな姿でPIST6を盛り上げている。
また、千葉のエース・根田は2022年1発目の正月開催「PIST6 Championship ZERO ラウンド1」で初優勝を決め、地元勢初の栄冠を勝ち取った。開幕準備から関わり、PIST6にかける思いもひとしおだろう。「まだまだ始まったばかり。もっともっと盛り上げていきたい」と抱負を語っている。
そのほか、2度優勝している選手は志田龍星、堀江省吾、藤井昭吾、山田義彦、永澤剛、曽我圭佑、木村皆斗、中島詩音、徳田匠の9名。この選手たちは表彰台常連につき、完全に強豪選手としての印象が根付いているだろう。また優勝は1回だが、中川誠一郎も印象深い。「世界を知る男はどれほど強いか」をたった2度の参戦で証明してしまった。
この1年の戦いの記録を振り返ると“参加すれば決勝進出”といった選手たちが明らかになってきたところだろう。
PIST6の『級班問わずの開催形態』は、自然と若武者たちにスポットライトを当てている。中でも中島詩音と木村皆斗は完全に頭角を表したと言えるだろう。S級A級混合戦での優勝はまだないが、A級限定戦を2連続で完全優勝するなど自転車競技経験や潜在能力の高さを示している中島。今後の活躍は間違いなく、PIST6を牽引する若手の筆頭格と言えるだろう。
一方、木村はセカンドクォーターの「ラウンド1」と「ファイナルラウンド」で優勝し、シリーズを牛耳ったと言っても過言ではない。木村は最年少優勝記録を誇り、優勝を逃したレースでも存在感を示していた。インタビューでは勝気なコメントも見て取れ「S級もA級も関係ない」と言い切っている。「自分がどこまでやれるのかを試せる面白い場」と語っており、PIST6の舞台を“実力試しの場”とも考えているようだ。中島や木村のような将来有望な若手選手に出会えるのもPIST6の大きな魅力のひとつだろう。
優勝回数 | 選手名 |
---|---|
4回 | 伊藤信 |
3回 | 雨谷一樹、神山拓弥、根田空史 |
2回 | 志田龍星、堀江省吾、藤井昭吾、山田義彦、永澤剛、曽我圭佑、木村皆斗、中島詩音、徳田匠 |
PIST6は開催前日に200mのタイムトライアルを行う。そのタイムに基づいて番組が組まれ、速いタイムを出した選手はより有利に勝ち上がりへ挑むことができる。タイムトライアルの結果こそ、シンプルに選手の強さを表す指標のひとつだろう。
この1年、9秒台のタイムが記録されることはなかった。しかし、そのスプリント力を持ってナショナルチームで長く活躍していた河端朋之がサードクォーターラウンド2で10秒009を打ち出し、9秒台に迫った。この記録がこれまでの歴代最高記録となっている。
また、伊藤信も10秒013という記録を持っており、9秒台への挑戦を続けている。伊藤本人も「ハロンに懸けてます」と意気込んでおり、10秒から9秒の間にある壁をぶち壊そうと躍起になっている。伊藤は「まだ選手たちは走り方を模索している段階だし、これからタイムも良くなっていくと思う」と見解を示し、「自分自身、もっと試したいことがある」とタイムへのこだわりを見せる。
河端か伊藤か、それともそれ以外の選手か。2年目は「誰が最初に9秒台を出すのか?」といったことにも注目したい。
順位 | 選手名 | タイムトライアル記録(秒) |
---|---|---|
1位 | 河端朋之 | 10.009 |
2位 | 伊藤信 | 10.013 |
3位 | 雨谷一樹 | 10.024 |
4位 | 中川誠一郎 | 10.028 |
5位 | 山田義彦 | 10.065 |
5位 | 橋本壮史 | 10.065 |
7位 | 河端朋之 | 10.068 |
8位 | 雨谷一樹 | 10.083 |
9位 | 伊藤信 | 10.095 |
10位 | 雨谷一樹 | 10.103 |
6車立てのレースであり、脚力(タイム)で判断しやすいPIST6は“堅い”レースが多いのも事実。人気を背負った選手が確定板を逃すシーンはなかなか見られない。しかし、1年の記録を振り返ると“荒れる”ポイントが浮かび上がる。そのポイントは「順位決定戦」だ。
開幕からの1年における最高配当額は3月8日に開催された「ZERO スペシャルマッチ1 順位決定戦 C」の240,450円(3連単)。オッズでの人気は①丹波孝佑>②太田剛司>④野木義規であったが、終わってみると94番人気の③荒木伸哉>②太田剛司>⑤阿部宏之で2404.5倍の大荒れとなった。
また、ランキング上位8位までは10万円以上の高配当で順位決定戦の割合が極めて多い。PIST6で高配当を狙う場合は順位決定戦に的を絞って考えるといいかもしれない。
順位 | 開催名 | 配当 |
---|---|---|
1位 | ZERO スペシャルマッチ1 順位決定戦 C | 240,450円 |
2位 | ZERO ラウンド6 順位決定戦 D | 164,550円 |
3位 | ファーストクォーター ラウンド4 順位決定戦 E | 162,750円 |
4位 | ファーストクォーター ラウンド5 順位決定戦 D | 148,910円 |
5位 | サードクォーター ラウンド1 順位決定戦 E | 134,020円 |
5位 | ファーストクォーター ファイナルラウンド 1次予選 B | 130,980円 |
7位 | JAPAN HEROES ラウンド6 順位決定戦 A | 120,870円 |
8位 | ファーストクォーター ラウンド3 順位決定戦 E | 119,400円 |
9位 | JAPAN HEROES スペシャルマッチ1 順位決定戦 C | 91,230円 |
10位 | サードクォーター ラウンド2 1次予選 A | 90,240円 |
PIST6の開幕から1年。選手たちの進化により、レースレベルは上昇し続けている。また数々の名勝負が刻まれている中、「脚に普段入らない刺激が入った」、「コーナリング技術が上がり競輪のカントを緩やかに感じる」、「ダッシュ力がついた」など、競輪を走る上での好影響を口にする選手も多い。
そして2022年9月末、アメリカはロサンゼルスで開催となった「UCI 2022マスターズ世界選手権トラック」にPIST6で活躍する伊藤信、市本隆司が参戦し、両選手とも見事世界の頂点に輝いた。
千葉市発のスピードバトルは世界への挑戦を推進し、日本の競技レベルをさらに押し上げていくだろう。若手もベテランも関係ない。級班入り乱れての“ガチバトル”が生み出すドラマを2年目も期待し続けたい。(netkeirin編集部)