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【坂本勉のPIST6徹底回顧】並びから生じる勝負の綾…永澤剛と隅田洋介の決勝バトルに見た“図り合い”/レジェンドが見た疾風迅雷 #15

2022/09/27(火) 18:00 0 4

現役時代、ロサンゼルス五輪で自転車トラック競技日本人初となるメダルを獲得し、競輪ではKEIRINグランプリオールスター競輪といったビッグレースを制したレジェンド・坂本勉氏。“競輪”と“ケイリン”を知り尽くした坂本氏が、新ケイリン「PIST6」のレースを振り返ります。(月2回・不定期連載)

 netkeirinをご覧のみなさん、坂本勉です。今回は9月24日・25日に行われた「PIST6 Championship 2022-23」サードクォーターラウンド4の決勝レースを回顧していきたいと思います。

【サードクォーター PIST6 サードクォーターラウンド4 決勝レース動画】


PIST6効果! 市本隆司がマスターズ世界選手権で初出場初優勝

 この決勝レースの前に嬉しい知らせが届きました。PIST6にも幾度となく参戦している市本隆司が25日、ロサンゼルスで行われた自転車競技のマスターズ世界選手権のスプリント50〜54歳カテゴリに出場し、初出場ながら見事初優勝を果たしました。

自転車競技マスターズ世界選手権スプリントの50〜54歳カテゴリーを制覇した市本隆司

 これはPIST6効果と言っていいでしょう。市本はPIST6のタイムトライアルでも年齢を感じさせない時計を記録していましたし、若手に混じりながら幾度となく決勝にも進出しています。

 普段はあまり走ることのない250バンクを経験できただけでなく、そこで自分の特性を見出せたことが大きいと思います。市本だけでなく、他の選手にも「競輪とは違った新たな刺激」を求めて、どんどん参戦してもらいたいですね。

過去大会の優勝者の永澤剛と鈴木浩太、隅田洋介と強者揃いの決勝

 サードクォーターラウンド4の決勝ですが、市本のような歴戦の雄こそいなかったものの、過去ラウンドの優勝者である永澤剛鈴木浩太が勝ち上がりました。また過去の開催では、決勝進出するも惜しいレースが続いている隅田洋介も3連勝でこの舞台に上がってきました。

 選手としての実力的には記念競輪で結果を出している永澤や隅田が格上の印象がありました。ただ注目せざるを得なかったのが青森所属で「八戸自転車競技場」で練習していることもあり、よく練習風景を見ている永澤です。

セカンドクォーターラウンド6で優勝している永澤剛が急遽出場

 当初、青森からの出場メンバーには嵯峨昇喜郎の名前がありました。嵯峨は以前からPIST6向きだと思っていましたが、残念ながら今ラウンドは病気欠場。その代わりに永澤が出場となりました。永澤の出場が決まった時には「優勝してから臨む今回はどんなレースを見せてくれるのか」と楽しみにしていました。

セカンドクォーター ラウンド6の振り返り」でも書かせてもらったように競輪では追込選手の永澤ですがPIST6への参戦を意識してのことか、普段の練習では先行選手と同じメニューを熱心に取り組んでいます。その走りを見ていると「競輪でも長い距離を踏めるのではないか?」と思わせるような走りをしています。

 実際、先日行われた前橋競輪「スポーツニッポン杯」で永澤は捲りを繰り出して勝利しています。今ラウンドでも先行を見せていただけでなく、2次予選では誰も仕掛けて来ないと見るや残り2周半からの先行を繰り出しています。最後は番手にいた鈴木に差されたものの、あのレースで長めに踏めると確信できたのではないかと思います。

 一方、隅田も1次予選から早めに踏み出しての3連勝。準決勝では永澤との対戦になったものの、並び的にもすぐ後ろでレースを進めていた永澤を引きつれるかのように捲りを打っていき、最後は永澤の追い込みを僅差で凌ぎ切ります。

 ただ、この準決勝に決勝の勝敗を分けたポイントがあると思います。永澤が隅田の脚を図れたのは大きかったでしょう。しかも決勝も永澤は2番手に入った隅田の後ろとなる3番手からのレースとなりましたし「並びから生じた勝負の綾」に繋がったのかもしれません。

タイムトライアル1位の齋木にとって厳しいレース

 スタートの並びはインコースから②田川翔琉隅田洋介永澤剛鈴木浩太志智俊夫齋木翔多となりました。レースが動き出したのは残り3周半。最後方にいた齋木が「PEDAL ON」の前に前を行く田川に並び駆け、5番手の志智もその動きに併せて後を追っていきます。

レースが動き出した残り3周半。最後方から仕掛けていく齋木翔多(1番車・ホワイト)、志智俊夫(6番車・グリーン)も後を追った

 過去ラウンドでは決勝2着となったこともあり、今ラウンドもタイムトライアル1位の齋木ですが、あのポジションでは勝負にならないのは分かっていたはず。当然の仕掛けとも言えましたが、結果として長く脚を使わされてしまい、スピードが上がっていく中で消耗し、残り1周で失速してしまいました。

 後方にいた2人が上がっていったことで隅田と永澤は5番手と6番手になりました。この時点では脚力のある2人からすれば余裕もあったはずですし、最後方から齋木が上がっていくのは織り込み済みでレースを進めていたのではと思います。

残り1周半に見た「並びから生じた勝負の“綾”」

 残り1周半となった時、前にいた隅田を交わした永澤が捲りにいった鈴木の後ろにつけていきます。先ほど書いた「並びから生じた勝負の綾」がここにあります。

捲りにいった鈴木浩太(4番車・ブルー)の後ろにつけた永澤剛(5番車・イエロー)

 準決勝で隅田の後ろを走っていた永澤ですが、決勝では早めに隅田が捲って行くのならば、今回は差し切れると思っていたかもしれません。ただ、隅田もまた準決勝を一緒に走っていたことで永澤の脚を図っていただけにギリギリまで踏み出すのを遅らせて良いと考えたのではないかと思います。

 ただ、この選択肢を相手より先に決められるのは後方にいた永澤です。「先に自分が動くべき」とした判断力と機転の良さ。そして2次予選のように「長めに踏んでも隅田に交わされない」という自信もあったのでしょう。残り1周過ぎで鈴木に並び直線の手前で先頭に躍り出ます。

 仕掛けが遅れてしまった隅田ですが、やはり脚力は光るものがあります。鈴木と永澤の外を回っていながら直線勝負には持ち込んできました。最後は永澤との際どい勝負となりましたが、先に抜け出していた永澤が「相手よりも先に選択できた分の差」で勝ち切りました。

際どい勝負となった永澤剛(5番車・イエロー)と隅田洋介(3番車・レッド)のゴールシーン

隅田は思い切ったレースをしてもよかった

 隅田は永澤にマークされる位置取りとなりましたが、それでも残り1周半で鈴木が動き出していった時に、その後ろを追走していけたはずです。後ろにいた永澤に差されるかもしれないという怖さは当然あるでしょうが、それでも自分の走りを信じて思い切ったレースを選択するべきでした。それができず僅差の負けとなってしまっただけに、隅田にとってはこれまでの決勝よりもさらに悔いが残るレースになったのではないでしょうか。

 シリーズを通して永澤は好運にも恵まれています。決勝含めた4走で5番車と6番車にならなかったのはラッキーでした。しかも決勝前の準決勝で最大のライバル隅田の後ろで戦えたのも追い風だと言えます。その運をしっかりと結果で証明するのもまた、永澤の実力であり、日ごろの練習の賜物だと思います。

 永澤は初参加となったセカンドクォーター ラウンド6に続く連続優勝。そして連対率は100%となっています。次回の開催でも積極的な走りを見せてくれると思いますが、その永澤の快進撃を誰が止めるかも楽しみです。

坂本勉が選ぶ! 今シリーズのMVP

 これはやはり永澤でしょうね。永澤自身がインタビューでも話していたように普段から口下手で内気な性格をしています。しかし競輪では打って変わったかのように厳しく、マーカーとしての仕事に徹している選手です。ただ、今回のPIST6や前橋での走りを見る限り、競輪でも捲りは出せるはずですし、何だったら先行もできるのではとさえ思っています。

 近々練習場で永澤と会う機会があると思います。その時は改めて「PIST6だけでなく、競輪でも先行してみたらどうだ?」とハッパをかけ直しておきます(笑)。


【netkeirinからPIST6のレースに投票しよう!】

 netkeirinではPIST6の出場選手の成績や内容充実の出走表を見ながら、ラクラク買い目を作成することができます。作った買い目はTIPSTARの車券購入ページに送ることができるので、そのまま車券投票が可能です。

 また、出走表の下部にはPIST6攻略法として「予想の基本」を掲載していますので「予想の仕方がわからない」といった初心者の方にも安心です。PIST6の開催日にはレース映像のライブ中継もありますので、ド迫力のスピードバトルを観戦しながら楽しくベッティングしてみてはいかがでしょう。「PIST6 Championship 2022-23」もいよいよセカンドクォーターに突入! すでに楽しんでいる人もこれからの人も目指せ的中!


●坂本勉(さかもと・つとむ)
1984年、ロサンゼルス五輪に出場し銅メダル獲得。日本の自転車競技史に初めてメダルをもたらし、“ロサンゼルスの超特急”の異名を持つ。2011年に競輪選手を引退したのち、自転車競技日本代表コーチに就任し、2014年にはヘッドコーチとして指導にあたる。また2021年東京五輪の男子ケイリン種目ではペーサーも務めた。自転車トラック競技の歴史を切り開いた第一人者であり、実績・キャリアともに唯一無二の存在。また、競輪選手としても華麗なる実績を誇り、1990年にKEIRINグランプリ、1989年と1991年にはオールスター競輪の覇者となった。現在は競輪、自転車競技、PIST6と多方面で解説者として活躍中。展開予想と買い目指南は非常にわかりやすく、初心者から玄人まで楽しめる丁寧な解説に定評がある。

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