2024/09/10(火) 18:00
日光街道で江戸を出て最初の宿場町だった千住は、幕末には1万人が住む江戸近郊の最大の宿場だったという。その名残が今も残り、商店街や銭湯、個性ある居酒屋などが並んでおり、「もっとも活気あふれる下町」とも言われている。暑い日が続き、ついついだらりと過ごしてしまうことも多い今日この頃。下町のパワーをもらいに行ってみようかと、シェアサイクルで千住めぐりを楽しんでみることにした。
降り立ったのは、北千住駅。JR、東京メトロ、東武伊勢崎線、つくばエクスプレスの計6路線が乗り入れる主要駅。これまで乗り換えで使ったことは幾度となくあったが、駅を降りたのは初めてだった。
北千住駅の周りには、複数のシェアサイクルステーションがある。この日は土地勘もないため、1回ごとにステーションを探し返却するのではなく、12時間以内であれば一定料金で使えるプランを使い、散策をすることにした。
駅を降りると、駅周辺は多くの人々が行き交い、営業中の店舗が軒を並べるアーケード街が伸び、またそこから別の商店街が交わり、伸び、活気があふれている。これほど栄えている商店街が現存しているとは。シャッター街となった商店街を多く見てきた身としては、衝撃的な光景だった。
フル充電された自転車があるステーションをアプリで確認し、自転車を1台選ぶ。この日使ったのは、ごく一般的なシティサイクル型の電動アシストだ。実用的ではあるが、アシストを機能させれば、軽くよく走る。
まずは宿場町通り商店街の「千住街の駅」いう観光拠点で「大千住マップ」をゲット。手描き風に描かれた大型のマップには、さまざまな情報が書き込まれており、眺めているだけで楽しい!
とりあえずは、宿場街通り商店街が伸びる旧日光街道を南下してみることにした。駅前から西に伸びていたアーケード街との交差点を越えると、千住本町商店街へ差し掛かる。こちらの商店街も活気があり、人や自転車がせわしなく往来していた。イマドキのチェーン店と、昭和の香りがする個人店が見事に共存している。
昔ながらの店構えが気になり「だんごの美好」前で自転車を停めた。のぞきこむと、稲荷ずしや海苔巻きと、串団子や大福など和菓子がたくさん並んでいる。朝7時半から営業しているそうで、毎日の朝食に来店している常連さんも多いようだ。
海苔がぜいたくに巻かれた「いそべだんご」と大ぶりの「かのこ」をゲット。「いそべだんご」は90円というリーズナブルさだ。だんごを持って、南へ。
しばらく行くと、「やっちゃ場跡」に差し掛かる。今でもこのそばには水産物が取引されている「足立市場」があるが、以前はここは青物市場として栄え、三十数軒の問屋が並んでいたという。「やっちゃ、やっちゃ」というセリの掛け声から「やっちゃ場」と呼ばれていたそうだ。
今でもこの通りには、当時ここで営業していた問屋の扱い品と屋号が書かれた木札が掲げられており、眺めるだけでも想像が膨らみ、楽しめる。青物だけではなく、そば、傘、こんにゃくなど、店舗のバリエーションも豊か。当時は大いににぎわい、活気のある通りだったに違いない。
「やっちゃ場」エリアを越えると、千住大橋が見えてくる。ここは、松尾芭蕉が奥の細道に出立する際に、最初の句を詠んだ場所であり、橋の付近には、芭蕉にちなんだスポットが設置されている。
そのまま行き当たるのは「千住宿奥の細道プチテラス」。「鮎の子の しら魚送る 別れ哉」という旅立つ芭蕉らを白魚に、千住まで見送りに来た門弟達を鮎にたとえた句が刻まれた句碑と芭蕉の石像が穏やかに建っていた。
隅田川にかかる千住大橋のたもとまで行くと、「おくの細道 矢立初めの碑」が建てられている。この土地を、芭蕉たちはどのような思いで歩き、長い旅に出発したのだろうか。
せっかくここまできたので、気になっていた神社に足を伸ばすことにした。
◆中編に続く