松浦悠士は松谷秀幸が後ろを回りたいと言う意思表示に対して「話してから」と言い、松谷に駆け寄った。その真意を松浦に聞いたら「小倉競輪祭の2日目に僕を強引にブロックして松谷さんは失格。レースの動きの中なら納得だけど“失格覚悟”と言うニュアンスがあれば困りますと言いました」。

　この辺りの経緯を素直に話してくれるのも松浦の人間性の良さ。それを松谷に聞いたら「あのブロックは自分の技術の無さ。公正安全な気持ちでいるし、意図的な事ではないと謝りました」。

　わずか数分の話し合いだが、ここがスポーツマンシップ。実は知らなかったが松谷は大阪生まれ。沖縄の高校に野球留学しているが
「本当は大阪桐蔭とか近江高校に行きたかった。だけど、母子家庭なので特待生の制度がないと高校に行けなかった。泣く泣く沖縄に行ったのが真相です。学生寮の食事も沖縄料理ばかりで、島特有の人間関係にも苦労しました。その後はドラフトにかかりヤクルト入団。二軍の施設は埼玉の戸田だし、競輪選手になってからは横浜。だから家を転々としています(笑)」。

　ドラフトの契約金は6,200万以上と聞いていたし、こんなに苦労しているのも知らなかった。(町田洋一)