2021/11/13(土) 12:00 0 5
この道60年、九州の競輪専門紙「コンドル」の名物社長・武田一康氏がお届けする“コンドルの提言”。第6弾のテーマは「朝日新聞社杯競輪祭」です。この歴史あるGIレースは、コンドルの社長の目に、いったいどのように映っていたのでしょうか。どうぞご覧ください。
第63回小倉競輪祭を直前にして、語るうえで最高のドラマを見せてくれたレースはと依頼されましたが、私が観て来た全ての大会が最高なのでチョイスするのは非常に困難ですが、この道に入るキッカケに成ったのは、新人王(新鋭王)と競輪王が3日制で開催されてた大会を現地で多くのファンに揉みくちゃにされ乍らスタンドで観戦、新人王を圧倒的パワーで逃げ切り3連勝したのは高原永伍(13期神奈川)。その当時は新人王の10個レースに自力型が集結した事で、1週間後の競輪王は個性溢れる追い込み型ばかりと言う事で、決勝に乗った9人が参加する粋なシステム。そこでも高原は逃げ切りで完全V、前人未到の新人王・競輪王のタイトルを手にしたのは強烈な思い出。
その後は田中博・福島正幸の群馬最強コンビに、阿部道・阿部利美・河内剛の宮城トリオ、吉川多喜夫・伊藤繁の神奈川コンビ、山梨の藤巻昇・清志の兄弟が繰り広げた数々の名勝負。それからはかの有名な関東フラワー軍団と九州の対決。フラワーは山口健治・尾崎雅彦・清嶋彰一の東京トリオに滝澤正光(千葉)。九州は、中野浩一(福岡)に井上茂徳・佐々木昭彦の佐賀コンビ。そして26期の火の玉レーサー矢村正(熊本)も。滝澤はその後に後輩の鈴木誠を利してグランドスラムを決め、中野と井上は味方であってもライバル意識はバチバチで、前を行く中野を井上が2度、それもゴール寸前で差し切り優勝してから鬼脚伝説の始まり。小倉バンクがドームに移る前は吉岡稔真(福岡)と神山雄一郎(栃木)が各々に3連覇を達成。
ドームに成ってからは、山田裕仁(岐阜)の連覇もですが、平原康多(埼玉)が中部の2段駆けを分断して優勝を飾った大会も。平原は其の後も武田豊樹・長塚智広の茨城コンビと神山雄一郎を引き連れて主役の座を全うしたのに、今年も弟分の宿口陽一と優勝の有力候補に挙げられてるのは凄いを通り越す偉業。九州では井上昌己(長崎)小野俊之・大塚健一郎の大分コンビ、そして一度だけですが北津留翼(福岡)も決勝進出。小倉竜二(徳島)が吉岡稔真をハンドル投げで抜いて2度V。加倉正義(福岡)の優勝も感動的でした(吉岡稔真失格で繰り上がり)。そして清水裕友・松浦悠士の中国ゴールデンコンビ。昨年はハマのプリンス郡司浩平が優勝。
3年前から6日制のナイターに移行。前半3日間はガールズABの優勝者は各々ガールズグランプリの権利を獲得出来る華があるレースが。競輪王は1・2回戦をトライアルにして、成績順に4日目から上位9名は準決フリーパスのダイヤモンドレース。2次予選ABの闘いに突入。静岡グランプリ最後の椅子を巡り、熾烈な争いが今年も。選手以上にワクワクしてる次第です。コロナ禍で取材規制は厳しいですが、確かな眼と経験で、しっかりした情報を提供します。
昔と今とで競輪祭の違いとのテーマですが、18歳の春に父親から「コンドル」を任され、予想に総評を書き続け今日迄、大病・大怪我もせず一度も休まず仕事をやり続けた私に何時の競輪祭も決勝戦も敗車戦も、全力で取り組んで来たので違いと言われても全て同じ。生活と名誉のために、鍛練したスポーツマン(ウーマン)が全智そして全能力を駆使して闘うのが競輪は昔も今も変わらないと思います。それは競輪祭も同じ。
競輪界全体で考えると、ライン戦は深まり、大ギアの時代に成った事、現在は昔だったら「メンズギア」ともてはやされた3.85の上を行く3.92が主流で、スピードアップしたのは事実。それで3.50から3.57の時と違い、単調なレースが増えたのは事実。激しい競り合いも醍醐味の一つでしたが、それはあくまでも昔の制度・ルールがあっての事で、現在は公正安全をスローガンにしてるので、より競技に近付けてるのが違いと言えば違いなのかも。まあ結論は昔も今も「競輪」の魅力は永遠と言う事です。