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【127回生データ考察】早期卒業の市田龍生都だけではない 過去最強の“銀河系軍団”は歴代記録を破りに破ってプロの道へ/男子編

アプリ限定 2025/03/16(日) 12:00 0 24

今年デビューする競輪選手候補生の卒業を記念して、3月10日〜15日に卒業記念インタビューを6本連続公開した。シリーズの締めくくりとして「127期・128期選手のポテンシャル」を考察すべく男子編・女子編の記録会データ等を振り返る。今回は127期・男子編をお届けする。(構成:netkeirin編集部)

127回生卒記チャンプ・三神遼矢(写真提供:チャリ・ロト)

 3月4日・5日に静岡競輪場で「127・128回生卒業記念レース」が開催された。2日間のシリーズでは手に汗握るレースが乱発し、最終的に三神遼矢(福島23歳)の優勝で激闘の幕は閉じた。シリーズ中は候補生プロフィール資料や記録会データをはじめ、競走訓練における点数、着、S回数、H回数、B回数などの成績一覧表も配布されたが、今回生のポテンシャルの高さには驚くばかりだった。

まさに“銀河系軍団” ゴールデンキャップ獲得者数が段違い

 卒業記念レース初日プログラム終了後、日本競輪選手養成所から「訓練の概要と成果報告」がなされた。要約は以下のとおり。

【127回生訓練概要】
・世界で通用する競走能力を持つ選手の養成、そのための基礎的土台づくり
・先行主体の自力型選手養成、そのための脚力・競走技術の向上
【127回生成果報告】
・ゴールデンキャップ獲得者数の急増(27名)
・記録会4種目(200m、400m、1000m、3000m)で期別平均タイムの記録更新
市田龍生都候補生を早期卒業生として輩出

「世界に通用する選手」、「先行主体の自力型選手」といった言葉の示す通り、脚力向上によるスピード強化といったテーマを軸に養成プログラムが組まれ、ハイパフォーマンスを引き出すための専門的指導も行われたとのこと。日本競輪選手養成所次長・榎本氏は成果報告会見にて「今回生は高いレベルで成果をあげられた」と発表した。

 そのことを証明するデータが多数あるのだが「ゴールデンキャップ獲得者数」がわかりやすい。今期127期デビュー組と他の卒期を比較して段違いであり、異彩を放っているレベルと言っていい。(※ゴールデンキャップ…男子なら200、400、1000、3000mの全4種目、女子なら200、400、500、2000mの全4種目それぞれに厳しい基準タイムが設けられており、すべての種目で基準タイムをクリアしなくては獲得できないもの)。取り急ぎ今期含む過去10期のゴールデンキャップ獲得者数を比較する。

獲得者数
109期獲得なし
111期1名(1名)
113期獲得なし
115期2名(2名)
117期6名(9名)
119期7名(8名)
121期15名(20名)
123期4名(4名)
125期13名(16名)
127期27名(36名)

※カッコ内は複数回獲得者の重複を加味しない「のべ人数」

 獲得者数「27名」は歴代新記録である。第1回〜第3回記録会で複数獲得した選手もいるため、重複者を加味しない「のべ人数」は36名でダントツである。このゴールデンキャップ獲得選手はデビュー後も昇級昇班が早く、ビッグレースでも活躍する傾向が高い。注目選手をあぶり出す上できわめて有用な情報と言えるだろう。ちなみに各期のゴールデンキャップ獲得選手は以下のとおり。

獲得選手名
109期獲得なし
111期松本貴治
113期獲得なし
115期坂井洋藤井侑吾
117期町田太我菊池岳仁坂本紘規
寺崎浩平青柳靖起山口拳矢
119期木村皆斗北井佑季志田龍星
山根将太渡口勝成吉田有希
田口勇介
121期中野慎詞後藤大輝荒川仁
村田祐樹室井蓮太朗纐纈洸翔
治田知也梅崎隆介齋藤雄行
東矢圭吾岸田剛真鍋智寛
大川剛太田海也山口多聞
123期荒川達郎稲毛知也
保田浩輔黒瀬浩太郎
125期阿部英斗中村龍吉高橋舜
西岡利起松本昂大岩元叶馬
中石湊山崎歩夢今井希
角田光森田一郎
瀧川幸広塩島嵩一朗
127期市田龍生都丸山留依杉浦颯太
野中龍之介大塚城邊見竜馬
三神遼矢長野魅切木村優駿
猿樂楓樹尾野翔一椎名俊介
下山聖斗岩原健馬三浦生誠
上杉有弘藤田楓土井慎二
西森一稀馬越裕之岩辺陸
野津宏介三澤優樹新垣慶晃
吉岡優太水澤秀哉諸隈健太郎

 記載の選手から見ても、ゴールデンキャップ獲得選手の将来は有望と考えて良いだろう。全員とまではいかないが、GI出場選手も多数見受けられ、GI覇者となりS級S班を務めた選手も存在している。その重要な指標であるゴールデンキャップ獲得者数が127期だけ圧倒的に突出しており、デビュー後すぐに旋風を巻き起こしていく可能性も十分と考えるのが自然だろう。

117期・山口拳矢はG1を制してS級S班にも上り詰めた(撮影:北山宏一)

期別平均最高タイムを全種目で更新

 127期生はゴールデンキャップの獲得者数が多いだけではなく、候補生全員のタイムに基づいて割り出す「平均タイム」でも養成所歴代記録を更新している。しかも記録会で計測される種目は200、400、1000、3000mだが、この4種目すべてにおいて歴代記録を塗り替えたのである。単に成績優秀者が多いというよりも、集団としてハイレベルということは一目瞭然だ。

種目新記録これまでの記録
200m10秒9911秒10(117回生)
400m22秒9023秒06(121回生)
1000m1分07秒371分07秒93(125回生)
3000m3分51秒523分53秒82(125回生)

 このような記録を打ち立てる127期なので当然のようにトップ10は強烈な能力値を示している。当期を含む直近5期の個人トップ10を比較して紹介する。なお、すべての種目で好タイムが並んでいるが、下記ではバンク1周を参考として400mTTのみを記載する。

◆400mTT 個人トップ10比較(127回生〜119回生)

127期125期123期121期119期
市田
龍生都
21″84
中石 湊
22″11
稲毛
知也
22″19
太田
海也
22″08
犬伏
湧也
22″01
丸山
留衣
21″97
森田
一郎
22″21
黒瀬
浩太郎
22″29
真鍋
顕汰
22″14
山根
将太
22″10
三神
遼矢
22″02
瀧川
幸広
22″44
梶原
海斗
22″34
山口
多聞
22″17
木村
皆斗
22″40
杉浦
颯太
22″06
阿部
英斗
22″45
鳥海 創
22″47
安倍
大成
22″18
志田
龍星
22″48
水澤
秀哉
22″16
福田
健太
22″49
荒川
達郎
22″53
村田
祐樹
22″22
北井
佑季
22″50
岩原
健馬
22″29
小堀
敢太
22″52
望月
嘉人
22″54
中野
慎詞
22″23
田口
勇介
22″56
三浦
生誠
22″30
今井 希
22″61
内山
慧大
22″58
大川 剛
22″32
木村
佑来
22″58
長野
魅切
22″32
高橋 舜
22″61
棚瀬
義大
22″64
長谷川
裕一
22″35
梶原
大地
22″67
尾野
翔一
22″32
志田
愛希飛
22″61
青木
瑞樹
22″68
東矢
圭吾
22″40
福元
啓太
22″70
大塚 城
22″40
塩島
嵩一朗
22″65
長松
空吾
22″73
荒川 仁
22″50
上杉
嘉槻
22″70
川上
隆義
22″65

 400mTTのトップ10を比較すると、21秒台のタイムは127期以外には見られない。GI常連で4月からS級S班所属となる犬伏湧也、パリ五輪短距離トラック日本代表の太田海也などが各期のナンバーワンとして名前を刻んでいるが、養成所記録会での21秒台はない。127回生4位の22秒06という杉浦颯太の記録は125回生〜121回生のナンバーワンになれるタイムでもある。また、10位の大塚城の22秒40は前年125回生ならば3位のタイムだ。

(上記ランキング表は第1回〜第3回のベストタイムから算出したトップ10であるため、天候や条件などは各期ともに異なる条件ではあるが、3本の公式記録から構成しているため、まずまずの精度で公平性もあろうと思う)

127期の“注目ナンバーワン”は導き出せず

早期卒業を果たした市田龍生都と瀧澤正光所長(写真提供:JKA)

 編集部では毎年記録会データと競走訓練成績などを参考にして「注目ナンバーワン」を独断で記載している。だが127回生の注目ナンバーワンは「わからなかった」のが正直なところ。無論、早期卒業を果たし、いち早く現場で躍動している市田龍生都がイチオシには違いないのだが、切り口によっては別のナンバーワンが存在するのも事実。かなり層が厚い卒期であることは間違いない。

 ちなみに市田は本デビュー後11走を走り終えて勝率9割、3連対率は100%であり、バック回数も9回を誇る。通用しているとかそういうレベルではない。加えて自転車競技者としてのキャリアも順風満帆に漕ぎ出しており、2月のアジア選手権トラックでは得意とする1kmTTで優勝。アジア王者として世界選手権の出場枠も見事手中におさめた。

 一方で、卒業記念レースを制した三神遼矢も逸材中の逸材。すでに競輪と自転車競技の両立を公言しており、ナショナルチーム強化指定選手B指定選手として奮闘している。127期の記録会では200m「10秒47」で1位、400m「22秒02」で3位、1000m「1分05秒06」で2位と好タイムを叩き出している。市田は早期卒業しており、記録会も他の候補生より1回少ない。単純比較はできないかもしれないが、200mTTおよび1000mTTでは市田を凌ぐタイムを出しており、卒記レースでは勝負強さも発揮した。市田と双璧を成す127期の看板選手である。

 また在所1位で卒業した尾野翔一も凄まじい。競走訓練の得点1位だけでなく、200m「10秒57」は三神に次いで2位、1000m「1分04秒77」は候補生唯一の4秒台を計測しての1位である。小学生時代から野球一筋で独立リーグでもプレーした尾野。異競技からの転向とあって、自転車競技経験の浅さを加味すればとてつもない逸材ということに疑いの余地はない。上記3選手以外にもポテンシャルがエグい選手が揃い踏みしている127期。どの種目(距離)も好タイムを出した上で、スプリンタータイプも地脚タイプもそれぞれの武器を鋭く光らせているので個性も豊かだ。

127回生の在所成績1位、野球の世界から転向した尾野翔一のポテンシャルも異次元(写真提供:チャリ・ロト)

ゴールデンキャップ獲得者の所属地区

 ドバっと大量に強靭なルーキーがデビューするため、何年かすれば各地区の勢力図にも影響があるかもしれない。さいごに127期のゴールデンキャップ獲得選手に限定して所属地区を記載する。

◆北日本(5名)

選手名登録府県
杉浦颯太北海道
邊見竜馬福島
三神遼矢福島
三澤優樹福島
三浦生誠岩手

◆関東(3名)

選手名登録府県
木村優駿埼玉
椎名俊介茨城
吉岡優太茨城

◆南関東(5名)

選手名登録府県
丸山留依静岡
大塚城静岡
岩辺陸静岡
野中龍之介神奈川
水澤秀哉千葉

◆中部(1名)

選手名登録府県
岩原健馬愛知

◆近畿(4名)

選手名登録府県
市田龍生都福井
上杉有弘福井
馬越裕之奈良
西森一稀兵庫

◆中国(3名)

選手名登録府県
猿樂楓樹岡山
藤田楓岡山
土井慎二岡山

◆四国(2名)

選手名登録府県
長野魅切愛媛
諸隈健太郎高知

◆九州(4名)

選手名登録府県
尾野翔一福岡
野津宏介福岡
下山聖斗鹿児島
野中龍之介神奈川
新垣慶晃沖縄

 北日本・南関東・中四国が5名、近畿・九州が4名、関東3名、中部1名といった分布だ。先行主体の戦法を体に叩き込んだエリート集団がプロデビュー後のライン戦でどのように躍動していくのか。そのほかにも興味は尽きない。誰がルーキーシリーズを制するのか、誰がビッグレースに1番乗りするのか。瀧澤正光所長が最後に送り出した127期からは当分のあいだ目が離せなさそうだ。

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