2024/12/08(日) 18:00 0 37
今年の顔であり、2025年S級S班所属となる9名の選手たちによる一発勝負。競輪界の一大決戦「KEIRINグランプリ2024」が30日、静岡競輪で開催となる。netkeirinでは並びが発表される記者会見までの9日間、出場選手たちの特徴やグランプリまでの道のりを日替わりでお届けしていく。今回は節目となる40歳で初出場を決めた岩本俊介を紹介する。(構成:netkeirin編集部)
南関東の自力型選手が手薄の時代から奮闘を続けている岩本俊介。S級選手の中でも上位の成績を残してきた選手であり、GIIIでの優勝も5回を数えている。そのうち4回が松戸競輪で開催されたもの(代替開催含む)で、地元で強さを発揮する特徴がある。当サイトの連載コラム『前田睦生の感情移入』では「94期の大砲」、「怪物」と称され、そのポテンシャルの高さは早い段階で評価を受けていたことが紹介されている。
だが、そのポテンシャルの高さとは裏腹に、昨年まではGI優勝争いに名乗りを挙げる機会もなく、あと一歩の高い壁を乗り越えられず。そんな中、40歳という節目の年を迎え、今年は序盤戦から猛チャージ。初戦の4日制FIで優勝し、3月にはGIII完全優勝を含む11連勝を記録。その目覚ましい活躍ぶりはファンの間で話題となり、アオケイ長谷川記者はニュース内で「40代に突入して衰えるばかりか凄みを増している」と綴っている。
しかし、記者や関係者によるコラムやニュースで岩本が発した言葉を追ってみても「流れに身を任せて」「余計なことは考えずに一戦一戦集中するだけ」といったコメントが多く、“大きい言葉”は一切見つけられず。大躍進の前半戦を振り返るインタビューでも「他人事でアレだけどすごいなあ」と自然体で笑う。ペースを乱さず、実直に目の前のレースと向き合う選手像がある。また、千葉の選手とふざけ合っている場面やリラックスした笑顔の写真が多く、印象は柔和で朗らかだ。
岩本俊介のグランプリへの道を辿るとダービー準優勝がデカい。一次、二次を連勝で勝ち上がり、準決勝は深谷知広の番手を回り1着。これまで乗り越えられなかったGI準決勝の壁をぶち破り、3連勝の勢いとともに初のGI決勝進出を決めた。しかし、決勝に勝ち上がった南関東の選手は岩本のみで決勝は単騎戦に。相手は岩本以外の単騎はS班3人、平原康多を擁する関東勢などGI決勝らしい超強力メンバー。なおかつ車番は大外9番。「これは厳しい戦いになる…」というのが岩本ファンの見方だったことだろう。
迎えた決勝は関東3車の後ろに付け、打鐘では最後方に位置した。その後、最終ホームで吉田拓矢が主導権奪取を目論む一気のカマシ、岩本はここを追走。しかしバック手前で切り替えた諸橋愛と位置が被り、外並走の苦しい展開。最終2センターでも外を回らされていたが、直線に入り猛烈なタテ脚を披露し、ゴールまで伸び続けて2着を確保。準優勝でも高額賞金のダービー、シリーズを終えて賞金ランキングを4位とした。
しかし、ダービー後に優勝はなく、ビッグレースでも振るわず。結果的に賞金積み上げの勢いも失速し競輪祭直前には9位までランクダウン。そんな中で迎えた競輪祭だったが、一次予選から守りには入らずに攻めの走りを示した。思い切った仕掛けで展開を引き寄せ、脇本撃破の白星発進。二次予選でも3着に食い込み準決勝進出。準決勝ではアクシデントの影響もあり6着敗退。「脇本優勝」の結果待ちでグランプリ出場の可否が下される展開となった。
そんなヒリヒリ展開の中、岩本は千葉の仲間と鍋を囲みながら決勝を観戦していたとのこと。脇本雄太の優勝が確定したと同時に岩本のグランプリ出場が決まった。その時を振り返り「まったく実感が湧きませんが、和田健太郎さんが一番喜んでくれています」と話した。和田健太郎といえば20年に初出場でグランプリを制している千葉の先輩。年末の大舞台で先輩と同じように栄光をつかむ可能性は十分だ。
岩本俊介はラインの先頭でも番手でも勝機をものにする選手。最近は捲り・追い込みが主体だが、いざとなれば長い距離を踏む仕掛けでも戦える選手。本人のコメントでは「たまたま展開が良かった」系の発言も目立つが、展開を向かせる立ち回りが光る選手だ。そもそも“たまたま恵まれて”で11連勝は無理があるというもの。特に象徴的なレースをピックアップすれば競輪祭の一次予選1だろう。
圧倒的人気は脇本雄太。脇本が確定板を外せば万車券という“脇本確勝”の支持率であった。しかし岩本が展開を引き寄せる走りで大波乱を起こす。レースは北日本2車が前受けになり、岩本はその後ろ3番手、脇本は最後方という隊列で進んだ。脇本が酒井を切りに行くが、酒井がこれを突っ張る。脇本を警戒して流し気味の酒井の意表を突くような仕掛けで、最終ホームに突入するタイミングで叩き切った。
トリッキーな仕掛けに岩本の番手和田健太郎も反応が遅れ連結を外してしまう。酒井と和田が岩本の後ろを巡って争っているところで1センターから脇本も仕掛けるが、岩本のカカリが良く、車間も大きく空いているため、脇本もなかなか捲って行けない。最終的に脇本は佐藤友和に厳しいブロックをもらい失速。岩本は後ろを寄せ付けることなくそのまま押し切って1着。勝機を逃さぬ仕掛けのタイミング、重要局面でも守りに入らぬ強心臓、何よりそれらを実現可能にする実質単騎で1周駆けて押し切る脚力。岩本の魅力が集約されているレースだった。
近年を振り返れば20年は和田健太郎が、21年には古性優作がグランプリ初出場初優勝の快挙を成し遂げている。南関東エリアでの開催に滅法強い岩本俊介が静岡の地で初出場初優勝に挑戦する!
最後に、現在netkeirinで募集中の投票企画「競輪ファンが選ぶ KEIRINグランプリ2024優勝選手」で岩本俊介に寄せられたコメントを紹介する。
「千葉の一発勝負!和田健太郎の再来」
「滝澤、鈴木誠、海老根、和田健太郎と謎の勝負強さがあるのが千葉」
「ここ10年を見れば初出場の選手も勝ってるのがグランプリ、北井より岩本が優位だと思う」
「苦労人が報われて欲しい」
「これまでの頑張りを応援、サプライズを期待」
「足を溜められる岩本に勝機舞い込む」
【12/18追記】
17日、KEIRINグランプリ2024共同記者会見で車番および並びが以下の通り決定しました。
①古性優作-⑨脇本雄太
④眞杉匠-②平原康多
⑦北井佑季-③郡司浩平-⑤岩本俊介
⑥清水裕友(単騎)
⑧新山響平(単騎)