アプリ限定 2024/11/15(金) 18:00 0 0
後半戦のGIを古性優作が連続で制し、賞金によるKEIRINグランプリ出場争いはますます熾烈を極めている。今年最後のGI「朝日新聞社杯競輪祭」の開幕を直前に控え、S班9名を中心に獲得賞金上位陣の戦いを振り返りたい。(※賞金は11月11日時点)
10月に行われたGI「寛仁親王牌・世界選手権記念トーナメント」では、8月の「オールスター競輪」に続いて古性優作が優勝し、GI連続優勝を挙げた。
寛仁親王牌決勝では寺崎浩平-脇本雄太の3番手を回り、一度は位置を奪われるもとっさの判断、高度なテクニックを駆使してV。“最強オールラウンダー”の神業に誰もが驚愕した。
すでにKEIRINグランプリ2024の出場権を有しているのは、古性と郡司浩平(2月全日本選抜V)、平原康多(5月ダービーV)、北井佑季(6月高松宮記念杯V)の4名。古性がGI2Vを挙げたことで、獲得賞金によるKEIRINグランプリ出場枠がひとつ増えたことになる。
19日からGI「朝日新聞社杯競輪祭」が開催される。これが今年最後のGIで、大会終了後に次期S班、すなわちKEIRINグランプリ2024に出場する9名が確定する。
直前の賞金状況を見てみると、GIを制した4名はすでに獲得賞金が1億円を超えている。先述の古性はなんと2億4000万円を超え、2位の平原にダブルスコア近い大差をつけている。
では、まず“1億円レーサー”が3名含まれるS班以外の賞金上位選手の状況からグラフで見てみよう。
GIタイトルを獲得した3名は、寛仁親王牌以降も順位は変わらず。平原康多が2位、郡司浩平が3位、北井佑季が4位を守っている。
グランプリ出場権を早々に決めた3名であるが、直近は苦しんでいる選手もいる。平原は10月、寛仁親王牌の初日に落車棄権。2日目は7着となり、その後帰郷した。直後の京王閣記念は出場したが、3日目準決勝で再び落車棄権に見舞われ、競輪祭が復帰戦となる見込みだ。
ダービー準Vに破竹の11連勝と春に活躍した岩本俊介は、ダービー後の4位から徐々に順位を落とし9位に。
22年S班の吉田拓矢は昨年の失格などの影響で7月からS級2班となり、予選スタートとなっているにも関わらず健闘。寛仁親王牌では二次予選で失格を喫してしまったが、11月は防府記念を走り優出(決勝は9着)。寛仁親王牌前の12位から順位をひとつ上げた。
吉田と入れ替わる形でひとつ順位を下げたのは、飛躍の1年を歩んでいる窓場千加頼。オールスターで準優勝(連係した古性がV)と結果を残し、オールスター直後は賞金ランク9位まで順位を上げた。9月の地元・向日町記念では脇本雄太と別線勝負を選択し惜しい準V。ただその後の出走はGII共同通信社杯、GI寛仁親王牌のみに留まっている。寛仁親王牌ではまさかの一次予選敗退となり、出走本数の少なさも相まって順位を落とす形となった。
競輪祭を優勝せずとも、獲得賞金でグランプリ出場が狙える現実的なラインはこのあたりまでと目されている。最終的なボーダーラインは1億円になる可能性まで考えられているが、現状のボーダーラインといえる6500万〜9000万円には現S班4名を含む7名が位置している。
S班以外のボーダーラインの選手の近況はややブレーキ気味だが、S班でボーダーラインにつける選手たちの状況には動きが出ている。ここで、S班の獲得賞金状況を見てみよう。
グラフで見ると一目瞭然だが、古性優作がすでに2億オーバーで他を圧倒している。今年のビッグレース(GI、GII)で一度も決勝を外しておらず、決勝で確定板を外したのも全日本選抜とサマーナイトの2回のみ、GIの準決シードレース(ゴールデンレーサー賞、ローズカップ等)にも全日本選抜以外はすべて乗っており、驚異的な安定感だ。
これまでの年間獲得賞金額最高記録は、2022年に脇本雄太が記録した3億584万2300円。これは公営競技初の“3億円レーサー”誕生と報じられたが、今年の古性は大幅にこの記録を塗り替える可能性がある。競輪祭、グランプリの結果次第では史上初の“4億円レーサー”誕生も夢ではない。
寛仁親王牌直前の本企画では「賞金6位までがグランプリ安全圏か」と述べており、6位は眞杉匠の8993万6674円だった。現時点での6位も変わらず眞杉で、獲得賞金は9828万2674円。5位の清水裕友とは驚くことにたった5000円の差である。
順位を上げたのは新山響平。“赤パン”2年目ながらS班に上がってから優勝が一度もなかった新山だが、11月の四日市記念でついに優勝。賞金ランクは7位に浮上した。この熾烈な賞金争いにあって、GIIIの優勝賞金520万円も非常に重要だ。新山は22年の競輪祭覇者で、四日市の優勝インタビューでは「競輪祭でも優勝を」と話した。なお、6位眞杉と7位新山の差は1092万円ある。
新山と入れ替わり8位となったのが脇本雄太。寛仁親王牌では2日目ローズカップと準決勝を1着で優出した(決勝は7着)。脇本は今年、2月GIIウィナーズ、7月の地元福井記念、9月の向日町記念で優勝を挙げている。
ビッグレースの戦績も、9月の共同通信社杯で二予敗退した以外は準決進出、さらに半数以上は決勝にも進めているが、優勝したウィナーズ以外は決勝で確定板に載れていない。さらに高額賞金のダービーを欠場したことも、今の順位に響いていると考えられる。7位新山と8位脇本の差は225万円で、8位脇本と9位岩本俊介の差は825万円だ。
悲願の地元グランプリ出場へ、絶体絶命の位置にいるのが10位深谷知広。9位の岩本を502万円差で追っている状況だが、競輪祭を賞金ランク下位の選手が獲った場合を考えれば、9位ではグランプリ出場を手中にできる保証はない。優勝を目指すのはもちろん、格上のレースを走って優出し、賞金を積み増したいところだ。
深谷の追い風になるのが南関勢の層の厚さだ。すでにグランプリ出場を決めている郡司浩平と北井佑季ら充実の布陣で、一致団結して競輪祭に挑むだろう。
松浦悠士は寛仁親王牌前の19位から15位まで順位を上げた。一方、山口拳矢は25位から30位まで順位を落とした。この二人は寛仁親王牌前の時点から、グランプリに出場するためには『GIを獲るしかない』状況となっていた。
タフに走り続け、コツコツ賞金を積み重ねてきた13位の佐藤慎太郎も、賞金でグランプリに出場できる条件がかなり限られており、現実的にはほぼ『獲るしかない』状況。10度目のグランプリ出場を、11年ぶりのタイトルで決める劇的な結末に期待したい。
「GIを獲ってグランプリに」というのは、選手からよく聞かれるフレーズだ。GIタイトルというのはそれだけかけがえのない栄誉である。
それに賞金ランク下位の選手が競輪祭を獲った場合は、賞金でのグランプリ出場枠が減ることになる。よって、賞金で出場できる可能性が残されていても「とにかく1円でも多く稼ぐ」というより「競輪祭を獲るのみ」と考える選手が多いだろう。
参考までに、ここまででS班が出場した開催数(途中欠場含む)と優出・優勝回数を表に示した。
競輪選手名 | 開催数 | 優出回数 | 優勝回数 |
---|---|---|---|
古性優作 | 17 | 16 | 6 |
清水裕友 | 19 | 13 | 4 |
眞杉匠 | 20 | 8 | 3 |
新山響平 | 21 | 13 | 1 |
脇本雄太 | 18 | 11 | 3 |
深谷知広 | 22 | 13 | 2 |
佐藤慎太郎 | 25 | 9 | 0 |
松浦悠士 | 18 | 8 | 2 |
山口拳矢 | 18 | 3 | 0 |
※獲得賞金順、優出・優勝回数にはSPR賞(全プロ記念競輪)を含む。新山響平の開催数にPIST6は含まない
ついに今年最後のGI「競輪祭」が19日に開幕する。この大会が終われば年末のKEIRINグランプリ出場メンバーが確定し、次期S班9名がお目見えする。
最後になるが競輪祭の優勝賞金は4700万円。決勝2着で2372万円、3着は1550万円、4着が1131万円と決勝4着までが1千万円を超える賞金が与えられる。
郡司浩平と平原康多が早々にS班復帰を決め、徹底先行を貫いてきた元Jリーガー北井佑季がデビュー3年で初タイトルを手にした。早い段階でS班3名の入れ替わりが決定的となり、波乱と思われたところに“輪界最強”と名高い古性優作の後半戦GI連覇があった。
この1年走り続けた選手にとっても、見守り続けたファンにとっても運命の時。勝利の女神は誰に微笑むのか? 競輪祭で生まれるドラマを楽しみに待ちたい。