アプリ限定 2024/09/10(火) 18:00 0 20
9月13〜16日に宇都宮競輪場で開催される「第40回共同通信社杯競輪(GII)」。昨年までは「共同通信社杯」の名称で行われていたが、このたび16年ぶりにこの名称に戻された。
出場選手が発表されたのは7月下旬。共同通信社の推薦選手である神山雄一郎、平原康多、南修二の3名を含めた108名が選出された。
共同通信社杯といえば“若手の登竜門”と位置付けられている。さらに一次予選、二次予選が「自動番組編成」であることも大きな特徴のひとつだ。そのためフレッシュな選手の躍動やサプライズ連係が多く見られ、新鮮味を感じられるビッグレースだ。
“若手の登竜門”と呼ばれる理由のひとつは選抜条件に「一定期間にデビューした選手のうち、平均競走得点上位」が含まれ、若手に優先権があることだ。さっそく今回の選考条件を見ていこう。
【共同通信社杯 選考条件】※開催時S級在籍
(1) 開催時S級S班在籍者
(2) 直近前回のオリンピック自転車競技メダリスト
(3) パリオリンピック自転車競技トラック種目代表選手
(4) 選手選考対象期間において2ヶ月以上JCFトラック種目強化指定(A)に所属した者(開催時S級1班在籍)
(5) スポンサー推薦3名以内
(6) (1)〜(5)を除く、109期以降の各期卒業の選手のうち、選考期間における平均競走得点上位者25名
(7) 選考期間におけるFI決勝1〜3位回数上位者(同数の場合は、選考期間における平均競走得点上位者)
(8) 選考期間における平均競走得点上位者(同点の場合は、選考期間における選考用賞金獲得額上位者)
※選考期間は2024年1月〜2024年6月の6か月
メインの選考条件になるのは(6)〜(7)で、前出の「109期以降の競走得点上位者25名」が含まれる。109期以降の選手は42名選ばれており、S班の眞杉匠(選考順位6位)、山口拳矢(同9位)とパリ五輪出場枠の太田海也(同105位)、中野慎詞(同106位※負傷欠場)、小原佑太(同107位)、窪木一茂(同108位)を除いても今大会で“若手”とされる選手36名が出場権を獲得している。
GII選考の特徴として、FI開催での成績が重視される側面があるため、この競走得点上位25名に入らなくてもこの選考条件から十分出場権を狙うことができる。なお、今回の選考は(8)の条件にいたる前に108名に届いたと見られる。
一方で北日本からはビッグレース常連の新田祐大と守澤太志が選考漏れとなった。GIIでは特に有力選手の選考漏れが目立つが、今回はなぜだろうか?
新田はオールスター競輪に続き、2月の失格(先頭員早期追い抜き)によるあっせん停止期間が響き、最低出走回数(24回)に満たなかった。
守澤は選考期間でのFI出場が3回で、すべて決勝に進んでいるが成績は2着、4着、落車棄権となっている。このため(7)の選考条件でカウントされるのは2着1回のみで不利となり、クリアできなかったようだ。
二人のほかにも有力選手の選考漏れは見られる。下記に直近のGIオールスター競輪に出場した選手から、共同通信社杯の出場権を逃した選手を抜粋する。
各地区の主な選考漏れ
地区 | 選手名 |
---|---|
北日本 | 成田和也、菅田壱道 |
関東 | 諸橋愛、武田豊樹 |
南関東 | 松谷秀幸、和田真久留 |
中部 | 川口聖二、志智俊夫 |
近畿 | 稲川翔、東口善朋 |
中国 | 隅田洋介、柏野智典 |
四国 | 橋本強、阿竹智史 |
九州 | 園田匠、中本匠栄 |
今回、共同通信社杯の出場権を獲得した109期以降の各期の選手数は以下の表の通り。なお、今大会出場選手のうち最もデビューが遅いのは121期となっている。
期 | 人数 | おもな選手 |
---|---|---|
109期 | 6人 | 瓜生崇智、佐々木龍 |
111期 | 4人 | 山崎賢人、松本貴治 |
113期 | 8人 | 眞杉匠、松井宏佑 |
115期 | 7人 | 坂井洋、佐々木悠葵 |
117期 | 10人 | 山口拳矢、寺崎浩平 |
119期 | 4人 | 北井佑季、犬伏湧也 |
121期 | 3人 | 太田海也、中野慎詞 |
※太字はS班またはパリ五輪出場選手、中野慎詞は負傷欠場に
若手選手には選考面での優遇があったなかで、出場権を取れなかった新鋭も見受けられた。松本秀之介(117期)や吉田有希(119期)、後藤大輝(121期)などはGIオールスター競輪にも出場しているが、共同通信社杯出場選手に名前はない。
3人ともオールスターの予選では存在感を見せたが、選考期間内でのFI優勝はなし。競走得点は105点前後あるものの、109期から一括りとなると上位25名に食い込むのはなかなか厳しい。
一方で、オールスター競輪でビッグレース初出場を果たしたものの苦杯をなめた121期・纐纈洸翔は共同通信社杯にも出場する。纐纈は前記の3名より競走得点を持っていないが、6月の福井FIでの優勝が決め手となり出場権を獲得した。
つぎに、過去の結果データから共同通信社杯競輪が本当に「若手の登竜門」であるのか検証していく。
2021年の共同通信社杯では、山口拳矢がデビュー最速GII優勝(デビューから479日)を果たした。ファンの記憶に強く焼き付いているだろう。その山口は昨年ダービー王となり、S班の座に就いている。まさに共同通信社杯が「出世レース」となったといえるだろう。
では、過去5大会の選考で「若手枠」に含まれた期の選手がどれだけ準決勝・決勝に勝ち進んでいたかを見ていこう。※◎は優勝、太字は決勝進出選手
開催年 | 該当期 | 準決 | 決勝 | 選手名 |
---|---|---|---|---|
2019 | 100期〜 | 8人 | 1人 | 山崎賢人 山本伸一 杉森輝大 岡本総 吉田拓矢 鈴木竜士 堀内俊介 宮本隼輔 |
2020 | 101期〜 | 7人 | 2人 | 吉澤純平 山崎賢人 清水裕友 新山響平 吉田拓矢 鈴木竜士 島川将貴 |
2021 | 103期〜 | 11人 | 4人 | ◎山口拳矢 杉森輝大 清水裕友 新山響平 吉田拓矢 太田竜馬 門田凌 眞杉匠 嘉永泰斗 高橋晋也 小原佑太 |
2022 | 105期〜 | 7人 | 0人 | 清水裕友 吉田拓矢 太田竜馬 島川将貴 眞杉匠 森田優弥 坂井洋 |
2023 | 107期〜 | 7人 | 4人 | 新山響平 隅田洋介 佐々木豪 嘉永泰斗 阿部拓真 北井佑季 犬伏湧也 |
各大会、7名以上の「若手枠」の選手が準決勝まで勝ち上がる活躍ぶりを見せている。2018年にすでにS班に在籍していた清水裕友は別格としても、吉田拓矢、新山響平、眞杉匠など後のタイトルホルダーが共同通信社杯でも爪痕を残していた。
選考において優遇される期間に複数年活躍すると、その後も上位戦線で安定した成績を残している選手が多いといえそうだ。まさに“若手の登竜門”と言えるのではないだろうか。
ただし決勝の壁は高く、2022年は7名の「若手枠」が準決に進んだものの、決勝進出者はゼロ。その難易度の高さもまさしく“登竜門”の名にふさわしい。
優勝したのは過去5年では2021年岐阜大会の山口拳矢のみ。さらにさかのぼると2016年富山大会を制した竹内雄作も、「若手枠」とされる期間での優勝だった。
さらに共同通信社杯競輪の大きな特徴であり、楽しみのひとつが予選の「自動番組」だ。通常は番組編成委員によって組み合わせが決定されるが、この大会の一次予選・二次予選は選考順位で自動的に組み合わせが決まる。初日特選のようなシードレースもなく、出場する全員が横一線のスタートだ。
そのため、これまでも多くのサプライズ連係が生まれてきた。2021年には芦澤大輔と辰弘の兄弟連係が叶い、2022年は眞杉匠と郡司浩平が、2023年は新山響平と稲川翔が連係するサプライズがあった。
一方で追い込み選手に目標となる自力選手がいない場合も当然起こりえる。昨年大会では初日からS班の佐藤慎太郎が目標不在となり、レアな3車ラインの先頭で「前々」とコメントを出した(結果は2着)。
このように「自動番組」で思わぬサプライズが生まれるのも共同通信社杯の大きな魅力。今年はどんなドラマが生まれるか楽しみだ。
熾烈を極める年末のKEIRINグランプリ出場権争いにも大きな影響を与えるのがこの共同通信社杯競輪。優勝賞金は2,700万円とGIIの中ではもっとも高額だ(ウィナーズ2,600万円、サマーナイト1,500万円)。
現S班の深谷知広は、昨年の同大会の覇者。大宮記念と松戸記念での優勝、そして共同通信社杯での優勝でグランプリ出場権を手にした(その他FI開催で5V)。
9月4日時点の賞金ランキングでは、グランプリ出場ボーダーは接戦で、5000万円〜6000万円台に8名(7〜14位)がひしめいている状況だ。残された2つのGIタイトルは言うまでもないが、共同通信社杯の賞金もグランプリ争いの鍵を握っていることは間違いない。
若手選手の躍動にサプライズ連係、賞金争いの行方と見どころたっぷりのGII「共同通信社杯競輪」はいよいよ13日に開幕する。新たなドラマが生まれる瞬間を見届けよう!