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【坂本勉のPIST6徹底回顧】神田龍は“前に行く姿勢”で勝負所を見極めた 20代の躍動も素晴らしかったシリーズ/レジェンドが見た疾風迅雷 #35

2024/04/24(水) 18:00 0 3

現役時代、ロサンゼルス五輪で自転車トラック競技日本人初となるメダルを獲得し、競輪ではKEIRINグランプリオールスター競輪といったビッグレースを制したレジェンド・坂本勉氏。“競輪”と“ケイリン”を知り尽くした坂本氏が、新ケイリン「PIST6」のレースを振り返ります。(月2回・不定期連載)

 netkeirinをご覧のみなさん、坂本勉です。今回は4月20日・21日に行われた「PIST6 ChampionShip」フォースクォーター ラウンド45の決勝レースを回顧していきたいと思います。

【PIST6 ChampionShip フォースクォーター ラウンド45 決勝レース動画】

今大会は若手選手の活躍が目立っていた

 今大会では準決勝Aで皿屋豊がブルーバンドに入ってからの走行違反。準決勝Bでは鈴木浩太がスプリンターレーンへの侵入で小林史也の進路を妨害したことで失格となりました。

 皿屋は競輪での実績は今回の参加選手の中で上位にランク付けされていますが、準決勝では内に包まれるなど、今大会は思うようなレースができませんでした。皿屋の力は誰もが認めるところですが、競輪での実績があるばかりに、今大会のPIST6では「待つレース」を選択したのが敗因となりました。

 皿屋と共に今大会では注目を集めていた鈴木浩太ですが、一次予選、二次予選と連勝できていただけでなく、準決勝でも1着入線をしていただけに、準決勝での失格は勿体なかったですね。ただ、競技に準じたルールで行われているPIST6だけに、このジャッジも仕方ないと見ています。結果的に2着だった神田龍が1着に繰り上がり、2着は三浦翔大と共に優勝経験のある2人が決勝に進んできました。

 決勝メンバーを見ると、30代が神田、三浦と神開一輝。残る3名(山根将太依田翔大斉藤樂)は20代で依田と斉藤は共に123期となります。今大会は若手選手の活躍が目立っていただけでなく、2日目の順位決定戦Eでは同じ123期の出口謙一郎が、佐藤友和山田義彦と競輪では実績上位となる2人を下しています。

 123期は棚瀬義大も「PIST6 Championship」フォースクォーター・ラウンド42で優勝しましたし、PIST6を沸かす選手が揃っています。これも若手らしく積極的に動き出しているのが結果に繋がっていると言えそうであり、今後も競輪における格の違いを感じさせないようなレースをPIST6では見せてもらいたいです。

若手選手らしい勢いを見せた依田翔大

 決勝のスタートの並びはインコースから④斉藤樂神開一輝神田龍依田翔大山根将太三浦翔大となりました。6名ともに自ら動いて行けるだけに、動きの激しいレースになるのではと思いましたが、この並びを見た時に難しいポジションになったと思ったのが5番手の山根でした。

 「PIST6 ChampionShip」フォースクォーター ラウンド41で優勝した山根は、今大会もホームから先行していく走りで、確実に決勝へと進んできました。一次予選から長目に踏んでいく姿を見せることで、他の選手は早めに抑えなければいけないとの気持ちも出てきます。

 ただ、決勝は依田、齊藤、神田など、他にも早めに踏み出していける選手が揃っていました。その中でも勢いを感じていたのが、山根が優勝した「PIST6 ChampionShip」フォースクォーター ラウンド41で初の決勝進出を果たしていた依田です。

残り半周、直線勝負に持ち込む依田翔大(レッド・3番車)

 依田は盲腸の手術明けと言うことで、決して本調子では無かったはずです。それでも決勝へと進んできたのは力を付けている証であり、レースぶりにも若手選手らしい勢いの良さを感じさせます。

落ち着いたレース運びで捲り切った神田

 「PEDAL ON」の後、残り2周半で動き出したのは5番手のポジションにいた山根ですが、ここで1番手となっていた斉藤は突っ張りに入ります。最悪、山根に交わされたとしても、その後ろに入れるとの目論見はあったかと思いますが、山根の番手を回っていたのが6番手に入っていた三浦でした。

 残り1周半のバック手前で、山根は斉藤を切って先頭に躍り出ますが、斉藤はその後ろをキープ。番手を回っていたはずの三浦は外へと押し出されてしまいます。

残り1周半、先頭に躍り出た山根将太(ホワイト・1番車)の後ろをキープする斉藤樂(ブルー・4番車)

 そこで隊列が短くなったのを見逃さなかったのが、5番手から外を回りながらポジションを上げていた神田でした。残り1周のホームではインコースに山根-斉藤、真ん中に三浦-神開、外に神田-依田と2車がラインとなったかのように3列で並走していきます。

残り1周、インコースに山根-斉藤、真ん中に三浦-神開、外に神田-依田と3列で並走

 ただ、並走の真ん中を走っていた三浦が失速。インコースの山根は逃げ切りを図りますが、脚色が良かったのは外を回っていた神田でした。

 神田は優勝インタビューの中で、「落ち着いたレース運びができた」と話していましたが、山根と斉藤がやり合っていた時に脚を溜めていたことや、風の抵抗を受けない位置取りだったことも、残り1周での伸びに繋がりました。

 一方、山根は自分らしいレースを見せてはくれましたが、実力者が揃う決勝で、2周の距離を踏んで逃げ切るのはさすがに厳しかったと言えます。5番手でなければまた違ったレースとなったのでしょうが、この辺は運も無かったですね。

 第3コーナーで山根を捲り切った神田。その外には依田が進路を向けて、直線勝負に持ち込みます。依田も1/2車身差まで迫りますが、インコースで押し切ったのは神田でした。

依田翔大(レッド・3番車)の追撃を振り切った神田龍(ブラック・2番車)

 今大会の神田は調子も良かったと思いますが、どのレースでも前に行く姿勢を見せており、結果的にいいポジションでのレースが多くなっていました。決勝は流れも向きましたが、優勝経験もあるからこそ、「落ち着いたレース運び」が出来たとも言えます。

 依田は決勝でも自分から動きたいとは思っていたはずですが、前が神田だったからこそ、付いていくとの判断は正解でした。手術からの復帰戦だからこそ、この判断ができた一方で、万全な状態でレースを迎えられていたのならば、ゴール前で神田を差し切っていたのかもしれませんね(笑)。

 3着の神開はこれがPIST6に参戦してからは初めて決勝、そして初めての表彰台ともなりました。本人は展開に恵まれたと話していましたが、この経験は今後に生かされていくはずです。神開もまだ30歳ですし、初の決勝進出を今回の好走に繋げた依田のように、神開もまた、次の大会でも決勝に勝ち上がるような走りを期待しています。

PIST6で“世界レベルの走り”を見せるために

 「PIST6 ChampionShip」フォースクォーター ラウンド45では、当初の出場予定選手として、自分の弟子でもある新山響平の名前がありました。

 自分も「新山選手がPIST6に出るんだって?」と知り合いから連絡が来てその事実を知りました。師弟関係は関係なくSS班である新山が、250バンクでどんな走りを見せてくれるのかと、PIST6をスタートから見てきた自分としても楽しみになりました。

 新山はこの後に日本選手権競輪への出場を控えています。普段の練習では経験していない250バンクで重いギアを踏んでいくのは、また違った強化を図っていけるとの考えもあったはずです。実際にPIST6で活躍している選手たちが、競輪でもいい走りを見せています。新山もPIST6でSS班らしい走りを見せてくれるだけでなく、250バンクの走りで何かを掴んで、それを競輪の走りにも生かしてもらいたいです。

 間もなく、パリ2024オリンピックの自転車競技の代表選手が決まります。強化選手の誰もが気が気ではないと思いますが、残念ながら選ばれなかった選手も出てきます。

 オリンピックは4年に一度の大会だけに、ここにピークを合わせながらも選ばれなかった中には、競技を一区切りとする選手も出てきます。ただ、競技で培ってきた走りは競輪にも生かされていくはずですし、何よりも走り慣れた250バンクで行われているPIST6ならば、世界レベルの走りを見せられるはずです。

 PIST6では同じく強化選手だった河端や雨谷も活躍を見せていますし、そこに新山のようなSS班が参戦してくるとなれば、更に面白いレースが繰り広げられるはずです。そこに123期を中心とする若い選手たちが、思い切りのいいレースで一泡吹かせるのかもしれません。後のPIST6では色々な起爆剤となるような選手の参戦を期待しています。

坂本勉が選ぶ! 今シリーズのMVP

二度目の優勝を飾った神田龍

 これが2度目の優勝となる神田です。繰り上がりはあったと言えども、完全優勝は立派ですし、今後の大会でも確実に決勝へと勝ち上がってくるような走りを見せてくれることでしょう。

 敢闘賞は依田ですね。PIST6では2度目の決勝進出ながらも、結果を出すごとに強くなっているような印象も受けるだけに、次の大会では優勝を目指してもらいたいです。


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●坂本勉(さかもと・つとむ)
1984年、ロサンゼルス五輪に出場し銅メダル獲得。日本の自転車競技史に初めてメダルをもたらし、“ロサンゼルスの超特急”の異名を持つ。2011年に競輪選手を引退したのち、自転車競技日本代表コーチに就任し、2014年にはヘッドコーチとして指導にあたる。また2021年東京五輪の男子ケイリン種目ではペーサーも務めた。自転車トラック競技の歴史を切り開いた第一人者であり、実績・キャリアともに唯一無二の存在。また、競輪選手としても華麗なる実績を誇り、1990年にKEIRINグランプリ、1989年と1991年にはオールスター競輪の覇者となった。現在は競輪、自転車競技、PIST6と多方面で解説者として活躍中。展開予想と買い目指南は非常にわかりやすく、初心者から玄人まで楽しめる丁寧な解説に定評がある。

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