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“パパは競輪選手”が共通点! 賞金ランキング1位の久米詩&リンカイ!Project声優・葵あずさが意気投合「初めて尽くしの1年、まだまだ駆け抜けようね」

2023/12/22(金) 19:00 0 30

女子競輪を題材に、全国各地の競輪場をホームバンクとしたキャラクターを制作する「リンカイ!Project」は2024年春、TVアニメ『リンカイ!』(TOKYO MX、BSフジ)を放映する。競輪自体や競輪場のある地域の盛り上げはもちろんのこと、来夏フランスで開催されるパリ五輪に向け、”自転車競技”としての”ケイリン”も盛り上げようという狙い。そこでアニメ化を前に、netkeirinではガールズケイリントップ選手である久米詩選手と、『リンカイ!』アニメ・平塚ナナ役を務める葵あずささんによる夢の対談を行った(文中敬称略)。

久米家と多田家の娘たち「お互い共通する暮らしがあったんやね」

ーー久米詩選手のお父さんは元競輪選手で現在は養成所教官の康徳さん、葵あずささんのお父さんは現役競輪選手の多田司選手です。今日はいろいろな話を聞かせてください!

 よろしくお願いします。競輪選手の娘さんにまさか声優さんがいるなんて本当に驚いたよ。あーちゃん、今日の対談どうぞよろしくね!

 リンカイ!Project平塚ナナ役の葵あずさです。久米詩選手と対談できるなんて嬉し過ぎて緊張し過ぎて…。今日はよろしくお願いします。あ、今日は「あーちゃん・うーちゃん」の呼び方で行きませんか?って誘っておきながら早速間違えちゃいました。

 徐々に、でええよ(笑)。同い年やし関西出身も一緒やし、競輪選手に育てられた娘同士やし。すぐに仲良くなれるよ。

 ありがと! 控室であいさつした時に同年代トークで盛り上がろうとして大失敗してから緊張が深まっており…。でもうーちゃんのおかげで行けそうになってきた!

 さっきはまったく噛み合わなかったよね! スタッフさんたちもざわざわしてたわ(笑)

 『あの二人…、これから対談…、平気だよな…?』ってなってたね(笑)。それはそうとまずは何から話しようか? 小さい頃の話とかかな? 娘トークって。

 それでいこう! お父さんって開催に入る前と後に家族に電話してこなかった? 久米家では私がその電話を取る役目が多かった。「今から行ってくる」ではじまって3日、4日経って「これから帰る」みたいな感じで。電話取った私がお母さんに伝言するフォーメーションやったな。

 多田家は電話全然なかった! いつの間にかお父さんがいなくなっていることに気づいてお母さんに「お父さんはレースで競輪場よ」って聞く感じ。

 久米家と全然違う! 帰ってくる時も連絡なし?

 うん。知らないうちに帰ってきてた。でも「あーもしもし? 落車してもうたわー。入院してからそっち帰るわーよろしく!」って電話あったのは覚えてる。アクシデントがあった時は連絡くれてたのかも!

 いつの間にかいなくなってレースを走ってて、いつの間にか家にいるお父さんおもしろいな。

 でも帰ってくると日本のどこらへんに行ってたのかわかるの。リンゴのお菓子をみつけたりして、今回は青森だったのかなって。ねえ、お土産ってとても多くなかった?

 それゼッタイ“競輪選手の娘あるある”だね! 私も地方のお土産は頻繁に食べてたと思う! 青森ならリンゴだし、佐世保バーガーとかも記憶にあるよ。

 それそれ! 自然と各地の名産品に詳しくなっていた気がする。

 わかる! ねえ、これもあるあるじゃないかな?「土日でもない祝日でもない、ド平日に家にいるお父さん」なイメージ。

 ある(大笑)。あの人なんの仕事をしている人なんだろうって!

 レースではない限り運動会とかのイベントには高確率で出現(笑)

 わかる! ちゃんといた!

 やっぱり共通する暮らしがあるんね。

 暮らしと言えば「お父さんの成績で生活が変わる」も記憶にあるなあ。

 シビアな話を投げ入れてきたね! 羽振りそのものが変わるというアレ。

 お父さんが成績良かったころに「ディズニー行くぞ!泊まりや! ミラコスタや!」って威勢よく家族でおでかけしたの。私は三姉妹なんだけど「ミッキーだ!ミニーもいる! パレードだ!ワーイ」って大はしゃぎ。お父さんも張り切って「3人にはお土産買うたるわ!」って張り切って。そんな年もあれば、落車をしたり、怪我をしたり。降級したって年もある。そんな年はお母さんの身構え方にも力が入る!

 そりゃお母さんも身構えるよね! 「旅行? いいじゃない、行かなくたって」的な(笑)。競輪選手には落車や怪我もあるし、成績不振、降級だってある。これは私たち娘からも感じる空気のアップダウンはあったよね。

 うん。賞金で生きる、って大変なことだと思ってた。

 固定給じゃないからね。あーちゃんから見てお父さんはどんな人だった? 思い出エピソードみたいなのある?

 優しくて面白いお父さんだったよ。思い出に残っているのは、たまに私を幼稚園に送る時に「あーちゃん、グラグラやるか?」って聞くの。毎回「グラグラやる!」って答えてて。そうするとほんの一瞬の時間だけど、ママチャリで猛スピード出してくれるの。チャイルドシートで大興奮してたし、その“グラグラ”が最高だったなあ。尊敬しているし、反抗期もなかった。うーちゃんはどう?

 うちも優しかったよ。多田家の“グラグラ”は久米家の“おんぶダッシュ”だね! やっぱりパワーに物を言わせてくるお父さんになりがちなのかな、競輪選手パパは(笑)。でも私があーちゃんと違うのは反抗期しかなかった点だね。私は競輪選手を目指してから仲良くなった感じ。私が学生時代から寮に入ってたのもあるけど、とにかく全然話をしなかったな。今考えると高校3年くらいまで。

 意外! 久米家は父娘が仲良くて、その流れでうーちゃんも選手になったんじゃ?

 ううん、全然。そのイメージはおそらく「お父さんが元選手の教官」で「その娘」として記事になってたからだよね。長い長い反抗期も終わって選手になってからの記事。だから意外なのかも! 選手を目指したのはお父さんからの提案とか勧誘じゃないよ。

 高校3年くらいまでの長い反抗期ってはじまりはいつ頃になるの?

 私が自分で記憶しているのは小学4年からなんだけど、周りが言うには、すでに小学2年からヤスノリのことを蹴り始めていたらしいんよ。

 言い方(笑)。でも小学生中学年〜高校3年くらいまで反抗期で、どうやってお父さんと同じ競輪選手を志したのか、とても気になる。

 志したって感じじゃなくて、単に進路を決める時にやりたいことがなかった。テニスをやってたんだけど、大学へ進学して続けたとしても、それで食べていくには厳しそうな見込みでね。“その後”が見えないなら、そもそも進学する目的もないわけで。その行き詰まってた時期に「競輪やってみようかな〜」ってフワッと思ったの。小さい頃に「お父さん競輪選手なの?すごいね、かっこいいね」って言われた記憶があって、競輪選手はすごいって言葉のイメージに引っ張られていった。

 やりたいことがない中で、“すごい職業”として「競輪選手」が急浮上したんだね。それでお父さんに相談した?

 うん。そのタイミングで父娘の会話が復活した感じ。でも「絶対に私は競輪選手になる!」って感じじゃなくて「ひとつ競輪でもやってみるか〜」って本当にナメてる温度だったのね。それが災いして穏やかで優しいお父さんを一度だけ本気で怒らせた。

 絶対やばそう。

 選手を目指し始めたころ、師匠の指導方針で「最初は自転車練習が嫌いにならないように」と軽いメニューだったの。選手になった今考えるとウォーミングアップにもならない軽い練習を組んでくれてた。でも当時の私、ローラーに10分も乗れんくて。そんな軽いメニューなのに、当時は「だるいなー」って思いながらやってた。

 やばそう。こわい。

 お父さんが車で練習場所へ送り迎えしてくれてたんやけど、ある日ウエイトトレーニングをするジムに送って貰う前に「今日休みたいな〜しんどいんだもん。やだな〜。ねえやっぱ今日は休むよ」ってグズグズ言ったのよ。ほどなくして完全にお怒りになられました。

 おもしろい言い方しないでよ(笑)

 「競輪に足を踏み入れるな」という温度で怒るお父さんは見たことなかった。

 お父さんは半端な気持ちじゃ娘が怪我をすると思ったのかな。

 それとは違うと思うんよ。選手になって今ままでやってきてわかるんだけど、お父さんが命を懸けて戦ってきた「競輪選手」という職業を侮辱された感覚になったのだと思うよ。どんな選手も強くなるには覚悟が必要なんだよね。

 なるほど。それで心を入れ替えてリスタートしたんだね。

 いや。怒られたし試験もあるし、練習には休まず取り組むようになったけど、意識は全然低かったよ。内面ではナメてる態度はなかなか抜けてなかった。私がそんなことをやっている時にあーちゃんは? 声優になるためにどんな行動をしていたの?

競輪選手と声優は似ている「どんな仕事も同じなのかもしれないね」

 私は事務所に所属するためのオーディションを受けながら、全然突破できなくて、大阪の養成所に4年間通ったよ。声優のオーディションは声や演技だけじゃなくて「特技・経験」が強みになることがあるから、資格を取るために調理師学校にも通った。実は調理師免許を持ってるんだ。

 すごい! 事務所に入るためにオーディション。実際に仕事をもらうのもオーディション。審査、審査の連続だね。

 うん。一次審査、二次審査、三次審査ってあって。なかなかオーディションも通らなくて、先が見えない日々だった。

 競輪の勝ち上がりと似ている勝負の世界だね。あーちゃんが不合格だった時に合格した人もいるんよね。勝者がいる。そういう勝ち負けってしんどくなかった?

 しんどかった。万全の準備をして、準備し切って本番でうまくいかなかった時。絶望して準備のプロセスが走馬灯のように頭を流れて苦しかった。帰り道にだんだん悔しくなってきて何がまずかったのか課題見つけて。家に帰って次に向かって燃えはじめる。の繰り返しがまたしんどい!

 その気持ちわかるよ。まるで競輪選手のレース後! 実力主義の世界はみんな同じなのかな。でもさ、今の話だけど、負けるとしても準備し切って負けんといけんよね。しんどくても。万全に準備しないと本当の課題なんて見えない。反省する時に「もっと準備すべきだった」みたいな反省になっちゃうから。

 うーちゃんの言葉はすごい。本当にそう思う。振り返ればしんどかったけど、今回のリンカイ!Projectで平塚ナナちゃんっていう役がもらえて、トップ選手のうーちゃんと話せる機会までいただけて嬉しいよ。

 ありがとう。私も楽しいよ。さっき一緒に休憩した時に“自己投資”の話になったやん。私もパーソナルトレーナーがいて、あーちゃんもボイストレーナーがいる。だから案外トレーニングの生活スタイルも似ているのかもって思ったよ。こんなに共通点がある職業とは思わなかった。

 私も共通点の多さに驚いたし、うーちゃんの話がとっても面白い! ねえ、話を戻してもいい?

 もちろん。

 リンカイ!のアニメは養成所から始まるの。だから久米詩候補生時代の話を聞きたくて。

強くなるためには“覚悟”が必要になる

 さっき養成所試験前の話を聞かせてもらったとき、意識が低かったっていうのが意外で。どんな養成所時代だった?

 養成所時代、私は116期で入所して女子は21人。私はトレーニングしてもタイムが全然出なくて、下から数えてすぐ私の名前がある感じだったよ。

 今年の成績を知っているから、とても信じられない。

 それだけじゃないよ。競走訓練とか模擬レースもあったけど、どの位置で走ろうが、どんなにチャンスな展開が巡ってこようが5着、6着、7着で走り終えるわけ。いつも、なんで!? って思ってた。

 その養成所時代からどうやったら今みたいに強い選手になれるの?

 私はまだまだだよ。でも養成所を卒業してデビューして選手を続けてきて今思うのは、成長と覚悟はセットだってこと。私の場合、競輪をナメているところからはじまっているから、一回、二回の話ではなくて、ここまで何度も気持ちを入れ替えたよ。その都度その都度で覚悟を持ってやるようになっていった。いちばん最初は“焦り”だったけどね。

 覚悟。重みを感じる言葉。焦りっていうのは?

 養成所を3月に卒業して、7月にレースデビュー。卒業して最初に思ったことは「4か月で成長しないと100%お払い箱直行やと思った。今の意識と比べれば、当時もまだ競輪をナメてるんやけど、わかりやすい焦燥感があるから多少は必死にやるようになった。お父さんの言うことを聞くようになったし、バイク誘導をしてくれる人のアドバイスを聞いて「ひたすら少しでも長い距離を踏めるように」って練習に明け暮れたよ。「やばい!時間が足りない!やばい!」って気持ちでのめり込んだ。

 デビュー戦は自信を持って迎えられた?

 自信どころか「終わりやん」って7月を迎えることになった。先にデビューした同期の在所順位ナンバーワンが7着、卒業記念レースのチャンピオンも6着の苦いデビューになったんよ。それが信じられんくて。これ嘘やろって。最後の追い込み練習は焦りを通り越してできることをやり尽くしたよ。生き残るのすら絶対無理やんって思いながら。

 うーちゃんの競輪人生のスタートは焦り…。

 そう。その感情しかなかったよ。でも選手を続けていくうちにレースで通用することが増えていくのが面白くなって。「ここは勝ちたいな」「次は勝ちたいな」って少しの目標が出てきたの。でもそれは「タイトルを獲りたい」みたいな具体的なイメージではなくて。具体的な目標を決めないとその目標から逆算してのトレーニングもできない。当然のごとく成績も伸び悩んでいく。そこで変わらないと上には行けないって気づいた。

 うーちゃんは時間をかけて自分と向き合って変わろうって覚悟を固めたんだ。ナショナルチームの練習に参加を志願した話とも繋がる?

 繋がるよ。パーソナルトレーナーをつけたり、ナショナルチームの練習に参加させてもらったり。たくさんの人の力をお借りしながら、自分を変えられる環境を整えて、覚悟して取り組んだ。今年の成績は「タイトルを獲る」とか「グランプリに出る」とか具体的に意識を向けて覚悟して毎日を生きられたから得られた結果だと思う。でも、もっと上のレベルに自分を引き上げないと…って、実は今の今も葛藤しているよ。

 ストイック過ぎる…。すごい! グランプリの意気込みも聞きたいよ!

今年1年を振り返って「残りの日々もまだまだ成長痛を感じたい」

 グランプリの意気込みか。その前にあーちゃんの1年を教えてよ。どんな2023年を過ごしたの?

 この1年は“初めて尽くし”の1年だった。スタジオオーディションに進んだのも初めて、しっかりと役があるキャラクターを演じられるのも、このリンカイ!Projectの平塚ナナちゃんが初めて。生放送出演も大きなイベント出演もキャラPVの収録も初めて。めそめそすることもいっぱいあったけど、絶賛成長中!って駆け抜けてきた1年でした。理想は「こいつ新人なのにやりやがる!」って思われることだけど、現実は全然。でも理想を高く持って、今年の残りの日々もまだまだトライして、成長痛をガンガン感じていくつもりです。

 素晴らしいって思うよ。成長痛って表現もええね。あーちゃんさ、役作りのために「競輪選手になるためのセミナー」にも参加したんでしょ。そんな本格的に貪欲にやるんやって驚いたよ。

 リンカイ!の声優のみんなで許可をとって参加させてもらったよ。平塚競輪場でワットバイクを体験したり、バイク誘導の練習を間近で見たり。競輪選手を目指している人達の質問に現役選手が答えてくれるQ&Aに参加させてもらいました。すべてが勉強になった。声優の仕事は見る・聞く・知るがとても大切になるんだけど、絶対に演技に活かしていきたい経験をさせてもらえた。

 アニメ楽しみにしてるよ。でもさ、素人からするとよくわからないのが、声優さんの“立ち位置”というのかな。演じるキャラクターのイメージありきだと思ってた。役のイメージに寄り添うことがすべてで、例えばクールな役ならクールなイメージに徹するみたいな。その役に声を吹き込む人の経験とか思いってむしろ引っ込めておいた方がいいんじゃないかと思ってたから、違うんだなって。もっと奥が深いんだね。

 『こんにちは』ってセリフがあったとして、クールなキャラクターが小さい声でぶっきらぼうに言うのか、声自体はクリアにハッキリしているのか。そういう強弱でも“クール”のイメージが変化するかもしれない。そのキャラクターの人生を想像して追いかけてみて、こういう風に『こんにちは』を発するだろうって自分の中で消化したいんだ。どんなドラマを辿ってきたんだろう?と想像して自分に近い経験はなかったかな?を探す。もしもあったのなら、きちんと声に演技に投影した方が良いと思うんだ。“クール”みたいに大多数の人が抱く“なんとなくのイメージ”がわかりやすいものほど、そういう準備を徹底したくなるよ。

 なるほどね。今のわかりやすかった。

 でもうーちゃんの言う通りな面もあるんだ。自分がどんなに「これが正解!」って思っても、深いところに行き過ぎて聞いている人、観ている人に伝わらなければ、それはリテイクになる! それでもいろいろな気持ち集めをして、準備しておきたい。

 難しそうで大変そうだけど面白いね!それにしても“気持ち集め”か。表には出ない地味な作業の連続っぽいね。競輪選手だとローラー練習みたいな感じなのかな?

 うん、ひたすら地味だと思う(笑)。

 どんな世界も実力勝負の安定できない仕事は地味な努力が大切だね!

初出場のガールズグランプリ「なくはないって思ってる」

 ありがとう、うーちゃん。さて、今度はうーちゃんの番ね。今年はどんな1年だった?

 私の1年も“初めて尽くし”で盛り沢山だった。同じだね! 初めてガールズケイリンにGIができて走れたし、初めて平塚のコレクションでタイトルを獲れた。その後の函館のフェスティバルも初めて獲れたし、初めてグランプリにも出場する。大激動の1年だったよ。「進みたいのに進めない、立ち止まりたくないのに立ち止まる」みたいなことも短いサイクルで何回もあった。勝てて楽しいだけだったのが、勝てて楽しいけどしんどい、みたいにもなった。でもそのしんどいの含めて充実感になっていて。なんか大袈裟かもだけど、人生自体を一生懸命に生きたぞって1年でした。

 大躍進の1年で最高だね! あのさ、『勝てて楽しい、けどしんどい』はどういう…?

 レースで勝てても、もっと上のレベルに行かないといけないと強く感じたのね。特に今年の後半は。もっと上に行くためには覚悟が必要で、挑戦しなくちゃいけないことも変えなくちゃいけないこともあるんよ。挑戦してうまくいかないかもしれない恐怖もある。現状維持でいいやっていうのも、逆に賢明な判断だったりもする。それでも上を目指す覚悟を持てるか持てないかみたいなところで意識が右往左往することが多くて、“しんどい”って思うことが増えたんだ。

 なるほど。競輪選手は難しいね。勝って楽しいだけではない。勝つのがゴールではないんだ。そんな後半戦を過ごして、いよいよ初出場のガールズグランプリだね。もう私、すでに感極まってきちゃった…! どうしよう!

 あーちゃんはガールズグランプリってどんなイメージ?

 選手からすると違うのかもしれないけど、“頂上決戦”みたいなイメージ。その年のガールズケイリンの一番を決めるレースという位置づけで観てるよ。今年はリンカイ!で競輪にも多く関わってきたから、過去のグランプリよりもさらに熱く注目しちゃう。

 今年ってGIも新設されたし、どのGIの決勝も振り返るとめちゃくちゃ強力なメンバー同士が戦っているし、それだってひとつの頂上決戦なんだけどね。でもグランプリは選手みんなが出場したいって思う開催だし、1年かけて出場権利を争うわけで。選手たちの集大成みたいな、どこか神聖な感覚があるんよ。出場が決まってから、その神聖な感じを沸々と感じているよ。

 自信のほどは? とか立川バンクとの相性は? とか聞いても大丈夫なもの?

 もちろん! 自信のほどは「自信がある、なんて言えん」って感じ。どう気持ちを表現したらええんやろ? (20秒ほど言葉を考えて)正確に気持ちを言うと「なくはないって思ってる」かな。チャンスがあるはず。だからそのチャンスを手繰り寄せるために、目の前にチャンスがあったら絶対に掴めるように準備したいって思う。立川バンクの相性は…。あーちゃんて「バンクが軽い・重い」って意味わかる?

 よくわからない。33バンクは軽くてスピードが出しやすくて、とかは聞いたことある。

 そうそれよ。33バンクに限らず400バンクで軽いバンクもあるし、坂道の下りを風を切りながらシャーってスイスイ進むのが“軽いバンク”のイメージね。

 なるほど。

 その逆で、坂道を上がっているように自転車が進みにくくて、ずっと負荷がかかっているような感覚になるのが重いバンク。立川は“重いバンク”ね。今は走り方を改善しているから一概には言えないんだけど、私って素材的には力任せにペダルを踏んで行きたいタイプなの。その私の性質と立川の重いバンクってまあまあ相性はいいんよ。

 楽しみで仕方ない! けど緊張する! うーちゃん緊張しないの!?

 するする、全然する。でも緊張で心揺さぶられないようにはできる。なんにも考えないの。緊張すると「未来に対する不安&過去のトラウマ」の両方に引っ張られる。先行しても最後は失速して捲られちゃいそうとか未来を不安に感じるし、過去のトラウマを引き込めば、この前は捲りに行って届かったからなーとかね。だから「今」だけに集中する。シューズを履こうとか。そういうことに。未来にも過去にも答えはない。後から「あれしとけばよかったー」って思わない準備を徹底してから乗り込むよ!

 カッコよすぎる! 「未来に対する不安、過去のトラウマに引っ張られないように今に集中する」は声優の活動にも繋がる話。私も不安を恐れず、失敗を振り返らずに今年1年を駆け抜けてやる! モチベーション上がってきたー!

エンディング 〜葵あずさ演じる平塚ナナについて〜

 それではあーちゃんのモチベーションが上がったところで、平塚ナナ選手の宣伝で締めてみましょう。

 この流れで…! え、どうしよう。平塚ナナちゃんは日本人の母と自転車選手のフランス人の父を親に持つ日本人離れした選手です。口下手だからクールに見られがちだけど、抜けたところもある天然キャラ、ってホームページに書いてあります。

 平塚ナナちゃんがクールでちょっと天然でエリート系の選手って特徴はとてもよくわかったけど、ホームページ任せって(笑)。

 緊張しちゃって! あのね、私好きなセリフがあって。『私は特別じゃない ただ誰よりも速く走りたいだけ』っていうセリフなんだけど。この役が決まった時に平塚ナナちゃんの情報を見て「めちゃくちゃ特別じゃん…」って思ったのね。私、声優・葵あずさは何も特別なものなんて持ってないから。

 うん。資料見させてもらって思ったよ。自転車競技と競輪の二刀流選手で、フランス人の自転車選手の血筋でエリート。自然に考えれば特別枠感はすごいよね。

 でも演じるにあたって、今日うーちゃんが話してくれた覚悟の話もそうだけど、競輪選手って、それぞれ選手みなさんの努力があって、それがぶつかり合うレースがあって。そういうのを勉強していくうちに心底「ナナちゃんは誰よりも速く走りたいだけで、それは選手として特別なことじゃないんだ」って思えたの。それで心底「私は特別じゃない」って気持ちを落とし込んで、声で表現できたんだ。

 響くプレゼンでした。その声、聞きたくなるわ。アニメがはじまるの楽しみにしてる。

 そのセリフはすでにホームページで聞くこともできるのでぜひ。

詩&葵 そこでまたホームページ(笑)。

 うーちゃん、今日の対談トーク本当にありがとう。

 こちらこそ、ありがとう! とっても楽しかった! 2023年、最後まで振り返らずに、お互い走り切るよ!

撮影協力:リンカイ!Project
カメラマン:飯岡拓也
Hair & Make-up:堀川 知佳、千木良歩
取材・構成:netkeirin編集部 篠塚 久

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