2023/01/18(水) 18:00 0 5
現役時代、ロサンゼルス五輪で自転車トラック競技日本人初となるメダルを獲得し、競輪ではKEIRINグランプリやオールスター競輪といったビッグレースを制したレジェンド・坂本勉氏。“競輪”と“ケイリン”を知り尽くした坂本氏が、新ケイリン「PIST6」のレースを振り返ります。(月2回・不定期連載)
netkeirinをご覧のみなさん、坂本勉です。今回は1月14日・15日に行われた「PIST6 Championship(ピストシックス チャンピオンシップ)」のフォースクォーターU35バトルの決勝レースを回顧していきたいと思います。
【PIST6 ChampionShip2022-23 フォースクォーターU35バトル 決勝レース動画】
今回は35歳以下(オーバーエイジ枠含む)のシリーズということで、出場選手にも若い自力型が揃い、予選から面白いレースが続いていました。
こうした若い選手たちの中には高校、大学で自転車競技を経験しており、カーボンフレームの走りにも慣れています。また、主な大会は「伊豆ベロドローム」で行われており、日本競輪選手養成所にも屋内型のコースがあるので、若い選手たちの方が250バンクを苦にしていないような印象を受けます。
今回のシリーズ参加で改めてカーボンフレームや、250バンクの走りを掴み直した選手もいるでしょう。また、自転車競技の“ケイリン”を走ってきた選手にとっては全く違和感が無かったはずです。今後は他の若手選手たちにもどんどんPIST6に参戦してもらいたいですね。
決勝のスタートの並びはインコースから②山田義彦⑤長谷部翔④長田龍拳①橋本壮史③中島詩音⑥望月一成となりました。このうち、オーバーエイジ枠は山田だけ。その山田も含めてシリーズの優勝経験があるのが中島と望月になります。
この6人を見た時に、優勝に近いのは橋本と中島。その2人に割って入るとするのなら山田と望月になると見ていました。
まだシリーズの優勝経験はない橋本ですが、今年早々にS級2班へ特別昇級を果たしているように競輪は絶好調。また、久しぶりの参戦となったPIST6でも、今シリーズはタイムトライアルで1位となっただけでなく、そのスピードを生かすかのような、積極的なレース運びで決勝へと進んできました。
その橋本と同じく早めの仕掛けから連勝を重ねていったのが中島です。中島はサードクォーターラウンド8の準決勝で、連勝が「14」でストップしてしまいましたが、今シリーズではその悔しさを払拭するような走りを見せていました。やはり後方に待機するのではなく、自分の持ち味でもある“積極性”を出した方がいいと思ったのでしょう。この辺の中島の修正能力はさすがだと思います。
山田と望月からすると、予選から同じような走りを見せていて、しかも、同期(119期)の2人が意識し合うような走りをしてくれれば、その間隙を縫っての逆転もあると考えていたのではないのでしょうか。
スタート位置が良かったのは最内枠となった山田でした。一方、橋本と中島は「もう少し前に行きたい」と思っていたはずであり、6番手の望月は「前の2人の動きを見ながらレースを組み立てたい」と考えていたはずです。
「PEDAL ON」で先に動き出したのは橋本です。それまでのレースでは残り1周半からポジションを上げていき、残り1周で先頭に立つレースをしていただけに、ここでの動き出しは意外でした。それは山田を交わして早めに先行するのではなく、自分が動き出すことで、後ろにいる中島を動かしたいとの狙いがあったと思います。橋本は中島の番手を狙っての動き出しだったように思えます。
ただ、5番手から上がっていった中島の後ろにしっかりと付けていたのは、その後ろにいた望月です。中島と望月は準決勝でも戦っており、その時も早めに動き出した中島の番手につけて2着となっています。望月も中島の番手が優勝に最も近いポジションと思っていたに違いありません。
中島の番手には行けなかった橋本ですが、それでも3番手は充分に優勝を狙えるポジションです。ラスト1周でついに橋本が動き出します。ここまでは想定通りのレースだったと思いますが、その動きを察知した望月も上がっていったことで、若干外側に振られてスピードが落ちます。
一方、中島を交わしに行った望月ですが、2周以上は駆けているはずの中島の先行をなかなか交わし切れません。最後の直線でようやく自転車を並べますが、中島が1/4車輪差だけ残していました。3着には橋本の捲りから望月の後ろに切り替えた山田が入っています。
このレースの中島は本当に強いと感じました。この決勝メンバーを相手にしながら、最も大きなレースを見せてくれただけでなく、橋本のスピードや、望月のマークも振り切るような走りは大したものです。“本物”と言っていいでしょう。
それだけに悔しいのが2着の望月でしょう。レースの後のコメントを聞いていても、相当悔しかったのではないかと思います。決勝ではほぼ2周は脚を使わずにレースができていましたし、しかもS級の自分がA級の中島を交わせなかったわけですからね。
その望月も「強かった」と話していたように、PIST6での中島は競輪のクラスなど関係ないと言わんばかりの走りを見せています。今の中島ならばS級の選手どころか、河端朋之といったナショナルチームの元強化指定選手たちを相手にしても、互角以上の走りができると感じています。
競輪における中島は捲りではいい走りをするものの、先行するには末脚が見劣る部分がありました。ライン戦で早めに動き出さなければいけないレースもあるので、勝ち切れないこともあったでしょう。ただ、PIST6で連勝を重ねるようになって以降は走りも良くなり、来季からのS級昇格も決まっています。
競輪とPIST6の相乗効果が、中島にとっていい流れになっている印象を受けます。PIST6ではまた連勝を重ねていきながら、次は「最多記録更新」となる5度目の優勝を目指してもらいたいです。それにしても今シリーズのような試みは改めて面白いと思いました。競輪だけでなくPIST6でも若手選手は力があります。特に119期の活躍が目立っていると再確認できましたし、今後も中島や橋本、そして木村皆斗などの「同期対決」が楽しみになりました。
決勝で最も大きなレースをしただけでなく、見事に勝ち切ってくれた中島ですね。今後もこの強いレースができるのならば、連勝記録は更新できると思います。また敢闘賞は橋本です。今シリーズは同期の中島に優勝を許しましたが、これでPIST6の走りに慣れたとも思うので、次に参戦してきた時には優勝も期待できる選手に間違いありません。
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●坂本勉(さかもと・つとむ)
1984年、ロサンゼルス五輪に出場し銅メダル獲得。日本の自転車競技史に初めてメダルをもたらし、“ロサンゼルスの超特急”の異名を持つ。2011年に競輪選手を引退したのち、自転車競技日本代表コーチに就任し、2014年にはヘッドコーチとして指導にあたる。また2021年東京五輪の男子ケイリン種目ではペーサーも務めた。自転車トラック競技の歴史を切り開いた第一人者であり、実績・キャリアともに唯一無二の存在。また、競輪選手としても華麗なる実績を誇り、1990年にKEIRINグランプリ、1989年と1991年にはオールスター競輪の覇者となった。現在は競輪、自転車競技、PIST6と多方面で解説者として活躍中。展開予想と買い目指南は非常にわかりやすく、初心者から玄人まで楽しめる丁寧な解説に定評がある。