2022/12/21(水) 18:00 0 7
現役時代、ロサンゼルス五輪で自転車トラック競技日本人初となるメダルを獲得し、競輪ではKEIRINグランプリやオールスター競輪といったビッグレースを制したレジェンド・坂本勉氏。“競輪”と“ケイリン”を知り尽くした坂本氏が、新ケイリン「PIST6」のレースを振り返ります。(月2回・不定期連載)
netkeirinをご覧のみなさん、坂本勉です。今回は12月17日・18日に行われた「PIST6 ChampionShip2022-23(ピストシックス チャンピオンシップ)」フォースクォーターラウンド3の決勝レースを回顧していきたいと思います。
【PIST6 PIST6 ChampionShip2022-23 フォースクォーターラウンド3 決勝レース動画】
今ラウンドで注目を集めていたのが、中島詩音と鈴木浩太の“119期対決”でした。セカンドクォーター PIST6カップ2、サードクォーター PIST6カップ1、サードクォーター ラウンド8と3つのラウンドを続けて完全優勝していた中島詩音と今ラウンドでタイムトライアル1位となり、3度目の優勝を目指す鈴木浩太は優勝候補に違いありませんでしたからね。
ただ、結果は両者ともに準決勝で敗退しています。中島は二次予選まで(前開催からカウントして)無傷の14連勝。準決勝もメンバー的に勝ち上がれそうだなと思っていましたが、気になったのが5番車というスタート位置でした。
また一次予選、二次予選ともに自分で動いていい位置を取りに行くのではなく、脚を溜めて残り2周から動き出していました。この準決勝でも同じようなレースをしていましたが、後方からのスタートに加えて、前の仕掛けを見過ぎたばかりに、先に真船圭一郎に駆けられてしまいます。
慌てて後方から捲り上げていきますが、真船の牽制で外に振られただけでなく、真船の後ろを狙おうにも、先に志智俊夫に入られてしまいました。その後の決定戦では、鈴木との叩き合いを制しただけに勿体なかったですが、これも連勝記録を途絶えさせないために意識し過ぎて、どこか消極的なレースをしてしまったのではと思います。
同じく準決勝で敗れた鈴木ですが、むしろここは勝った隅田洋介に恵まれた展開となりました。鈴木と隅田は二次予選でも一緒に走っており、この時もまた、前をいく鈴木をマークする位置でのレースとなっています。ただ、二次予選とは違い、準決勝では隅田が先着していますが、2着に入ったのが、1番車のスタートから突っ張り先行のような形でレースの主導権を握っていった中西大です。
中西は競輪でも積極的な先行を見せており、1番車となった準決勝でも引かないだろうと思っていましたが、残り1周半で捲ってきた鈴木に叩かれて一時は3番手となります。ただ、ここでハマると、2番手となった隅田が捲っていった時に乗っていき、結果は2着。どこにそんな脚を残していたのかと思いましたし、改めてS級の実力者たる能力の高さを示してくれました。
決勝のスタートの並びですが、インコースから①東矢昇太④中西大⑥志智俊夫③隅田洋介⑤鹿内翔②真船圭一郎となりました。
ここまで3連勝で来ていたのが東矢と真船です。タイムトライアルでは2位、しかも、1番車となった東矢が有利に思った方もいるでしょう。ただし東矢は競輪と同様に、このPIST6でも捲りを見せることが多く、この車番を生かして突っ張って先行していくタイプではありません。
一方、競輪でも先行を見せている真船は、ここまでの3レースで全てバックを取ってきています。ただ、この決勝では6番手という、非常に不利なスタート位置となりました。決勝では「脚を使ってでも」と前を取りに行きますが、それを交わしていったのが志智です。
志智が前を叩いたのは、予選から先行を見せていた真船か中西の後ろを取りたいという狙いもあったはずです。これはレースをよく理解している志智だからこそできた“技あり”の立ち回りでしたね。
東矢は残り2周手前で内に包まれる形で3番手となりますが、ここで一瞬、先団のペースが緩んだのを見逃さなかったのが中西でした。
残り2周で中西が先頭に立ったとき、その後ろを回っていたのは隅田であり、6番手だった鹿内も3番手に上がります。今ラウンドの隅田ですが、二次予選と準決勝は鈴木、そしてこの決勝は中西と、自分からタテ脚を使わずとも、前の選手が動いてくれるという運にも恵まれたように思います。
ただ、カカリ切った中西のスピードもかなりのものです。残り1周、隅田は中西との車間を取っていきますが、第3コーナー、そして第4コーナーに入ってからも、なかなか交わし切れません。ゴール前のハンドル投げまでもつれるレースとなりましたが、1/8車輪だけ前に出ていたのは隅田でした。
3着となったのは、4番手からゴール前で鹿内を捕らえた志智であり、道中で脚を使った分、直線で延びなかった真船が5着、3番人気に支持されていた東矢は6着に敗れています。
東矢はタイムトライアルの時計が示しているようにスピードこそありますが、実力が伯仲している決勝では捲りの戦法だけでは難しいですね。自分から動いて、好ポジションを取りに行くだけでなく、ある程度長い距離を踏むつもりで、積極的に動き出していく必要があります。真船が上がっていったときに、その番手を狙おうとの考えもあったのでしょうが、志智に前を切られたのは想像していなかったと思います。
その意味で志智は、レース巧者ぶりを存分に発揮してくれましたね。ベテランの上手さというか、競輪と同様に追込選手らしく、先行選手の番手といった好ポジションを自らの努力で取りに行くレースを貫いていました。だからこそ、どのラウンドでも決勝に進めているのでしょう。志智が3着に入り、3連単の配当も良くなりましたし、今後の競輪でも、いい刺激になっていく走りだったと思います。
隅田はこれで初優勝となりました。東矢と同じく、捲りが主体の選手でありますが、先ほども書いたように今回は前を走る選手に恵まれましたね。ただ、記念競輪の走りからしても、高い能力を持っている選手だということに疑いの余地はありません。ここに来てようやく勝利の女神がほほ笑んでくれた結果とも言えるのではないのでしょうか。
今ラウンドは準決勝の結果からしても、競輪と同様に「PIST6にも絶対はないな」と感じさせられた大会となりました。中島と鈴木もこの敗戦を機に、まだまだ成長していくはずであり、そして隅田や中西といったS級上位の選手たちが参戦してくることで、まだまだレースも面白くなると思います。ファンの皆さんも、どんな選手が登録されているかといったところから、注目してもらいたいと思います。
念願の初優勝を決めた隅田です。これまでの決勝では勝たなければとの思いも強かったと思いますが、今後は気持ち的にも余裕が出てくるでしょうし、その余裕が出せるようならば、次の大会での連覇もあり得る実力の持ち主だと思います。
そして敢闘賞。これは中西でしょう。隅田と同じように中西も自転車競技出身ではないだけに、この250バンクは不得意なのでは? と思って見ていました。ただ、それは違いました。競輪と同じようにタテ脚を生かして勝ち上がってきたレース内容に、PIST6への対応力も感じました。今ラウンドの結果は自信にもなったと思いますし、次は持ち前の先行力で優勝を狙って欲しいです。
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●坂本勉(さかもと・つとむ)
1984年、ロサンゼルス五輪に出場し銅メダル獲得。日本の自転車競技史に初めてメダルをもたらし、“ロサンゼルスの超特急”の異名を持つ。2011年に競輪選手を引退したのち、自転車競技日本代表コーチに就任し、2014年にはヘッドコーチとして指導にあたる。また2021年東京五輪の男子ケイリン種目ではペーサーも務めた。自転車トラック競技の歴史を切り開いた第一人者であり、実績・キャリアともに唯一無二の存在。また、競輪選手としても華麗なる実績を誇り、1990年にKEIRINグランプリ、1989年と1991年にはオールスター競輪の覇者となった。現在は競輪、自転車競技、PIST6と多方面で解説者として活躍中。展開予想と買い目指南は非常にわかりやすく、初心者から玄人まで楽しめる丁寧な解説に定評がある。