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【PIST6】内なる闘争心“メラメラ”の中島詩音「自分のスタイル崩さず貪欲に勝利へこだわる」/セカンドクォーターPIST6カップ2優勝者インタビュー

2022/09/26(月) 18:00 0 2

2021年10月にTIPSTAR DOME CHIBA(千葉市)で開幕した「PIST6 Championship」。すでに数多くの名シーンや名勝負が生まれているが、PIST6で勝利した選手たちはどのような感想を抱いているのだろうか。今回netkeirin編集部ではセカンドクォーターPIST6カップ2で優勝した中島詩音選手にインタビューを実施した。高校時代から自転車競技に打ち込み、短距離のチャンピオンを決めるスプリント種目では、国体優勝経験もある中島詩音選手。自転車の世界へ飛び込んだきっかけは、高校自転車部の顧問の先生との運命的な出逢いだった。※インタビューはオンラインで実施(取材日:2022年9月13日)

©︎PIST6

■顧問の先生と出逢い、自転車の世界へ

ーーもともとは野球をやっていて、自転車競技は高校に進学してから始められたそうですね。自転車競技を始めたきっかけについて教えていただけますか?

 小学生の頃から野球をやっていたんですが、あまり上手な方ではなく、限界を感じていました。高校では“何か新しいことをやりたいな”と考えていたところ、ちょうど知り合いに高校自転車部の顧問をやっている先生がいて、その方の紹介で自転車をはじめ、その方が教えている高校へ進学し自転車部に入部しました。

ーー野球とはまったく違う競技になると思いますが、実際に自転車部に入部してみてどうでしたか?

 すごく楽しかったです。野球は兄の影響でやっていた感じで、あまり本気で打ち込めなかった部分もあったんですが、自転車はやっていて楽しかったので、これを頑張っていこうと思えました。

ーー初めてバンクの傾斜を見たとき、実際に走ってみたときの感想はいかがでしたか?

 初めて見たときは走れそうだなと思ったんですけど、いざ走ってみると怖くて降りちゃって(笑)。初日は全然乗れなかったですね。徐々に徐々に慣らしていく感じでした。はじめた当初はバンクに怖いイメージしかなかったです。

ーー高校時代はスプリントやチームスプリントといった短距離種目をメインに取り組まれていたんですよね。

 そうです。長い距離が苦手だったので、やっていくうちに短距離だなって。3年間ずっと短距離種目に取り組んでいました。

ーー中島選手の圧倒的な“スプリント力”はどのような練習のもとで培われたんでしょうか?

 顧問の先生の言う通りの練習に励み、成長できました。また高校3年生の時にジュニアのナショナルチームに呼んでいただいたんですが、そっちで練習するようになってからもさらに一段と伸びたような気がします。

ーーなるほど。高校の部活とナショナルチームでの活動の両軸で力をつけていったのですね。その後甲府工業から日本大学に進学されていますが、全国大会優勝経験から数々の大学からオファーがあったと思います。その中で日本大学を選んだ決め手はどういったところにあったのでしょうか?

 顧問の先生が日大出身だったんですが、日大以外の大学はキャンセルされてました(笑)

©︎PIST6

■悩んだ末に競輪選手を志した決め手とは

ーー日本大学へ進学してからも自転車競技で輝かしい成績を収められています。でも大学時代は競輪選手ではなく教員を目指されていたとか?

 はい、顧問の先生の影響もあって、教員になりたいと思ってました。先生はすごく自分たち生徒のことを思ってくれていて、未だにご飯とかも連れて行ってもらっているので本当に感謝してます。今思うと、自分の人生で一番影響を与えてくれた恩師は顧問の先生かなと思います。

ーー「教員」から一転「競輪選手」になると決意した決め手は何だったのでしょう?

 教育実習に行った際に学校で「淡々と黙々と作業をやり続ける感じ」だったことが印象に残っています。頑張っていれば徐々に給料は上がっていくのだろうなとも思いましたが、それほど大きくは変わらないのではと考えた時、自分の頑張り次第で稼げる道に進みたいとも思いました。当時、教員と競輪選手、どちらの道を選択するべきか本当に迷いました。人生で一番と言ってもいいくらい悩みましたが、最後は自転車をやりたい気持ちが強かったので、思い切って決断しました。

ーーご家族や友達など周りの方に競輪選手になるということを伝えた際の反応はどうでしたか?

 危ないし、安定してないしということで、母親にはもうめちゃめちゃ反対されましたね(笑)。ただ父親は競輪選手になることを応援してくれてたので、一緒に母親を説得してくれました。最終的には、母親からも「行きたい道があるならそっち行きな」ということを言ってもらえてよかったです。

ーー日本大学は自転車競技の名門ということもあり、競輪選手も数多く輩出しています。今でも親交のある選手はいますか?

 同期の谷口くん(谷口力也熊本・119期)とかはたまに連絡取ったりしてますね。

ーーちなみに、自転車競技部の同期である武山晃輔(たけやま・こうすけ)さんの2018年のツイートに「身体が大きすぎてサーフの給油口レバーが届かない」と書かれていました。当時から今くらいがっしりした体型だったんですか?

 座ったまま給油口開けようとしたら届かなくて、それでいじられましたね(笑)。大学時代からウエイトトレーニングを始めていたので、当時から大きかった方だと思います。

©︎PIST6

■サドルの違和感に気づくも調整の末、見事優勝

ーー続いてPIST6についてお聞かせください。PIST6カップ2(8月15・16日開催)へは約4か月振りの参戦となりました。オールA級戦でしたが、どのような気持ちで臨みましたか?

 久しぶりで不安というのはありました。でもオールA級だったのでいつもよりはリラックスできる部分もあり、どれだけ自分の力が出せるかってところにポイントを置いていました。「自力出して勝ちたい!」と思っていたので、その通りになってよかったです。

ーー前検日ではカーボンフレームやサドルに違和感があったようですが、それはどのような違和感だったのでしょうか?

 サドルが壊れてしまって、そのサドル自体がもう販売してなかったので、全く別物のサドルを使うことになりました。またPIST6には久しぶりの参戦だったので、カーボンフレームにもあまり乗れていなかったので、実際に走ってみて違和感を覚えたんです。

ーー1日目〜2日目にかけて機材に対する違和感をどのように調整していったのでしょうか?

 レースの合間にローラーに乗ってちょっとずつサドル位置をズラしてっていうのを繰り返してました。その甲斐あって、1日目が終わった時点である程度は以前のポジションに近づいたかなと思います。

ーー決勝戦はオッズ1.0倍でしたが、やはりプレッシャーはありましたか?

 めちゃめちゃ緊張しましたね(笑)。

ーーその決勝戦では残り2周回のホームから駆ける形となり、長い距離を逃げる形となりましたが、これは想定していた展開でしたか?

 はい。野中祐志さん(埼玉・98期)が前に出たときは動かずに、後はうしろから何人か出てきたタイミングで一緒に出ていこうと考えていましたし、ある程度想定していた展開でした。

ーーちなみにレース前にいくつも展開のパターンを考えているんですか?

 そうですね。何パターンか考えてレースに入ります。でも想定していない展開になることも多々あるので、そういう時は瞬時に判断しています。

ーー結果、見事完全優勝を決められました。1着でゴールした瞬間の気持ちを教えてください。

 本当に嬉しかったですね。これまでのレースは自分の思い通りのレース運びができなかったので、今回は自分から動いて、最後に差されても悔いのないレースができました。

ーー参戦5回目で初優勝となったわけですが、これまでのPIST6の結果を振り返っていかがですか? オールA級戦を優勝したことでS級A級混合戦への思いは変わりましたか?

 もともと級班は関係なく割り切って戦っていますが、オールA級戦で勝ったことで「次はS級A級混合戦で勝ちたい」っていう気持ちに現実味を感じました。

©︎PIST6

■高校時代からの愛車「BT」のフレーム

ーーちなみに高校時代からカーボンフレームに乗っていて慣れていると思いますが、PIST6でのレースに慣れるのも早かったでしょうか?TIPSTAR DOME CHIBAの走路の感触をはじめ、使用されているギヤ倍数4.85の感覚、ハロンタイムの納得度なども教えていただけますか?

 TIPSTAR DOME CHIBAは伊豆ベロドロームと比べても、個人的にすごく走りやすかったので慣れるのは早かったと思います。ギヤに関しては今より低いギアも高いギアも試したんですけど、4.85がしっくりきているので感触はいいですね。でもハロンのタイムに関しては大学のときのベストと変わっていないので、もうちょっと出したいなという思いがあります。

ーーPIST6初参戦のときから乗っている「BT」のフレームや前に履いているバトンホイールは日本大学時代から愛用しているものですか?

 ホイールは選手になってから新しく買ったホイールを使っています。フレームは大学時代から使っているフレームですね。ただサドルは変えたりしているので、試行錯誤しながら自分がしっくりくるポジションに合わせてます。

ーー機材のセッティングで特にこだわっている部分はありますか?

 特にこだわりはないんですが、ちょっとかっこよく見せたいくらいですかね(笑)。今乗っているフレームは少し小さいんですが、その分ステムとシートポストを長くセッティングしているので、それがかっこよくて気に入ってます。自分が乗るときにテンションが上がるようにセッティングしてます。

ーー今後乗ってみたいフレームはありますか?

 実は今ARGON18のフレームを頼んでいます。BTのフレームは5年以上乗っているので、新しいフレームにしてみようかなと思って注文しました。

ーー同期である119期には志田龍星選手や堀江省吾選手、徳田匠選手や木村皆斗選手といったPIST6でも活躍されている選手が多数います。PIST6のレースや機材についてお話しすることはありますか?

 開催のときに会えば話したりはしますね。みんな強いのでポジションや走り方に関して、どれだけ情報を盗めるかって考えてます(笑)

ーー堀江選手のインタビューで、仲の良い選手として中島選手のお名前が挙がりました。お二人は競輪選手養成所時代から仲が良かったんですか?

 はい、仲良かったですね。養成所時代には堀江さんと、志田くんと3人でよく遊んでました。

ーー同期以外の先輩選手はどうでしょう? 7月の高松では同県山梨の先輩・小佐野文秀選手と連係していましたが開催中にPIST6の話などはしましたか?

 高松の開催中に小佐野さんとはPIST6の話になりました。レースの話ではなく機材の話がメインでしたね。前回優勝したときに小佐野さんもいたんですけど、ずっと「お前には負けないから」って言われ続けてました(笑)

ーー今中島選手にとってレースをする上での勝負どころはどこだと思いますか?

 やはりスピードの勝負になってくると思うので、トップスピードに一番重点を置いてセッティングや練習などでも常に気を使ってます。

ーー中島選手が考える自転車競技の楽しさ・面白さ・魅力を教えてください。

 一番の魅力は“スピード感”だと思います。速いスピードで駆け抜ける「迫力」みたいなところを見て欲しいです。

©︎PIST6

■中島詩音が目指す今後の目標

ーー続いてPIST6や自転車競技以外の話も聞かせてください。今練習している山梨県笛吹市「境川自転車競技場」は高校時代からの練習場ですか?競輪は「地元」に意味や価値を置いている選手が多いように思います。中島選手も地元への特別な思いがありますか?

 高校時代からの練習場で、自然豊かなところが好きです。山梨県は競輪場がないので、山梨の選手はみんな「境川自転車競技場」に集まって練習しています。自分たちは弥彦競輪場が地元になるんですが滅多に行くことができません。それでも弥彦でレースが開催されるときは「地元」の特別な想いで走ってますね。

ーー競輪を見ていると貪欲に勝ちを求める姿勢を感じます。そんな中島選手はやはり同期だとしても仲間というよりはライバルという意識の方が強いのでしょうか?

 レースになったら同期だとしてもラインが違うので、そこは割り切ってライバルとして考えますね。

ーー高校時代の話で「長い距離が苦手」という話がありましたが、競輪のレースでは長い距離も臆することなく踏んでいく印象があります。これはいかがでしょうか?

 本当は自分は捲りのほうが得意なんですけど、長い距離を踏んでいかなければ、今後上のレベルでは通用しないと思っています。長い距離を踏むことでラインでも決まりやすくなると思うし、その点は強く意識して走っています。

ーー競輪での今後の目標について教えてください。2021年5月のデビューから、現在2年目の折り返しとなります。2年目上期のご自身を振り返っていかがですか? また下期の目標があれば教えてください。

 緊張してしまったりしてうまくいかないレースが多いので、しっかり経験を積んで修正していきたいなと思ってます。下期はS級になるための点数を取れるように頑張りたいです。

ーー中島選手はコメントやインタビューを見ていても「大きいこと」を言わないですよね。S級に上がっていつか獲りたいタイトルなども聞きたいのですが、どうでしょうか?

 そうですね。僕の性格的にあんまり言葉に出すというよりは、自分の中だけで燃えるタイプなんです。「獲りたいタイトル」の話もそうなんですけど、大きい目標を狙うのではなく、FIを優勝してGIIIの記念競輪を優勝して…みたいな感じで段階を踏んで徐々に上位のタイトルを勝ち取っていきたいですね。

ーー今日はいろいろ聞かせていただきありがとうございました!最後に競輪ファン、PIST6ファンそれぞれに向けたメッセージを一言お願いします!

 はい。今は自分が先行することでラインで決められるように頑張っているので、これからもそのスタイルを崩さずに続けていきたいと思っています。PIST6のレースは個の戦いなので、自力を出して勝ちにこだわってS級A級混合戦でも優勝できるように頑張りたいです。これからも応援よろしくお願いします!

※本インタビュー後に開催となったサードクォーターPIST6カップ1(9月16・17日開催)では4走すべて1着の完全優勝を決め、PIST6カップ二連覇を果たした中島選手。今後のさらなる進化が楽しみだ。

◆中島詩音選手のプロフィール(取材時)

出身  :山梨県
生年月日:1998/1/20
班級  :A級2班
府県  :山梨県
身長  :174cm


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