宇都宮ジャパンカップ ロードレース

2024/11/15(金) 10:00

7万7千人の観客を集めて開催された宇都宮ジャパ ンカップ。山岳賞が設定される古賀志林道の頂上にて ©2024UJC

今年31回目を迎える「宇都宮ジャパンカップ」が10月20日、宇都宮市森林公園の特設コースを舞台に開催された。
※前日におこなわれた宇都宮ジャパンカップ・クリテリウムのレポートはこちら

この大会は、1990年に同コースで開催された世界選手権を記念に始まった。今もアジア最高峰のワンデイレースであり、サイクルロードレースの本場、欧州からも、世界のトップチームがトップ選手で編成したチームを送り込み、レベルの高い本気の戦いを見せる人気レースである。今年は7万7千人の観客が詰めかけ、声援を送り、開催コースは朝から熱気に包まれていた。

使用するのは、宇都宮市森林公園とその周辺道路を組み合わせた1周回10.3kmの特設コース。名物になっている登坂の古賀志林道は1km以上続く上りで、平均勾配は8.4%にもなる。この頂上に山岳ポイントが設定され、3周、6周、9周、12周を1位通過した選手に、山岳賞が与えられる。この登坂後にはテクニカルな下りが設定され、平坦な一般道を走ったのち、森林公園に向けてまた登坂が始まる。レースはこのコースを14周する144.2kmに設定された。1周回当たりの獲得標高は190mであり、トータルの獲得標高は2,660mに達する。

スタート地点に並ぶ。序盤から厳しい展開になることを予想し、最前列にはファーストアタックを狙う国内勢が陣取った ©2024UJC

宇都宮市佐藤市長の号砲でレースがスタート。レースは冒頭から活性化し、国内勢と海外勢がともにせめぎあいながら最初の古賀志林道の登坂へと突入した。入部正太朗(シマノレーシング)がこの集団の最前方で走り、古賀志の観客たちは大いに沸いた。
ここにジロ・デ・イタリアで個人総合3位の経歴を持つサイモン・フィリップ・イェーツ(チーム・ジェイコ・アルウラー)と今年ジロ・デ・イタリアで区間優勝を遂げているゲオルク・シュタインハウザー(EFエデュケーション・イージーポスト)、昨年度の日本チャンピオン山本大喜(JCL チーム右京)、そしてハミッシュ・ビードル(チーム ノボ ノルディスク)。が加わり、メイン集団はこれを容認、早々に6名の先頭集団が形成された。

この日は10.3kmのコース沿いを観客が埋めた。ティラノサウルスの応援団もお出迎え!©2024UJC

世界のトップクライマーが含まれるこの集団は飛ぶように古賀志を駆け上がる。2周目の古賀志林道で入部とビードルが遅れ、逃げグループは4名になった。メイン集団は前日のクリテリウムを制したリドル・トレックがコントロールを始め、タイム差は45秒でキープした。

急勾配を飛ぶように駆け上がるさまは圧巻 !©2024UJC

タイム差が大きくないため、メイン集団から合流を狙った動きが生まれ始まる。前日のクリテリウムの勝者トムス・スクインシュ(リドル・トレック)らが動く。
先行した選手たちが逃げ集団を捕らえ、また大集団に戻るかと見られたが、アントニー・ペレス(コフィディス)が単独で先頭に飛び出した。
ペレスは6周目の山岳賞を獲ったのちに引き戻され、選手の数は減っていたが、一つの集団に戻った。

集団はリドル・トレックがコントロール ©2024UJC

メイン集団から積極的な動きが続き、イラン・ファン・ウィルデルとマウリ・ファンセヴェナント、ピーテル・セリー(すべてスーダル・クイックステップ)、マテイ・モホリッチ(バーレーン・ヴィクトリアス)らが抜け出す場面もあったが、逃げ集団を構成するには至らなかった。
ワールドチーム勢が主導するアタックと追走、吸収、そして牽制を続けるメイン集団からは、堪えられなくなった選手が、次々とこぼれていく。
残り6周回に入ると、メイン集団の人数は45人にまで絞り込まれていた。
日本人選手が含まれた逃げが先行したものの、残り5周回の古賀志林道で集団がペースアップし吸収、このタイミングで現カナダチャンピオン、マイケル・ウッズ(イスラエル・プレミアテック)が仕掛けたが、決定打に欠け、次の動きにはつながらなかった。集団はさらに人数を減らし、コンパクトになっていた。

積極的に仕掛けるマイケル・ウッズ(イスラエル・プレミアテック) ©2024UJC

大きな動きが生まれたのは残り4周の古賀志林道だった。ニールソン・パウレス(EFエデュケーション・イージーポスト)のアタックにマイケル・ウッズが反応し、登りで遅れたマテイ・モホリッチ(バーレーン・ヴィクトリアス)とファン・ウィルデルとファンセヴェナント(スーダル・クイックステップ)がダウンヒルで合流した。

好調かつ実力のある5名の先頭集団が形成された ©2024UJC

パウレスと登坂を得意とするウッズ、モホリッチは、前日のクリテリウムでも逃げ集団に入り、調子の良さを見せていた。優勝候補に挙げられる実力者ばかりの5名グループが、追走を振り切ってハイスピードでこの特設サーキットを走り続ける。5名は協調して、ローテーションを回し、ペースをキープ。5名はこのまま最終周回へ突入した。
仕掛けポイントになるのは登坂だ。まずは古賀志に入ると、ウッズとパウレスがアタックとハイペースを打ち出し、モホリッチとファンセヴェナントは脱落。だが、ダウンヒルの名手として知られるモホリッチはテクニカルな下りでさすがの走りを見せ、見事に合流した。

最後の上りに差し掛かる田野町交差点通過後に、ファンセヴェナントも合流し、アタック。これは吸収されたが、このタイミングでウッズがカウンターアタックを仕掛ける。また5名に戻ったものの、フィニッシュを目前に5名の牽制が始まった。

牽制し合いながらゴールに向かう5名 ©2024UJC

均衡を破ったのはファンセヴェナントだった。ラスト1kmを切ったところでアタック。この動きがカギになった。ファンセヴェナントの後方に付いたパウレスが残り300mからスプリントを開始。この加速にはキレがあり、誰も追いつくことができなかった。
パウレスは勝利を確信したガッツポーズでフィニッシュラインを越え、2022年に続き、ジャパンカップ2勝目を掴み取ったのだった。

見事にジャパンカップで2勝目をあげたニールソン・パウレス(EFエデュケーション・イージーポスト)©2024UJC

10月半ばに開催されるジャパンカップは、ロードのシーズンも終盤であり、調整が非常に難しい時期であるが、パウレスは今年、秋のレースで独走勝利を飾るなど大活躍を見せ、前日のクリテリウムでも好調を示しており、過去の優勝経験も相まって、この日の大本命だった。期待を裏切らない走りを見せ、見事に激戦を制したのだった。
ファン・ウィルデルが2位に入り、モホリッチが、このレースで存在感を示していたウッズをスプリントで下し、3位に入り、前日のスプリント賞に続き、2日連続で表彰台に乗ることになった。

パウレスは夫人と子どもとともに来日しており、ゴール後は3人で喜びを分かち合っていた。「ジャパンカップは大好きなレース。今回は家族と一緒に戻ってくることができて良かった。もちろん(まだ小さな)子どもは今日のことを覚えていないと思うけど、妻と子どもと3人で撮った写真はずっと残るんだ。とても嬉しいよ」と、笑顔で語っていた。

子どもを抱いて表彰式に臨んだパウレスと、2位のイラン・ファン・ウィルデル(スーダル・クイックステップ)と3位のマテイ・モホリッチ(バーレーン・ヴィクトリアス) ©2024UJC

ツール・ド・九州でも活躍したルーカス・ネウルカー(EFエデュケーション・イージーポスト)がU23最上位選手となり、ベストアジアンライダー賞は、今年も昨年に続き、岡本隼(愛三工業レーシングチーム)が受賞した。
前年を上回る観客を動員し開催された宇都宮ジャパンカップ。選手がコースを行くと、沿道の歓声が波のように湧き上がり、選手を包み込むように歓声の波が進んでいくのが印象的だった。遅れた選手へのねぎらいも忘れず、健闘を讃える温かい声援が投げかけられる。本場欧州でも「日本の観客」が評価され、宇都宮ジャパンカップの人気が高まっているという。

LRTが開通し、メディアで取り上げられることも増えた宇都宮市は、自転車も活用し、ソフトハードの両面で住みやすい街づくりに力を入れ、注目を集めている。この宇都宮ジャパンカップは、開催にあたっては、当日のレースだけでなく、市をあげてキャンペーンや様々な企画を展開し、盛り上げ、多くの来訪者を迎え入れていた。宇都宮ジャパンカップも市の取り組みの象徴として、これからも発展を続けてくれることを期待したい。

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【結果】
宇都宮ジャパンカップ ロードレース

1位/ニールソン・パウレス(EFエデュケーション・イージーポスト)3:30:30
2位/イラン・ファン・ウィルデル(スーダル・クイックステップ)
3位/マテイ・モホリッチ(バーレーン・ヴィクトリアス)
4位/マイケル・ウッズ(イスラエル・プレミアテック)
5位/マウリ・ファンセヴェナント(スーダル・クイックステップ)+0:04

【山岳賞】
サイモン・フィリップ・イェーツ(チーム・ジェイコ・アルウラー)
アントニー・ペレス(コフィディス)
アーチ・ライアン(EFエデュケーション・イージーポスト)
ニールソン・パウレス(EFエデュケーション・イージーポスト)

画像:2024宇都宮ジャパンカップ (©2024UJC)

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