千住下町おひとりさまサイクリング(後編)

2024/09/12(木) 12:35

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【前編】【中編】

サイクリングも、いよいよ終盤へ。線路の西側エリアへ戻り、ここを象徴する江戸由来の建物を見に行こう。旧日光街道沿いには、江戸時代から続いていた手描きの「絵馬屋」と、江戸期に紙問屋だった商家「横山家住宅」が斜向かいに並んでいる。今はもう、2軒とも無人になっているが、全国的にも珍しいとされる、経木に胡粉を塗り、極彩色の泥絵の具で家伝の図柄を描く「千住絵馬」を描いてきた「絵馬屋」の中は、ガラス越しに眺められるようになっており、当時の店舗を想像することができる。

手描きの絵馬を販売していた「絵馬屋」
ここまで来たら、人気のだんごを食べて行こう。
「近くの清亮寺にあった松の木に、水戸光圀公のご家来が槍を立てかけた」という言い伝えから名付けられたという「槍かけだんご」の「かどや」が目と鼻の先にある。ここの団子は、丸型ではなく、平らで、中央が凹んでおり、小ぶり。ペロリと食べられる。あんとタレがあり、タレを選んだが、平らなだんごにタレがたっぷりとからんでおり、食べると、口の中に、とろみのある甘じょっぱいタレが流れ込んで来るような感覚。だんごとしてはとても新しい食感だった。
近年リニューアルした「かどや」
串だんごなのに丸くない「槍かけだんご」
ここから西林山安養院(長福寺)へ。ここは名前の通りお寺なのだが、「キングオブ銭湯」と呼ばれ、皆に愛されながらも、営業を終えた「大黒湯」の外観が移築されている。宮大工が手を貸し、関東大震災からの復興への願いを込めて仕上げたという大黒湯は、唐破風屋根と二重の千鳥破風屋根の三段構えの屋根がしつらえられている豪華な作り。神社仏閣のような威厳がある銭湯は「宮造り銭湯」と呼ばれるのだそうだ。大黒湯が廃業と解体を決めた際に、クラウドファンディングで、同じ思いを持つ人々から資金を集め、解体工事を担う棟梁らの協力を得て、移築が実現した。
静寂の中にある西林山安養院
大黒湯は、やはり美しかった。屋根の形も荘厳だが、天井を覗き込むと、絵のパネルがはめ込まれていた。これらは江戸消防記念会の鳶頭(かしら)から奉納された「まとい絵」や銭湯や地域にゆかりのあるアーティストなどが奉納したもの。静かな境内に建つ大黒湯の屋根構えからは、千住のまちと大黒湯を愛する多くの方々の思いと誇りを強く感じた気がした。
支援を受け移築された「大黒湯」。その屋根の下には「格天井」が
ここから、千住新橋を渡り、荒川を越えて北へ。目的はかき氷だ。旧日光街道に入り、少し走ると「かき氷」のノボリが見えてきた。路地に入り、少し進むと、大量のすだれをかけた小屋のような店舗が見えてきた。「椛(もみじ)屋」だ。天然素材を生かしたフレッシュなシロップを使ったかき氷を楽しめるという。席に着く前に、入り口のお品書きを見てオーダーするシステムになっており、どんなかき氷なのか予想できずにひどく悩んでしまった。「赤くてキレイでおいしい」と店員さんが勧めてくれたソルダムをセレクト。
独特の風情を放つかき氷店「椛(もみじ)屋」
しばらく待っていると、小さな器の上に大きく丸く形作られた真っ赤なかき氷が運ばれてきた。これだけでも職人技だ!果肉が見えるようなシロップはつやつやで、かき氷は大きな宝石のよう。さっそく一部を崩し、頬張ると、ほんのり酸味があるフレッシュなシロップは甘すぎず、素材の味が生きていて、激ウマだった。興奮して食べ進めると、中からも軽くシロップで煮たソルダムが顔を出した。氷でキンキンに冷えたフルーツのおいしいこと。さらに食べ進めると、また底の方にはたっぷりとシロップが敷かれており、食べ始めてから味が薄まってしまうスキがない。極上のシロップがかかった冷たい氷が、のどを通っていく感覚は最高で、一心不乱に食べ進める。暑さでバテ気味だったカラダが歓喜に沸いているようだ。お値段は2000円近く、安くはないけれど、決して高くはない。来てよかったと幸福感いっぱいになって店舗を後にした。
想像していたより真っ赤だった「ソルダム」。フレッシュなフルーツの 風味が生きていて、極上の味。中からもソルダムの果実が!
再び千住新橋を戻る
再び、千住新橋を渡り、千住エリアに戻る。千住は大衆向けの酒場が多く、それぞれの個性を打ち出していて、千住に通う方々も多いというが、千住限定の地酒や地ビールも人気が高いという。中には、甘さが特徴の「千住葱」を生かして、米焼酎をベースにした、ほのかに葱が香る「やっちゃ場」の名をつけた「千住ねぎ焼酎」も。 千住が位置する足立区ブランドの発泡酒もあるそうで、千住土産に酒屋に寄るのもありかもしれない。

最後は、何度通っても客の列が絶えておらず、気になっていた「惣菜かざま」へ。近年では海外でも話題の超コスパ店ということなのだが、確かに超絶リーズナブル!年季の入ったプライスボードには、アジフライ70円、コロッケ50円、ハンバーグ100円の文字が。お弁当は330円!?いったいどうやって、この値段でやっていけるのだろう?アジフライやエビグラタンコロッケをセレクト。試しに食べてみると、衣がサクサクして、身はふんわり。帰宅後のおかずも確保できて大満足。寄ってよかった!
客の列が途切れない「惣菜かざま」
驚くほどリーズナブルな商品が並ぶ
自転車を最寄りのステーションに返し、駅に向かう。
正直、千住が東京23区内にありながらも、こんなに風情があり、見所も多く、リーズナブルに買い物までできるとは思ってもいなかった。もう少し北に足を伸ばせば西新井もあり、見所はたくさん点在している。
次は散策後に銭湯に入って、下町ムードたっぷりのお店で一杯、かな?
満たされた思いで家路に着いた。

画像:編集部

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