チャレンジレース in 味スタ

2024/01/16(火) 18:09

チャレンジレース in 味スタ

東京都が自転車に関する様々なイベント等を総合的に進める「GRAND CYCLE TOKYO(グランドサイクル東京)」の一環として、東京2020オリンピック競技大会で自転車ロードレースの舞台となったコースを活用した本格的なロードレース「THE ROAD RACE TOKYO TAMA(ザロードレース東京多摩)2023」が企画された。
2日目にはプロ選手がレースを展開するが、1日目の12月2日は、一般市民がスポーツバイクに触れ、学んだり、レース走行を楽しんだりできる「チャレンジレースin味スタ」が、東京都調布市の味の素スタジアムの周回路の特設コースで開催された。

「チャレンジレースin味スタ」のプログラムは3つ。プロの選手やコーチらが講師・サポートスタッフを務める「サイクルスクール」、サポートライダーとともに走り最終周回はレースモードの走行に挑戦する「ガイド付きショートレース」、グループ参加の耐久レース「80分サイクルマラソン」だ。レースイベントとしてはアクセスもよく、当日は晴天に恵まれたこともあり、会場は早朝からにぎわっていた。


チームで参戦し、レースを楽しむ。「80分サイクルマラソン」にて

この日、最初に開催されたのは「サイクルスクール」。参加者は「レース未経験者」「レース初心者」「レース経験者」の3カテゴリーに分かれ、それぞれに講師チームが付いて、カリキュラムを実施する。


グループ別に並ぶ

まずは、メイン会場となる、あじペン広場で、バイクや装備のチェックをし、乗車ポジションなどの確認をした上で、コースに出発する。実際に走りながら、ブレーキやシフト操作、コーナリングなどを、それぞれのスキルに合わせた形で講師陣がレクチャーし、参加者が実践していく。


ともにバイクのチェックを行う


ヘルメットの正しいかぶり方を指導

このスクールは、数々の自転車関連のスクールを企画運営して来たスマートコーチングの安藤隼人さんが運営を担い、講師には、アテネ五輪・自転車ロード代表の唐見実世子さんや、現役プロロードレーサーの畑中勇介選手(キナンレーシングチーム)、元プロロードレーサーの平塚吉光さんらも含まれ、経験豊かなスタッフの豪華な布陣で開催された。


スクールの運営を担うスマートコーチングの安藤隼人さん(先頭)


カリキュラムに臨む参加者

外周路を中心に1時間ほど、みっちりとスクールを受け、戻って来た参加者の顔は、達成感にあふれていた。講師によると、皆、みるみるうちに吸収し、走りが変わっていったという。参加者も「参加できてよかった」「貴重な機会だった」と、口々に語っていた。

続いては、息をつく暇もなく「ガイド付きショートレース」が始まった。参加者を属性などで2つのヒートに分けて開催するのだが、それぞれをさらに2分割し、外周路の2カ所から同時にスタートする。


ガイドライダーが前後に付き、周回コースを走る

この種目では、参加者の集団の前後をガイドライダーが固め、安全なペースで誘導しながら集団走行を経験してもらう。もちろん、参加者の脚力等を見ながらの判断になるが、時速25km程度でスタートし、徐々にスピードを上げ、最終周回はそれぞれのレースペースで走ってもらう。集団のスピードアップについていかれなくなった参加者は、安全確保のため、走行から離脱し、自転車を降り、コースの端で待機する約束でスタート。


安全に配慮しながら、徐々にスピードアップする隊列

レースに参戦していない層は、空気抵抗の大きな前方を引っ張ってもらい、楽に走れる集団の中で、高速走行する機会は、通常ほぼないことだろう。日本の公道は、道路交通法の規定に従い、自転車には並走が許されていないため、そもそも集団走行の練習自体が難しい。自分の周りにいるライダーを意識しながら、集団で走る経験ができるだけでも、価値ある経験になるのではないだろうか。


周回路を走る


ガイド付きレースも上位には表彰台に乗るチャンスが

運営側も、初めての企画であり、ミーティングや検証を重ねての開催だったとはいえ、不安もあったことと思う。だが、ふたを開けてみれば大成功で、接触などのトラブルもなく、途中で離脱する参加者も、ほぼいなかったとのこと。通常、自分ひとりでは到達できない速度と密集感での非日常的な走行を経験でき、最後はレースとして全力で走り、フィニッシュラインに飛び込んで「忘れられない経験となった」という方が多かったようだ。それぞれ20分程度の短い企画ではあったが、参加者の満足度は非常に高かったことだろう。
インカムをつけたサポートライダーたちと、総合的に状況を見守る安藤氏とが、やりとりしながら、随時危険になりうる動きを報告し合い、対応・修正し、真剣に運営に当たる姿は、初開催のこの企画を絶対に成功させようという気迫がみなぎっていた。


状況をインカムで確認しながら隊列を率いるガイドライダー役の畑中勇介選手(キナンレーシングチーム)

このころから会場には続々とチームジャージを着たプロ選手が集まって来た。翌日、特設コースで本戦に参戦する選手たちがエキシビションレースを行うのだ。


味スタの周回路に設定された1.15kmに特設コース

国内のJBCFやJCLといったリーグのトップカテゴリーに所属するチームを中心に、トップーレースに参戦する大学のチームも参戦して開催される。使用するのは、平坦ではあるが、4カ所のコーナーが含まれる1周1.15kmのショートコースだ。


エキシビジョンレースのスタートラインに並ぶ選手


ハイペースで周回コースを走る

スタートすると、ショートコースながら、ペースは一気に上がって行った。1周2分ほどで戻ってくるのだが、その度に態勢が変わると言えるほど、目まぐるしく展開していく。
プロ選手が圧倒的な強さを見せるかと思いきや、大学ジャージの選手も、存在を主張するかのように積極的に動いていく。
ハイペースが続き、緊張感あふれる展開の中、終盤に入ると、横塚浩平(VC福岡)が集団の隙をついてアタック。ベストタイミングのキレのある飛び出しと独走に、3月に開催された各リーグの「頂上決戦」である「富士クリテリウム」を独走優勝した時の記憶が蘇る。


横塚浩平(VC福岡)がアタック

この日も横塚は、まっすぐに前だけを見つめてペダルを踏み続け、先頭をひた走った。集団は全力で横塚を追うが、道幅も狭く、思うように差を詰められない。最後は放たれたスプリンターたちが全力で追い詰めたが、わずかに及ばず、力強いガッツポーズで横塚がフィニッシュ。このレースを制した。会場では大きな拍手が沸き起こり、大迫力のレースの余韻が、しばらく会場を包んでいた。


ガッツポーズでフィニッシュする横塚

最後に開催されたのは「80分サイクルマラソン」だ。チーム単位で参加し、80分間交代でこのコースを走るというもの。耐久レースとしては時間も短く、参加しやすい。ショートコースの中での安全への配慮で、最終周回のゴールスプリントは禁止され、「同じ周回数は同着」という新しいルールが掲げられた。通常は1位が2名いた場合、次着は3位となるが、今回は、1位が何人いても、次着の選手らが2位となり、多くのチームに入賞の可能性があある。小学4年生からエントリー可能で、多様な層が集まった。


味スタをバックに周回路を走る


まだ紅葉が残る初冬のコースを走る

隣接する味スタで開催されていた「スタジアムフェスタ」から、芸能人チームも参戦し、華やかなレースとなった。本気でレースとして走る方あり、楽しく走る方ありと、それぞれの走り方で、この特別な80分を楽しんだ。


交代エリアを走る


見事完走!


スタジアムフェスタを盛り上げた芸能人チームが参戦

このレースも大きなトラブルはなく、(疲れ切った方はいたが)笑顔で終了。表彰台を狙う激しい戦いというより、楽しく走りたい趣向の方々が多かったこともあり、大人数が表彰台に立つ展開にはならなかった。


サイクルマラソンの表彰台。同じ周回数のチームが同一順位とされ、表彰台に立てるという今大会のルールの下で開催された


全て終了し、健闘をたたえ合うサポートスタッフたち

初開催、そして初めてのトライが多く詰め込まれた大会だったが、どの試みも成功に終わり、参加者も満足した表情で会場を後にした。ここから、レースやスポーツとしての自転車にポジティブな興味を持った方々もいるだろう。ぜひ継続開催を期待したい。
翌日は、この日エキシビジョンレースを走った選手がチームで参加する「THE ROAD RACE TOKYO TAMA(ザ ロードレース東京多摩)2023」が開催された。

※2日目のレポートは近日公開します。お楽しみに!

画像:GRAND CYCLE TOKYO(グランドサイクル東京)実行委員会(P-Navi編集部)

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