2023/06/08(木) 17:05
UCI(世界自転車競技連合)認定の国際ステージレースであるツアー・オブ・ジャパン2023は、大会5日目を迎えた。第5ステージは、長野県飯田市を舞台とした信州飯田ステージだ。昨年からコースレイアウトが変更になったが、「上りと下りしかない」休むところのない厳しいステージであることに変わりはない。
信州飯田ステージは、下久堅小学校グラウンド前をスタート/フィニッシュ地点とする1周12.2kmの下久堅周回コースを使用する。気の抜けない難関ステージだ。飯田駅前からのパレード区間を経て、このコースに入り、10kmあまりを走った後に、フルに9周する120.9kmで競われる。今年も、激しい消耗戦が繰り広げられる山岳ステージとなるだろう。ここから、いよいよ本格的に総合優勝争いが始まる。
「上りと下りしかない」と言われる難関コース。選手たちはこの厳しい上りを10回繰り返すことになる
スタートラインに選手が並ぶ。個人総合で首位を行くルーク・ランパーティ(トリニティレーシング)が、個人総合リーダーの証であるグリーンジャージを着用し、最前列へ。ポイント賞並びに新人賞も首位であるため、ポイント賞のブルージャージは次点のイエルン・メイヤス(トレンガヌ・ポリゴン・サイクリングチーム)が、新人賞のホワイトジャージも同様にリアム・ジョンストン(トリニティ・レーシング)が繰り上げで着用する。山岳賞のレッドジャージは兒島直樹(チームブリヂストンサイクリング)が守っている。このステージでは山岳賞が厳しい上りの頂上に設定されており「一級山岳」として、ここまでのステージよりも大きな山岳ポイントが与えられる。この時点で唯一のリーダージャージを守る日本人である兒島の山岳賞の行方に注目が集まった。
最前列に並ぶ4賞ジャージの選手
タイムボードには、飯田特産の「水引」が描かれた
観客たちの拍手を受け、パレードスタートが始まった。このステージでは、例年市内の保育園、幼稚園、小学校などが応援に出て、かわいい声援を送ってくれる。今年は飯田市出身の山田拓海(EFエデュケーション・NIPPOデヴェロップメントチーム)が参戦していることもあり、例年よりも、応援に力が入っていたようだ。
パレード区間終了直後からアタック合戦が始まるが、どのチームも逃げを許さない。1周回目に入り、さっそく9名の逃げ集団が形成されたが、2周回目には全員吸収された。
3周回目に入り、山岳賞に意欲を見せる選手たちが集団から抜け出した。レオネル・キンテロ・アルテアガ(ヴィクトワール広島)が1位通過し、2位はジェイス・イワート(トレンガヌ・ポリゴン・サイクリングチーム)。兒島は4位通過し、ポイントを獲得した。
飛び出した8名は、このまま集団を形成する流れになった。この中には、いなべステージの覇者カーター・ベトルス(ヴィクトワール広島)や、岡篤志(JCLチーム右京)、ライアン・カバナ、山本元喜(キナンレーシングチーム)ら有力チームの力のあるメンバーが含まれていたが、メイン集団は容認。1分50秒のタイムギャップを確保し、先行した。
3周目に8名の先頭集団が形成された
「焼肉のまち」飯田では、焼肉をしながら観戦するのがお決まりのスタイル。コース沿いの家々のガレージでは各家庭の焼肉が展開され、山頂には公設(?)焼肉場が設定された
4周目に入り、メイン集団から追走し、合流した今村駿介(チームブリヂストンサイクリング)、フェリックス・スティリ(EF エデュケーション・NIPPO ディベロップメントチーム)が加わり、逃げ集団は10名に。主要チームが先頭にメンバーを送っていることもあり、メイン集団のスピードは上がらず、差はさらに開き、4分を超えた。
声援を浴びながら走る先頭10名
集団内の安全な位置で走るルーク・ランパーティー
最大タイム差が5分に迫ったところでメイン集団は追撃に向けて動き始めた。2回目の山岳賞も、キンテロがトップ通過している。
一時は差を3分43秒まで縮めるものの、7周回目に入って逃げ集団が再びペースアップ。メイン集団とのタイム差を4分21秒に広げ、逃げ切りの可能性が濃厚になってきた。
最後の山岳賞もキンテロがトップ通過。キンテロは大きくランキングを上げたが、兒島は8点差で、山岳ジャージを守っている。
レースはこのまま最終周回に。タイム差は3分46秒残っており、逃げ切りはほぼ確実となった。
この先頭集団から4名が脱落し、優勝の行方は、ふるい落としに耐えた6名による戦いに絞り込まれた。
残り300mを切って、最初に仕掛けたのはカーター・ベトルス(ヴィクトワール広島)。単独で逃げ切りを図るが、そうはさせじと岡篤志が強烈な追い上げを見せ、ベトルスを交わすと、そのまま後続を寄せつけず、フィニッシュを目指す。岡は単独でフィニッシュ、見事ステージ優勝を手に入れたのだった。2位にはライアン・カバナ、3位にはジェス・イワートが入っている。
独走で逃げ切った岡篤志(JCLチーム右京)
岡は、この日アシストとして走る予定であり、総合を狙う選手を上位でゴールさせるために動く予定だったという。想定外にタイム差が開き、チャンスが訪れた。逃げ切りが濃厚となったあとは「自分のステージ優勝に切り替えて、絶対に勝たなくてはいけないという強い思いで走った」と語り、熱のこもった応援に対し、笑顔で繰り返し礼を述べていた。
ポイント賞を守ったランパーティー、グリーンジャージを獲得した岡、山岳賞を守った兒島直樹(チームブリヂストンサイクリング)(左から)
この結果、岡が総合1位に躍り出てグリーンジャージを獲得。ポイント賞、新人賞はルーク・ランパーティがキープし、山岳賞も兒島が守った。この翌日はクイーンステージ、富士山が待っている。
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【結果】
ツアー・オブ・ジャパン 第5ステージ・信州飯田(120.9km)
1位/岡篤志(JCLチーム右京)3時間6分11秒
2位/ライアン・カバナ(キナンレーシングチームナン)+5秒
3位/ジェス・イワート(トレンガヌ・ポリゴン・サイクリングチーム)+7秒
4位/カーター・ベトルス(ヴィクトワール広島)+10秒
5位/ディーン・ハーヴィー(トリニティレーシング)+13秒
【個人総合時間賞(グリーンジャージ)】
1位/岡篤志(JCLチーム右京)12時間16分7秒
2位/フェリックス・スティリ(EFエデュケーション・NIPPOデヴェロップメントチー
ム)+34秒
3位/カーター・ベトルス(ヴィクトワール広島)+1分48秒
【個人総合ポイント賞(ブルージャージ)】
1位/ルーク・ランパーティー(トリニティレーシグ)72p
【個人総合新人賞(ホワイトジャージ)】
1位/ルーク・ランパーティー(トリニティレーシング)
【個人総合山岳賞(レッドジャージ)】
1位/兒島直樹(チームブリヂストンサイクリング)29p
【チーム総合成績(第5ステージ終了時)】
1位/キナンレーシングチーム
画像提供:ツアー・オブ・ジャパン組織委員会
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ツアー・オブ・ジャパン2023レースレポート
第1ステージ・堺
第2ステージ・京都
第3ステージ・いなべ
第4ステージ・美濃(P-Navi編集部)