2022/06/13(月) 00:11
【高松宮記念杯競輪・特集】
加藤慎平×古性優作(特別対談)
元競輪選手で現在は解説者として活躍している加藤慎平氏が、6月のG1レース「高松宮記念杯競輪」に出場するトップレーサーたちに迫る__。今回は西日本地区を代表して、チャリレンジャーから古性優作選手(SS・大阪100期)が登場。KEIRINグランプリ覇者として迎える地元G1開催へ、静かに闘志を燃やしている__。
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グランプリチャンピオンユニホームで走る責任感
加藤「年末のKEIRINグランプリを勝って、まさしく競輪界の顔になったわけだけど、今年は34走して、7勝、2着17回、3着1回(5月末現在)。ここまで、自分の走りにはどんな評価をしている?」
古性「今年は成績に少し波がありますね。1着の回数も少ないかなと思っています」
加藤「たしかに、データを見ても24回は2着以内に絡んでいるし、チャンピオンらしい走りができていると思っていたけれど、意外にも1着が少ないんだね。これが原因かなという部分はある?」
古性「もがく距離が短いからだと思います」
加藤「それがレースの中での判断に影響すると?」
古井「そうですね」
加藤「中団の位置はきっちりと競輪力で取りにいく。捲って番手までいって、そこから粘り腰を発揮するようなレースも多い気がするけど」
古性「スピードがないのかなとは思っています」
加藤「では、ここまで落車こそないけれど、年末のKEIRINグランプリを獲った時までのコンディションには感じていない?」
古性「そうですね、あまり良くないですね。今年は5月の日本選手権競輪に向けてやっていたのですが、結果を出すことができなかったので。そこで疲労感も出てしまったという感じです」
加藤「コンディションは難しいよね。その日本選手権は前半の大一番だったと思うけど、盟友の脇本雄太選手が戻ってきてくれたことには、純粋にどう思う?」
古性「脇本さんがいる、いないでは、近畿地区の力はかなり変わってきます。だから、日本選手権も全然違いましたね」
加藤「ラインの位置はどれだけ自分が積み重ねてきたかということが重要で、競走得点が高いからといって、番手を回れるわけではない。それが競輪の風潮だと思う。古性選手の場合は、しっかりと下積みをしてきたと思うけれど、やっぱり脇本選手の番手にはこだわりたい?」
古性「そうですね。今年は特に自力戦では厳しいですし、脇本さんがいてくれる、それだけで心強いです」
加藤「究極的な目標になると思うけれど、脇本の前にで走りたいという思いは?」
古性「実は……日本選手権の時に、僕はグランプリの権利をすでに持っていましたし、脇本さんはまだ持っていない状況だったので、それも考えたのですが、『前で好きに走らせてくれ』と言われました。邪魔では無いなら前で走りたい!と思っていましたが、邪魔だったのかもしれません」
加藤「日本選手権決勝での脇本選手の捲り。後ろに付いていて、どうだった?」
古性「本当にすごかったです。でも、僕も下手でした。最終バックでは、自分で捲っている感じでいないと乗り越えていけなかったと思います。(車券も)売れていましたし、どこまでいってもあれは抜けなかったとは思いますが、最低限、しっかりと2着は確保しないといけなかったですね」
加藤「イレギュラーもあったから、難しかったとは思うけど、悔しかったよね。グランプリのチャンピオンジャージはどう? プレッシャーもある?」
古性「1年間ずっと1番車になるので、自分の好きな位置を取れるのはメリットだとは思いました。でも、今までそんな経験をしたことがなかったですから。最初の数カ月は、いつもと違うように競輪が見えていまいた」
加藤「戦っていく中で、落ち着いていくことはできた?」
古性「場慣れはしてきましたね」
加藤「自分もグランプリチャンピンユニホームを着た時は、意識しないように走っていたけど、自分の場合は、ずっと賞金ランキングに入っている状態。でも、最後の競輪祭で2人に抜かれて、ランキング10位でグランプリに出られなかった。だから、プレッシャーを1年間ずっと感じていたのだけれど、古性選手は一発目の全日本選抜競輪で優勝という結果を出した。プレッシャーがないのか!?と思っていた」
古性「2月の全日本選抜競輪の時も、決勝を走る前に『これで、今年のグランプリの1人目が決まるんだな』と思っていたくらい。それが、まさか自分だとは思っていませんでした」
加藤「今のリアクションでも分かる。自分の時は、チャンピオンユニホームが重荷だったけど、おそらく古性選手の場合は、重荷にはなっていなかったんだね。グランプリ出場も決めて、日本選手権では脇本選手が続いた。ここまでは100点満点の評価でもいい?」
古性「近畿の仲間に助けていただいていますし、個人でできることは、まだできていないですけど、結果は今の実力以上が出ていると思います。レースでも、近畿の仲間とラインでしっかり決めることが大前提。そう思いながら、走っています」
加藤「デビューして、昨年は競輪界の頂点に立った。そのことに関しての思いは?」
古性「信じられないですね。頑張って練習はしてきましたけど、本当にグランプリを獲れるとは思わなかったので」
加藤「自分は27歳の時にグランプリ優勝して賞金王になった。でも、その時から、もう引き際を考えていたんだよね」
古性「早いですね」
加藤「だから、自分は根っからのスーパーアスリートではなかったと思う。古性選手の場合は、頂点を獲ってからモチベーションをどう設定しているの?」
古性「まだ獲れていないG1もありますし、そういうものに挑戦したいという気持ちがありますね」
加藤「ゆくゆくは全冠制覇?」
古性「はい。してみたいですね」
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プロサイクリストの休息時間
加藤「近況ついて語ってくれたけど、今はどのような練習をしている感じかな?」
古性「今年は自転車との一体感が少なく、サドルの接地感が足りていないので、細かい部分を意識しながら、しっかりと自転車を乗り込んでいます。まだ感触が良くないので、長い距離を乗って、細かいインナーマッスルが動いてくれるようにと。そうすれば、良い感じで自転車も進むようになるかなと思っています」
加藤「街道練習はひとりで?」
古性「ひとりで行ったり、時間が合えば、南修二さんとも行ったりもします」
加藤「プライベートは、完全にオフにすることもある?」
古性「6月が終われば、7月に一息入れたいなとは思っています」
加藤「時間があれば、やりたいことは?」
古性「理想は、旅行に出かけたりするのが一番いいとは思うんですけど、子どもがいたら逆に疲れるので(笑)。最近は妻の実家にも帰ることができていないので、子どもの顔を見せに行くのも良いかと思っています」
加藤「アクティブなことはしない?」
古性「しないですね(笑)。家でもずっと寝ています。疲れるので、家からは出ません」
加藤「仲間とご飯に行ったりするのは?」
古性「行くことは好きです。でも、次の日の練習がしんどくなるなと思ってしまうんです…」
加藤「わかる。その考えは、完全なプロサイクリストだね」
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プレッシャーを感じていない今年の高松宮記念杯
加藤「そして、いよいよ高松宮記念杯競輪(G1)が近づいてきているけど、地元の岸和田競輪場でG1が続くのは、喜びが大きい?」
古性「そうですね! 大きいです」
加藤「高松宮記念杯には、印象的だった思い出はある?」
古性「実は、まだ決勝に乗ったことがないんですよね」
加藤「それは意外だね」
古性「それこそ、プレッシャーだと思っています。でも、今年は逆で、楽に走れるかなとは思っています」
加藤「一人でも多く、近畿勢を決勝に連れていきたいよね」
古性「そうですね。頑張ります」
加藤「高松宮記念杯までの予定は?」
古性「動いていない筋肉が、まだまだいっぱいあります。前半はそこを意識して自転車に乗って、後半からはそれを繋げていく。そんなイメージで練習ができたらいいなと思っています」
加藤「今は充実期だ思うけど、同地区の若手の手本になる年齢でもある。近畿の若い自力選手はどう評価している?」
古性「ポテンシャルがすごい選手が、本当にたくさんいると思います。それを分かっているだけに、レースでは、まだまだピリッとしていないですね。ポテンシャル自体は、今で言うと眞杉(匠)君と同じくらいあってもおかしくないと思っているので、歯がゆいとは思います」
加藤「そうだよね。もっと伸びていい選手はたくさんいるよね。では、最後になるけど、地元G1への思いを聞かせてもらえるかな?」
古性「初めてS級S班、そしてグランプリユニホームを着て、地元のお客さんの前で走ることができるので、早くその姿を見せたいと思っています。とにかく、出し惜しみせずに、ミスをできるだけなくして、頑張りたいですね!」
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【高松宮記念杯競輪・特集】
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(加藤慎平プロフィール)
1978年5月18日生まれ(44歳)、岐阜県出身。2005年12月に全日本選抜、KEIRINグランプリを制覇し競輪界の頂点に立った。この時の月額獲得賞金1億3千万円は競輪界レコード記録。2018年12月に現役引退後は様々な分野でマルチに活躍している。YouTubeチャンネル「ペーちゃんねる」にて配信中。
(古性優作プロフィール)
1991年2月22日生まれ(31歳)、大阪府。2011年7月に第100期生として岸和田競輪場でデビュー。競輪界屈指のオールラウンダーとして活躍の場を広げ、2021年8月のオールスター競輪でG1初制覇。同年12月にはKEIRINグランプリ2021を初出場・初制覇した。今年も2月に全日本選抜競輪で2度目のG1タイトルを獲得している。
※掲載の選手写真は過去撮影したものを使用。(P-Navi編集部)