E-バイクで走る「クマイチルート」Day2

2021/05/25(火) 23:21

E-バイクで走る「クマイチルート」Day2

和歌山県紀南地方で提案が始まった「クマイチサイクリングルート」を走るモニターツアーの2日目。

初日のレポートはこちら

アップダウンの多い土地だが、ツアーには自転車経験、運動習慣がないメンバーもいたが、進化型電動アシスト自転車「Eバイク」を使うため、初日の獲得標高938mというコースも、全員難なくフィニッシュした。とはいえ、2日目は、和歌山県すさみ町から古座川エリアに向けて走り、距離は70kmを超え、獲得標高は1890mにも達する。Eバイクといえども、全員が完走できるのだろうか。

スタートはすさみ町の宿泊施設「サンセットすさみ」。美しいビーチの目の前に立つホテルだ。すさみ町の海水浴場は知る人ぞ知る美しいビーチ。夏はこのスポットを知る県内の方がこぞって遊びに来ると聞いたことがある。「次は夏に来てみたいな」と、ぼんやり考えている間に、この日のライドがスタートした。


ライド2日目は美しい海を眺められるすさみ町からスタート

ルートは海沿いの42号線から始まる。真っ青な海を眺められる気持ちのよい道で、すでにサイクリストにとってはメジャーなルート。太平洋岸自転車道に指定されていることから自転車の走行環境の整備が進み、ドライバーに自転車の往来があることを示す路面表示や、誘導看板などが設置されており、安心して走ることができる。
この道には、少々のアップダウンがあり、風の強い日もある。しかし、辛い仕事は「Eバイク」にお任せ。トロピカルな木々が並ぶ中、快調にバイクを走らせる。


南国を思わせる木々が並ぶ海沿いの道

12kmほど走り、早々に最初の休憩がやってきた。「日本童謡の園」の看板の横を抜け、「江住海岸公園」へ。高台にある海を見晴らす美しい公園だ。バイクを停め、芝生エリアへ向かう。


海の見える「江住海岸公園」での休憩


朝おやつ? さっそくケーキのふるまいが!

「ケーキがありますよ!」。女性スタッフの笑顔に誘われて行ってみると、シンプルなケーキを配っていた。まだ朝食がこなれていなかったが、いただくことにした。甘すぎず、しつこくない。どこか、なつかしい味がした。


特産のレタスで巻いた「めじろずし」

さらに、もう一つ。めはりずしならぬ、「めじろずし」なるものが配られていた。すさみ町はレタスの栽培発祥の地。高菜漬けで巻く「めはりずし」のように、すさみ町のレタスですし飯を巻いた寿司を「めじろずし」と名付けたようだ。黄緑色の小さな寿司は、どことなく春を思わせる。
頬張り、噛み締めるごとにシャキシャキと音が響く。味だけでなく、楽しい食感も推しポイントだ。新鮮なレタスの食感を押し出した産地ならではの一品。持ち帰ったら食感はある程度失われてしまうだろう。産地に来たからこそ味わえる、とても贅沢な品だ。


再スタート。童謡の園の碑の前を走り抜ける


海沿いの道も、ゆるやかなアップダウンを繰り返すが、Eバイクなら問題なし!

皆で美しい海を楽しみ、再スタート。集落を抜け、海沿いの道から、山道へ入る。このあたりがこの日最大の登坂になる。木々に囲まれた山間の坂道を登っていくと、あちこちに薄ピンクの花が見える。もう山桜が咲いているのか! まだ市中では開花宣言もされていない時期だったため、何とも得をした気分だ。


集落を抜ける。暮らしぶりが感じられるような道も楽しい


本格的な登坂が始まる


山の中にも、日当たりの良い場所では桜や春の花を楽しむことができた


登坂が続く

山間の道を終え、開けた道へ。このあたりも、黄緑色の若芽や草も生え始めており、ピンクや白、赤の花に彩られている。いまだ早春の時期ではあったが、一足先に、春景色を楽しむことができた。


春の花が道を彩っていた


美しい里山風景

春のムードが漂う里山や棚田を眺める。冬も走れる地域と聞いてはいたが、こんなに温暖だとは思ってもいなかった。

予定よりかなり早くランチスポットに到着。Eバイクを使うと、登坂が苦手な方でも一定ペースで登れるため、複数のメンバーが走るライドでも、良いペースで進んできてしまったようだ。


カフェに到着

開店前ということで、近くを散策したり、休憩したり、めいめいのスタイルでランチを待つことになった。


里山を貸し切りにしたような眺めの中でゆったりランチをいただく

この日、ランチをいただくのは「お山のカフェ・アゥル」。地元の無農薬食材で手作りしたケーキやランチをいただける古民家カフェだ。店舗内の雰囲気も、とても素敵なのだが、周囲を自然と田園風景に囲まれており、ガーデンでは、里山を貸し切ったような広大な景観の中、ランチをいただくことができる。密を避ける意味もあり、今回は別れてランチをいただくことになった。


地域の食材を生かしたヘルシーなランチ。素材の味が生きている


驚くほどぶ厚いハンバーグ。肉の甘味が感じられた


濃厚なのに、しつこくない。キャラメルバナナパイ

この日のランチは、少しスパイシーなレンコン炒め、菊芋や人参のピクルスなどが添えられた黒米入りのもちもちのおにぎりと、ぶあついハンバーグ! ジューシーだが、まったく脂っこさを感じないハンバーグに一同感動。さらにデザートは普通サイズで提供され、もう一度びっくり!筆者はキャラメルバナナパイをいただいたが、甘すぎず、素材の味がしっかり生かされており、食べだすと止まらないおいしさだった。ペロリと完食。絶品揃いのランチで満腹、満腹。

Eバイクは運動量が小さいため、朝から食べ続けている分を消費できるのかと心配していたのだが、ここから1時間ほど山歩き体験があるとのこと。よい腹ごなしになるかもしれない。Eバイクは散策のゴール地点まで運んでもらい、一同は佐本渓谷の「古座街道」なる道を散策することになった。聞けば、司馬遼太郎の「街道をゆく」にも登場するのだとか。どのような道なのだろう? いざ、スタート。


棚田の間を上り、山歩きへ


古座街道の看板が出迎えてくれた


清涼な空気のただよう街道を散策

棚田を登り、山道に入ると、苔むす岩や、生い茂るシダなど、これまで味わってきたルートから雰囲気は一転。この地域が持つ様々な表情を垣間見た思いだ。最新のEバイクのライドから、「未舗装路を歩く」という基本中の基本に立ち戻り、歩みを進めていく。古来より、どれほどの方々がここを歩まれたのだろう?


川を眺めながら歩く。冒険のようだ

ルートは川沿いへ。足元に注意しつつ、澄んだ川の流れを眺めながら道なき道を進む。こんなシチュエーションで川を眺めるのは初めてだ。冒険家になったような気分。
ついに道が開け、前方にバイクを車両から降ろしているのが見えた。ここで散策は終了だ。ここからは再びEバイクに乗り、ルートを行こう。

「この先、水がかなり溜まっているので気をつけてくださいね」。オートバイで走行管理をしてくださる方が、声かけをしていた。せっかくオフロードも走れる種類のEバイクを確保したので、舗装が荒れた部分も走ってみよう、という取り計らい。装備は十分なのだが、テクニックなどが伴うのだろうか。少し不安を抱えながらスタートした。


少しやんちゃな道を行く。少年の頃に戻ったように楽しんだメンバーも

オフロード、とまではいかないが、路面は降った雨が溜まっていたり、苔や落ち葉があったりと自然のままの状態で、通常のオンロードバイクでは避けてもよい区間。だが、今回のバイクはタイヤも太く、この程度の路面ならへっちゃらだ。みな神妙な表情でここを走っていたように見えたが、後で聞くと「わざと水溜まりに突っ込んでみた」と笑う参加者も。わんぱく少年に戻ったように、この区間を楽しんだようだ。路面に左右されず、どこでも走れるバイクは、やはり強い。


美しい古座川にかかる橋を渡る

川沿いの道を行き、クリスタルな水が流れることで知られる清流古座川に合流。古座川とともにしばらく降ってくると、大きな大きな岩が現れた。これがあの「一枚岩」だ。
「一枚岩」は「古座川弧状岩脈」の一部。高さ150m、幅800mという信じられないほど巨大な一枚の岩なのだ。当然、この大きさは日本最大級。


巨大な一枚岩に到着。一枚の写真に収めるのは至難の技だ

写真を撮ろうにも大きすぎて、全容を入れ込めないのが悩ましいところ。皆、この大きさを写真に収めようと試行錯誤していた。Eバイクとはいえ、山歩きもあり、疲労の色が見えてきていた人もいたが、ほぼ全員がこの絶景を楽しむべく、階段を降りてきた。河原から見上げてみると、この大きさがよくわかる。途方もない大きさだ!

ここで地元グルメの差し入れがあった。和歌山県民なら皆が知っているという「プラムハニップ」というジュース。「昔懐かしいおばあちゃんの梅ジュースの味」ということだが、甘さと酸味が疲れに効きそうだ。「遠足といえばプラムハニップ」だったらしい。ちなみに「昔はもっと甘かった」とか。地域をめぐり、その素顔を感じられるようなモノに触れられるのが、自転車旅の魅力の一つだと思う。

ここで主催者から提案が。最後の立ち寄りだった「滝の拝」までは15km程度あり、疲労している方もいるため、ここをカットして、直接、宿に向かっても良いとのこと。悩んだ方もいるようだが、結局は、全員が「滝の拝」まで行くことになった。
行くと決めたからには、楽しく行こう! お疲れモードを吹き飛ばしながら、最後の立ち寄りへ向かう。古座川から、ルートはカヌーを浮かべると、宙に浮いているように見えるほど水が澄んでいると言われる清流小川(こがわ)沿いへと入る。川の流れとともに、どこか心懐かしい田園風景の中を行く。ところどころに桜の花が見える。山桜だけでなく、里にも桜が咲き始めているようだ。


「滝の拝」に到着!絶景だ


大小の穴が開いた岩床の間を澄んだ水が流れる

ついに滝の拝に到着! ここは、稀有な眺めを楽しむことができるスポットだ。川床はすべてが岩でできており、大小さまざまな岩穴が開き、うねりのような、月面のような、独特な形状を生み出している。陽が傾き、光が山に遮られて影になってしまっていたのが残念だったが、太陽の光に照らし出されると、この岩の凹凸が浮かび上がり、この岩床が間を流れるクリスタルブルーの水とともに醸し出す様子は、まさにここにしかない絶景なのだ。
一同は岩床の上に降りたり、橋の上からの眺めたり、このスポットを満喫した。

登坂のボリュームもあり、パワーを使ってしまった参加者も多く、60kmほど走ってきて、気になるのがバッテリーの残量だ。だが、少ない方でも2目盛程度は残っているようで、ここからは上りもほぼなく、10kmほどの道のりなので問題はないだろう。「最後まで頑張りましょう!」と声を掛け合い、いざ、ゴールへ!


周囲には、個性ある岩の景観を楽しめるスポットが多い。「虫喰岩」に似た岩を発見

さらに傾いた日差しに照らされた景観は、より優しく見えた。名残惜しく思いながら、美しい小川を眺めつつ、ゴールへ向かう。
バイクの扱いや走り方にも慣れてきており、一同は足なみのそろった快走で、ゴールの「ぼたん荘」へ到着。2日間、117kmの道のりも、見事に完走だ!

獲得標高1890mの実感は驚くことに全くないのだが、走行感はしっかりとあり、それなりの疲労感と、これだけ走ったという達成感が漂う。痛みが残るような激しさはなく、身体に効く運動になっていることだろう。心が和むような気持ちのよい景観が続き、楽しいライドだった。


ゴールの「ぼたん荘」はサイクルステーションでもあった


2日間頑張ってくれたEバイク。いい仕事をしてくれました!

今回使用したEバイクは、クマイチルート上の上富田町の「KMICH」や、すさみ町のレンタサイクルステーションの「JR周参見駅」「サンセットすさみ」「すさみ町多世代交流施設 E'cora」などで貸し出し可能。

クマイチは、今後メジャーになり、国内外から観光客を集めるルートになりそうだ。情報も増えて来ることだろう。1周することの価値はあれど、宿泊を挟んだとしても、サポートなしには200kmを超えるコースを一度に走破するのはハードルが高い。コース内の一部を走った今回のように、数回に分けて訪問して走り、余裕を持ってエリアを楽しむのが現実的かもしれない。また、今後ツアーパッケージも登場してくることだろう。

サイクリングは密を作らず、ひとりでも、少人数でも楽しめるアクティビティー。今年から、クマイチに挑戦してみてはいかがだろうか。

※ガイドラインに従い、感染予防への最大限の配慮をして走行しております

画像:編集部、山本賢(P-Navi編集部)

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