北海道・北見実証実験ライドDay1

2021/04/23(金) 12:31

北海道・北見実証実験ライドDay1

北海道北見市を中心に、サイクリング環境を整備するための実証実験として、サービスの利用、推奨コースの試走を絡めたモニターライドが昨年11月7日・8日に開催された。

今回、ライドにはいくつかの試行が取り入れられている。自転車を専用の袋やケースに入れ公共交通機関に乗せることを「輪行」と呼ぶのだが、今回はクロネコヤマトによるセミハードの輪行ケースの輸送サービスのテストから始まった。


自転車を入れるケース。大切な自転車をしっかり守ってはくれるが移動時の持ち運びが課題

特に中国、台湾、オーストラリアから来る富裕層のサイクリストは、自転車を成型された専用の輪行ケースに入れ、飛行機で持ち込むことが多い。だが、この輪行ケースは大きく、通常国内の宅配サービスを利用したり、リムジンバスに乗せたりすることは難しく、目的地の空港到着後の移動が大きなハードルとなっていた。現状では、インバウンドのサイクリストはバッグを運ぶためのトラックを随行させるような団体での動きが多いのだが、個人旅行も取り込むためには、輪行ケースの運搬が課題だった。


女満別空港に到着!今回の男性班はロードの全日本チャンピオン経験者2名


自転車を組み、出発の準備


荷物、輪行ケースをクロネコヤマトトラックに託す

今回の試行では女満別空港到着後、準備を終えた段階で、クロネコヤマトに輪行ケースと手荷物を預け、宿までの宅配を依頼する。空港からダイレクトにサイクリングに出発し、宿にゴールしたときに、荷物を受け取れるため、滞在中の時間を有効に使うことができるのだ。
女満別空港には、札幌、羽田から朝8時台の到着便があり、空港からサイクリングをスタートできれば、初日の朝からフルに滞在を楽しむことができる。輸送の難しい輪行ケースの輸送に限らず、このサービスが実現すれば、自転車観光には大きなメリットがある。
モニターライドは女満別空港から2班に分かれて実施。男性班はプロの男性ロード選手2名。北見市が今後整備し、推奨していきたいとする120kmの北見1周ルートを試走し、魅力度、走行環境を検証する。


ハンドルバーにスマートフォンを固定、自転車のNAVITIMEを起動する

女性班は「さほど自転車に乗り込んでいない」が「自転車もグルメも大好き」な女性3名。
アプリ「自転車NAVITIME」を使用し、ガイドなしで走行することと、ライドのゴール地点である「ノーザンアークリゾート」から北見バスに自転車とともに乗る「バス輪行」で北見駅に戻ること、という2つのサービスの利用実験も行う。北見バスは、本年郊外線限定で、自転車を乗せられる実証実験を実施しており、この日もメンバー3名が「バス輪行」を体験させてもらえることになった。
空港で準備を終え、着替えをし、輪行ケースと手荷物をクロネコヤマトに託し、2班はそれぞれの行き先に向け、出発していく。今回は女性陣のグルメライドに随行し、ライドの模様をご紹介しようと思う。
女性班は全員がアプリ「自転車NAVITIME」のプレミアムプラス会員に登録した(料金は600~660円/月 試用期間につき、最初の1ヶ月は料金無料)。このランクなら、自分自身がPCなどで作成したルートに対し、ナビを使用して走ることができるのだ。方法は簡単で、スマートフォンのメールやLINEでルートのURLを共有し、クリックするだけ。アプリが立ち上がり、ナビゲーションが始まる。バッテリーの持ちは心配だが、そこも含めて、現実的にどこまで走れるかという実験も兼ねて行われる。


ナビをセット

各々の自転車のハンドルにつけたホルダーにスマホを固定。いよいよライドに出発だ。この日の距離は58.6km、獲得標高は393mと、スポーツバイクであれば、ビギナーでもトライできるルートが設定された。はたして、どのようなライドになるのだろう?

女満別空港を出ると、車のナビとまったく同じように、スマホ画面上には右左折の指示が出て、音声ガイドも聞こえてくる。「すごーい!」と、感動する一同。だが、指示通り坂を降り、南西に向かう道に入った瞬間、信じられない爆風にノックアウトされる。


田園風景の中をいく


想定外の強風

開放感のある田園風景の間を貫くルートは、風から守ってくれる建物も皆無。上体が起きた姿勢で乗るクロスバイクは帆のように身体で向かい風を受けてしまい、ペダルを踏めど、まったく思うように進まない。思わず笑ってしまうほどの鈍速ぶり! 到着予想時間も大幅な修正を強いられることになるだろう。
後から判明したことだが、冬季には西からの風が強く、南西に向かうルートは選んではいけなかったらしい。グルメと景観、勾配のことばかり考え、誰一人季節風の存在に気が付くメンバーがいなかったのだ!反省。


開放感のある景観が続き、爽快!

だが、この地域は凍結や積雪により冬季の走行は難しい。通常サイクリングを楽しむ春〜秋には、この季節風は吹かないのだ。少々開催時期が遅かったのも反省点だが、美景とグルメを楽しめるルートの試走として、この日は向かい風にもめげず、可能なペースで走ることになった。頑張った分だけ、グルメはおいしいはず!
田園風景を抜け、グルメや買い物スポットも豊富な美幌の街へ。最初の立ち寄りは、やっぱりスイーツ! ふわふわの生地にクリームが挟まれた人気の焼き菓子「オランダ焼き」が看板メニューの「山本菓子舗」で休憩しよう。
店に入ると美しいケーキが並んでいた。悩みに悩んで各自、1品ずつセレクトし、イートインスペースでいただくことになった。身体を使ったあとのスイーツは最高! 心を込めて焼き上げられたお菓子を堪能したのだった。


山本菓子舗へ到着!


1人1スイーツをチョイス。おいしそう! 嬉しくて全員が満面の笑顔になる

向かい風に少々やられていたが、スイーツで心身一気にリフレッシュ! 再スタート後は平均時速も上がったようだ。


美幌を走る


黄葉がまだかなり残っていた

ここからは20km近く上り基調の道が続く。高低差は150mほど。勾配はゆるく、普段ギア付きのスポーツバイクなら、さほど気にならない上りだが、強烈な向かい風でペースが上がらない。


メルヘンな香りがする雪国用の倉庫


特産のビートが山積みされていた

田園風景や自然の中を進む。黄葉の進行が早く、冬景色になってしまっていたのだが、まだ黄葉の美しいエリアも残っていた。常緑樹の緑と、色を変えた黄色の葉と、すでに葉を落とした木々の色味が混在する山々の色味も不思議で新鮮。焦らず、開放感のある眺めを満喫しながら、無理のないペースで行こう。

ここでペースが想定より遅く、立ち寄り予定だった超人気ベーカリーのパンが売り切れてしまう可能性に気づく。立ち寄りの順番を入れ替え、ベーカリーに直行するルートに変更! 新たにナビでベーカリーを設定し、絶品パンを目指して、全員でペダルを回す。
期待を胸に店舗へ着いたものの、「店主の腰痛で臨時休業」という貼り紙が! 期待が大きかった分、落胆を隠せない一同だが、気を取り直してランチスポットに向かうことになった。ナビで再検索し、店舗に向かう。


ランチのカフェに到着!一軒家のようだ

この日選んだのは「山本商店 cafe&zakka」。まだオープンして1年の雑貨カフェだ。一軒家に見えるシンプルな建物は、お家をリノベーションしたものだという。足を踏み入れると、ぎっしりと雑貨が並んでいる。しかも、かわいいものばかり! 少しレトロな昭和の香りのするおもちゃ、食器、ふわふわのニット、靴下、アクセサリー。女性たちなら何時間でも滞在できそうな品揃えだ。


ついつい見たくなる、欲しくなるような雑貨がぎっしり並んだ店内。ワクワクする!


おしゃれな手書きメニュー

ランチメニューとしては、カレーなどが人気のようだが、今後も行程の中で食べ続けることを想定し、全員がマフィンやキッシュと、スープ、ヨーグルトがセットになった「おやつプレート」をセレクト。まだ胃を満タンにするわけにはいかない!
やがて運ばれてきたセットは、ふんわりしたマフィンも、具沢山のキッシュも、どれも大満足の味。量もほどよく、このセットで正解だった。


心も満たしてくれるおやつプレート

食後はお買い物タイム。靴下や雑貨など、各々が気になるアイテムを確保したのだった。
再スタート。この次は北見テッパンの菓子店へ向かう。


北見市中心街へ


大丸に到着!

北見市中心街に向かい、駅近くの「菓子処 大丸」へ。ここはサイクリスト御用達のテッパン立ち寄りスポット。フレッシュケーキ、焼き菓子、和菓子とラインナップが豊富で、値段もリーズナブル。さらには店舗隣の休憩スペースで味わうこともできる。
北見をも代表する看板商品の「ほっちゃれ」、スイートポテト、豆大福、かぼちゃパイなどなど、気になるアイテムをセレクト。店舗横の休憩スペースで食後のスイーツ(食事もスイーツだった気がするけれども)タイム! こしあん入り魚型の焼き菓子「ほっちゃれ」は、安定のうまさ。


豆大福、スイートポテト、かぼちゃパイ、ほっちゃれ、。どれもさすがのクオリティー

豆大福の餅のきめ細かさ、おいしさに驚いた。思わず噛みしめ、しっかり味わう。スイートポテトは甘さ控えめながらコクがあり、かぼちゃパイも、サクサクのパイの中にたっぷり詰まったかぼちゃあんが、うまみたっぷり! どれもいくらでも食べられそう。あぁ、至福のときだ。

ただ、この時点で14時を超えていた。今日は「ノーザンアークリゾート」でライドを終了し、自転車を輪行袋に入れ、16時36分に出るバスに乗らなくてはいけない。これまでのペースから色々と計算すると、このままでは際どい可能性があるのだ。名残惜しくも大丸を後にする。
でも、一軒くらいベーカリーにも寄りたい。ふわふわパンも、ハードパンも絶品な万能ベーカリー「ドン・マイスター」には予定通り立ち寄ることにした。一般道ではなく、石北大通ぞいの遊歩道の中をゆったりと進む。


遊歩道を行く。色づいた木々の葉の鮮やかさに驚く

ところどころ、色づいた街路樹が残っている。葉の鮮やかな色味が美しい。黄葉の最盛期に来ていたら、どれだけ美しかっただろう。
「ドン・マイスター」に到着!中に入ると、もうほとんどのパンが売り切れていた。北見はパンの名店が多いが、味を知るファンも多く、売り切れるのも早い。残っているパンの中から、「白花豆食パン」や、ハード系の「ミルクフランス」など数種のパンをセレクトして外に出る。


ドンマイスターで気になるパンをゲット!

お行儀悪いけれど、店を出たところで味見。白花豆パンの生地は、キメが細かく、もっちりしていて、まるでごはんやお餅のよう。大粒の白花豆が散りばめられていた。ミルクフランスは、これ以上ないくらいのパリパリ! 「味見のつもりだったのに、おいしすぎて止められない」という悲痛な声が漏れる。
ポツポツと雨粒が落ちてきたと思ったら、一気に激しい雨に変わった。気温も下がってきて、まったく自転車に乗れる状況ではない。入り口の軒先に入り、雨宿りしていると、スタッフの方が「店内で雨宿りしてください」と招き入れてくださった。当然、ここで気になっていたパンを買い足し始める一同(笑)。 また、さらに他のパンも味わえる幸運にあずかることになったのだった。
雨が上がり、一路端野を目指す。堤防上を回るなど選択肢はあるのだが、交通量に配慮しつつ、最短ルートで最後の立ち寄り店へ向かう。ここからおよそ6.5km。バスの発車までは1時間半だ。路面は濡れており、気温も下がってきた。だが、このルートは北西に向かうため、風の影響はほぼなく、順調に進む。
ルートを進んでいくと、目の前に激坂が待ち受けていた。失敗! 焦るあまり、使い慣れた一般ナビでルートを設定してしまっていたのだ。


厳しいアップダウンルートに突入してしまった

走り始めたら行くしかない! 速度を上げて下り、その勢いで行けるところまで上る作戦に出る。一気に突っ込む! しかし、やはり上りきれない…。
頑張って上ったり、自転車から降りて押す方法に出たり、対応は様々だが、全員がクリア。こういうハプニングもまた楽しく、大笑いで済んだが、自転車NAVITIMEなら坂道を避けるルート検索も可能だったはずだ。改めて自転車専門ナビの価値を思い知る。どうやら間に合う見通しが付いてきた。雨上がりの道を気持ちよく自転車を走らせる。


「Shiga」に到着!だが、日暮れが近い

菓子店「Shiga」に到着! ここには、ソフトクリームや、この場でクリームを注入してくれるコロネもあれば、和菓子、焼き菓子、チョコレートなど、魅力的なスイーツが並ぶ。バスの時間が迫ってはいるが、北見まで来たら、絶対に立ち寄りたい店なのだ。間に合った!


大急ぎで商品を選ぶ。フレッシュケーキもおいしそう

ゆったりカフェスペースで味わいたかったけれど、時間の都合で店舗名物のワッフルを購入。一口味わって、あとはゴール後のおやつとすることに。一路ゴールの「ノーザンアークリゾート」を目指す。
もどかしくノーザンアークリゾートに向かう坂を上り、フィニッシュ。ただちに自転車の車輪を外し、輪行袋(今回は軽量の簡易版)に詰める用意を始める。
ここで朗報が。袋に入れずとも1~2台なら持ち込めるらしい! 急遽2台を輪行し、1台はそのまま積む方向で準備する。やっと体裁を整えたところでバスが現れた。ギリギリだ! 促されるまま、チケットを取る。料金は後払いのシステムだ。乗ってしまえば、あとは北見駅に着くのを待つのみ。


バスに3台を積み込んだ。2台は車椅子用スペースに

運転手さんの指示を仰ぎ、そのままの1台と袋に入れた1台は車椅子スペース(このスペースの利用者がいない状況下のみ使用可能)に置き、もう1台は後部で着席し、押さえる形で車内に乗せた。乗り降りする乗客たちが積み込まれた自転車を見て驚くこともない。期間限定の実証実験ではあるそうだが、見慣れた光景なのだろうか。
帰路がバスになれば、疲労も出てくる終盤をカットし、楽々帰ることができる。特にこのような季節は日暮れが早く、安全面からも、輪行という選択肢の価値は高い。今回は16時台の便だが、最終バスを選び、日帰り入浴や、食事を終えてからバスに乗ってもよいだろう。下車後、宿まで押し歩きできるなら、お酒を楽しんでもOK!
どこかに行く際は、往復のルートを考える必要があるが、帰路は疲労や日暮れまでの時間的な問題で、走行への不安があったり、同じ道を戻るモチベーションが沸かなかったり、可能ならカットしたい人は多いだろう。帰路がないなら、ライドはかなり気楽になり、訪問先の場所の選択肢も増やすことができるのだ。
さらにバスなら、鉄道のように駅構内の移動もない。バス停の位置さえ把握していれば、ライドの進捗具合で乗るバス停を選び、ダイレクトにアクセスすることができて非常に便利だ。ローカルバスに乗ることで、街の雰囲気もわかり、観光としても楽しめる。
30 分ほどで北見駅に到着。北見駅までの運賃530円と合わせ、自転車積み込み料金300円を支払う。計830円。運転手さんにお礼を言って降車。バスに乗ること自体も楽しかった。

駅前のホテルに戻ると、先に戻っていた男性班が、クロネコヤマトから輪行袋と荷物を受け取ってくれていた。荷物とも無事に再会することができた。


男性チームが北見駅で荷物を受け取っておいてくれた

脚力がないため、向かい風で想定外に時間がかかりはしたけれど、朝から時間を有効に使え、ガイドなしでルートをめぐり、立ち寄りもたっぷり楽しめて大満足だ! クロネコヤマトのサービスは、まだ実験中であるそうだが、今後の運用に期待したい。

翌日も、帰路にバス輪行を想定した別ルートを走る__こちらも楽しみだ。

 

(※昨年冬のレポートです)

画像:サイクルアドベンチャーオホーツク推進協議会、Naoki Yasuoka(Cyclowoired.jp)、編集部(P-Navi編集部)

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