2018/11/25(日) 12:13
10月13、14日に大分市で「OITA(おおいた)サイクルフェス!!!」が開かれ、大分駅南口の特設サーキットで小周回コースを回るレース「おおいたいこいの道クリテリウム」と、大分銀行ドーム周囲に設営されたコースを使ったロードレース「おおいたアーバンクラシック」が開催された。アーバンクラシックは今年からUCI(世界自転車競技連合)公認の国際レースになり、海外チームの参戦も迎え、注目度もアップ。大分市は2日間多くの来訪者でにぎわった。
OITAサイクルフェス初日、13日。「おおいたいこいの道クリテリウム」が開催される日だ。夜が明けてみると、大分市はこの上ない快晴に恵まれていた。前夜のレセプションパーティーも華々しいもので、好天を受け、これからの2日間がすばらしいものになる予感に包まれる。
大分駅という主幹駅を出てすぐ、横断歩道の向こう側に広がる広場大分いこいの道の入り口にはサイクルフェス会場であることを示す大きなアーチが組まれ、たくさんのテントが並んでいる。会場へのアクセスは抜群!まさに駅前で開催されるクリテリウムレースなのだ。広場には、地元グルメを提供するショップや物販、観光、自転車関連など、たくさんのブースが並び、レースに興味のないひとたちも十分楽しめるようになっている。会場には朝から家族連れなど、日頃レース観戦をしない層の来訪者も多くにぎわっていた。
朝から国内リーグの市民レーサーたちのレースが展開されていたが、広場内に組まれた特設ステージで、10時からチームプレゼンテーションが開催され、レースコースを用いたパレード走行がスタート。ここには選手のほか、一般公募で集まった市民の皆さんや、大分市長、ゲストの前園真聖さんなどが走り、大きな声援を浴びていた。
パレード終了後、出場選手がスタートゲート前に整列し、いよいよレースがスタート。先ほどまでのほんわかムードとは一気に空気が変わる。海外から6チーム、国内から14チーム、合わせて20チームが参戦、強豪選手が集まっているが、最大の注目は地元大分出身の黒枝士揮(愛三工業レーシングチーム)、咲哉(シマノレーシング)兄弟。地元メディアも大会パンフレットも二人にフォーカスした構成になっており、若い二人は痛いくらいの大きな期待を背負ってスタートラインに立つことになった。この2名が所属するチームも、必勝体制だ。
いよいよレースがスタート。1周1kmという小さなサーキットを30周回る短いレースだ。距離が短い分、スタートからレースはフルスロットル!なんとしても勝利をもぎ取りたいシマノレーシングが先頭に立ち集団をコントロールするが、ハイペースの展開が続く。高速で駆け抜ける選手たちに観客はエキサイトし、大きな声援を送り続けた。
設定されたスプリントポイントは1回目を阿部嵩之選手が、残り3回をトビー・オーチャード選手(オーストラリアンサイクリングアカデミー)が獲得。
中盤から、今年3月、栃木のレースで総合優勝したオーストラリアン・サイクリングアカデミー・ライド・サンシャイン・コーストもエースを勝たせるべく、列車を組み、前方へと出てくるシーンが増えた。トラック競技の世界記録を持つウェルスフォードをはじめ、スプリント力に長けた選手を揃えており、複数の優勝候補を抱えるこの日の本命チームだ。
終盤に近づくとシマノとオーストラリアンサイクリングアカデミーの攻防戦に加え、勝利をもぎ取りたいチームが積極的に前に前に仕掛けてくる。
激しいやり取りの中、最終コーナーをまわり、いよいよゴールスプリントへ。ラスト200m、早めに仕掛けたのは黒枝士揮だった。ウェルスフォード、ダミアーノ・チーマ(NIPPOヴィーニファンティーニヨーロッパオヴィーニ)、黒枝咲哉らがスプリントを仕掛ける。その中で伸びたのは地元を背負った黒枝咲哉だった。地元のヒーロー誕生に大歓声に包まれる会場。
ゴール直後にチーマとウェルスフォードが接触、チーマが転倒し、士揮が巻き込まれてしまうアクシデントもあったが、笑顔で優勝した弟をねぎらう姿があり、一同を安心させた。
プロ1年目。先月初勝利を挙げたばかりの若い選手が地元の大きな期待をとチームのアシストを受け、プレッシャーの中、強豪が揃う国際レースで自らもぎ取った勝利は大きな価値のあるものだったろう。表彰台のてっぺんに乗った小柄な黒枝咲哉が、とても大きく見えた。2位はウェルスフォード、3位はチーマ。(転倒で負傷し、表彰式は欠席)レースの模様はいこいの道特設ステージで公開生放送のスタイルで地元TVの生中継があり、レースコース沿いでも、広場でも、お茶の間でも、レースの行方を見守ることができ、多くの市民が地元の期待の星の優勝を見届け、祝福するところとなった。
会場ではこの後も市民レーサーのレースや、ゲストである前園氏のトークショーなど、イベントが企画され、夕方までにぎわいが続いていた。駅前という最高のロケーションで、迫力のあるレースが開催され、メディアにも載り、自転車競技の魅力を周知させるという意味でも、非常に大きなインパクトのあるものになったことだろう。
(P-Navi編集部)